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INTERVIEW

Mary's Blood

2019.06.11UPDATE

2019年06月号掲載

Mary's Blood

Member:EYE(Vo) SAKI(Gt) RIO(Ba) MARI(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-なお、曲タイトルである"Karma"とは"業"を表す言葉でもありますが、こちらの歌詞が生まれた背景にはどのようなものがあったのかも気になります。

EYE:これは、実写映画化もされた"累-かさね-"というマンガからインスパイアを受けて書いたものです。内容としては、コンプレックスを持った女優が、口紅を塗って口づけをすると相手の顔が手に入るという設定のある作品で。その能力を使って女優として上り詰めていくという話なんですけど、ステージ上ではスポットライトを浴びてキラキラできるとしても、それは本当の自分ではないという葛藤を、その主人公はずっと抱えていくことになるわけですよ。完全にリンクするわけではないにしても、自分もステージに立っている人間だから、私としてはそのマンガに共感する部分もあったんですよね。それと同時にこの歌詞の中では、マンガの主人公がストーリー中で女優として演じるチェーホフの"かもめ"自体のこともモチーフとして使っています。

-フィクションとノンフィクションが複雑に交錯しているのですね。

EYE:今はさすがにもうないですけど、昔はやっぱりどこか自信のない自分と、"そんなことない!"っていきがっている自分が葛藤している時期もあったりしたので、その頃の気持ちを重ねながら歌ったところもありました。ちなみにこれ、楽器隊の重心は低いんですけど、歌のキーは結構高いんですよ。ライヴでもここまでちゃんと出せるように、頑張ります(笑)。

-なお、3曲目に位置する「アルカディア」もSAKIさんの作られた曲となりますが、これはギター・ソロがとても鮮やかですね。流麗な速弾きに思わず聴き惚れました。しかも、ソロだけではなく全編を通してギターの主張が強いところも素敵です。

SAKI:ありがとうございます。たしかにこれは、ギターの存在感を前に出すことを意識して作ったものでした。いわゆる王道なメタル曲みたいなものをやりたかったんです。ハモりのフレーズも今までの中では一番こだわりましたし、ここでギタリストとして着実にステップアップしたいなという気持ちで臨みました。

-ただし、今回のアルバムは"闇"がひとつのテーマになっているとのお話が先ほどあったことを考えると、この「アルカディア」からはあまり強い闇要素は感じません。音としてもある種の爽やかさがここからは感じられるのですが、この曲の中の闇については、作り手側からするとどのように解釈していらっしゃるのでしょうか。

SAKI:実を言うと、これだけはもともと今回のアルバムのために作ったものではなくて、前からストックしてあったものなんですよ。それをここで引っ張り出してきた理由は、全体的な曲の並びを見たときに闇っぽいものが結構あるだけに、サビで爽やかにパッと開けるテイストのものも欲しくなっちゃったからです(笑)。

EYE:しかもこれ、最終的には今回のリード・チューンに選ばれましたからね。歌詞に関しては、前作のリード・チューンだった「World's End」では"世界をぶち壊して何もなくなっちゃったじゃねーか!"ということで(笑)、ここでは新世界を歩んでいく人の話にしました。つまり、これはまた何もない更地から始まっていくという意味での、視覚的な闇を表したものなんです。

-闇と言っても、いろいろな闇があるのですね。そういった点では、これまたSAKIさんの作られている「GO AHEAD & LAUGH」も、ステレオタイプではない闇の光景が描かれていて、かなり興味深く聴けました。

SAKI:これはMINISTRYとか、あっち系のメタルと言うんですかね。パンクとメタルのミクスチャー的なものをやりたくて作った曲で、きっとEYEちゃんならやってくれるだろうなと思って、"ラップっぽいものをお願いします"って頼んだらこうなったんです(笑)。

EYE:私、正直ラップは通ってきていない人間なので(苦笑)。サビしかメロディがないデモを貰って最初はちょっと戸惑ったんですが、こんな感じかな? と手探りしながらやっていくうちに、なんとか形になりました。話としては、"趣味でバンドはやってるけど、俺たちはまだ腐らないでやってるぜ"っていううだつの上がらないサラリーマンの歌なんですけどね(笑)。マネージャーから、"だったらANVILの映画を観てみたら?"って勧められたこともあり、それを参考にしたところもあります。

-ANVILと言えば、映画"アンヴィル!夢を諦めきれない男たち"が数年前に話題となりましたっけ。あれは得も言われぬ悲哀と、ある種のコミカルさも感じる作品でした。

SAKI:そうそう、あのお弁当を作りながらっていうのがね(笑)。

EYE:まぁ、これは純粋に楽しんで聴いてもらえればいいかなという気持ちで書いてますね。うちのお客さんは楽器をやっている方も結構いらっしゃるので、音楽をやっている方にとってはニヤリとできる部分があるんじゃないかと思います。

-かと思うと、RIOさんは今作中で「エイム」と「Hello」、「HIGH-5」の3曲を作られていますが、こちらもそれぞれカラーがまったく異なるものへと仕上がっています。中でも、「エイム」はイントロがベースから始まっていくところからして非常にクールですね。

RIO:いやー、あそこは別にベースがなくても良かったんですけど、少し音的に寂しいかな? と思って入れました(笑)。フレーズとしては、家でお酒を飲みながらベースを弾いていたときに、突然浮かんできたものをもとに作った感じです。なんとなく、オルタナティヴ・ロックを意識していたところもありましたね。

-と同時に、こちらの「エイム」については歌詞もRIOさんが手掛けられたのだとか。

RIO:はい、デビューしちゃいました(笑)。私はゲームが好きで、"PUBG(PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS)"というのをよくやっているんですよ。詞を書くうえでイメージしていたのは、そのゲームをプレイしている引きこもりの少年かな。ワンコーラス目とツーコーラス目では、日付が変わっていたりもします。ゲームをやる人だったら、きっと"蜘蛛"とかの意味もすぐわかると思いますよ。逆に言うと、わかる人にしかわからない歌詞ですね(笑)。

-「エイム」がゲームを題材にしたものだとすると、仮想現実を描いているという点では「VirtuaReaL」も、タイトル通りに電脳時代の世相を風刺した内容と解釈できますね。

EYE:「エイム」のキャラはゲーム好きな引きこもりの少年で、おうちでゲームをしているときは"自分最強!"と思っているんだけど、実生活ではいい子なタイプだと思うんですよ。その点、「VirtuaReaL」は現実世界も歪んじゃっている系ですね。ネット上でも、普段の生活でも誰も信用できないし、一歩間違うと足を踏み外してしまうタイプ。

RIO:主人公の年齢層が違うよね。「エイム」はまだ子供なんだと思う。

EYE:その後、さらにこじらせちゃうと「VirtuaReaL」になっちゃうのかな(笑)。