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LIVE REPORT

打首獄門同好会

2017.03.25 @新木場STUDIO COAST

Writer 秦 理絵

最新アルバム『やんごとなき世界』にかけた"やんごとなき"というワードをネタに、それに似たワード(アンジェラ・アキやジャイ子の兄など)を集めたオープニング映像で爆笑と共に幕を開けた、打首獄門同好会のツアー・ファイナル。新木場STUDIO COASTは、青木亞一人(アシュラシンドローム)が出演する30分以上にもおよぶメイキング映像で、開演前から盛大な笑いに包まれていた。もはや本編が始まる前から、何かやってくれそうな予感しかしない。そんなライヴは、想像を遥かに超える過剰な演出と笑いが暴走する、打首獄門同好会以外、誰にもできないエンターテイメント無法地帯だった。

会場が一体になって巻き起こした"やんごとなきなき なっきなきー♪"のコールのあと、メンバーがステージに現れると、盆踊りのようなビートに乗せた「DON-GARA」からライヴはスタートした。大澤敦史(Gt/Vo)、河本あす香(Dr)、junko(Ba)という3人のメンバーが繰り出すのは、ハード・ロックやメタルをルーツにしたラウドなロック・ナンバー。だが、そこに乗る歌詞が底抜けに親しみやすいのが、彼らの最大の持ち味だ。男女トリプル・ヴォーカルが鮮やかにスイッチしながら、冷蔵庫のプリンを食べられた恨みをひたすら歌う「TAVEMONO NO URAMI」や、ラーメン二郎の注文の仕方をネタにした「私を二郎に連れてって」。そこにコミカルなスクリーンの映像を交えて、面白おかしく楽曲を届けていく。しかも、今回はマネージャー兼VJサカムケが映し出すパワーポイントVJに、VJナマハゲ(ビンビールズ)のガチVJを融合させて、映像もパワーアップ。デス・ヴォイスが炸裂するようなへヴィなライヴにもかかわらず、見た目のわかりやすさも相まってか、ファミリー席エリアでは子どもたちも楽しそうに盛り上がっていた。こんな痛快な景色が他にあるだろうか。

オープニングから用意周到だったライヴは、本編でますますその真価を発揮していった。バンドが初めて3ピース以外の楽器を加えて録音した「Natto Never Dies」では、ゲストにヴァイオリニスト たまきあやを迎えた豪華なアレンジで披露したかと思えば、四国八十八ヶ所の巡礼地をすべて並べた「88」では、尺八の音色が艶やかなBGMに乗せて、メンバーが白衣をまとって登場。サビで"プラズマクラスター"を連呼した新曲「きれいエアー」では、空気清浄機がステージに置かれ、途中で空気がきれいになったのか、清涼感のあるサウンドに切り替わるという展開にもフロアは大爆笑だった。高速パンク・チューン「きのこたけのこ戦争」では、きのこの山 vs たけのこの里のぬいぐるみを持ったパフォーマー(バックドロップシンデレラ)が現れ、フロアはウォール・オブ・デスで全面衝突。そのライヴの激しさゆえ、具合が悪くなった人向けに、ステージ上から水が配られるという親切さだ。

怒濤の展開はまだまだ続いた。虫歯の進行レベルをモチーフにした「歯痛くて」では、ゲスト・ラッパーにCOYASSを迎える。岩下の新生姜でコール&レスポンスを巻き起こした「New Gingeration」では、全長3メートルにもおよぶ巨大な生姜がステージに現れ、恒例のうまい棒が配られた「デリシャスティック」では、これまでのワンマン・ライヴには欠かさず参加していたが、この日は自身のライヴがあり来ることができなかった青木亞一人が特注のスクリーンで、まさかのバーチャル共演。ここまでやったら、たとえソールド・アウトの公演でも赤字になるんじゃないか? と、余計な心配までしたくなるほど手の込んだ演出の数々だったが、それも集まったお客さんを楽しませることにかけて、異常な執念を燃やす打首獄門同好会ならではだ。スーパーに並ぶ食材から電化製品まで、日常生活のあらゆるものを片っ端からネタにして、普通のバンドが歌うような、愛だの、希望だの、夢への応援歌だのは一切歌わない。それで、およそ3時間にもおよぶワンマン・ライヴをやり切ってしまう潔さは、むしろ1周まわってかっこよかった。

本編のラスト「カモン諭吉」を、お客さんの頭上に偽のお札を大量にばら撒き大団円で締めくくると、アンコールは、芦沢ムネトによるフテネコのイラストが笑いを誘う「フローネル」と、"水曜どうでしょう"のテーマ・ソング「1/6の夢旅人2002」のカバーだった。やりきれない日常の中で"僕は笑いたいんだ/笑っていたいんだ"と歌うフレーズは、打首獄門同好会のスタンスを表しているようで、それがオリジナル曲でないのも彼ららしい。私たちがライヴハウスに足を運んで、日常を忘れられるのはほんの2~3時間だ。だけど、その2~3時間を本気で楽しむことで、日常の嫌なことをすべて帳消しにできたりする。たとえメッセージなんてなくても、ただバカ騒ぎできる場所があることにかけがえのない意味がある。それを打首獄門同好会は知っているのだと思う。

ライヴの終演後には、スクリーン映像で、2018年に打首獄門同好会が日本武道館で初の単独公演を開催することが発表された。それに伴い、四季連続のリリースや47都道府県ライヴ制覇、フェス全国制覇など、数々の企画も用意されているという。どこまでも無意味で、おバカなまま、日本の最高峰のライヴ会場へ。彼らの快進撃はまだまだ続きそうだ。


[Setlist]
1. DON-GARA
2. TAVEMONO NO URAMI
3. 私を二郎に連れてって
4. Natto Never Dies
5. 数多の数奇な物語
6. まごパワー
7. 88
8. キレイエアー
9. 失われし平和な春の日よ
10. きのこたけのこ戦争
11. 歯痛くて
12. 猫の惑星
13. もつ鍋が呼んでいる
14. New Gingeration
15. デリシャスティック
16. 島国DNA
17. マイクロウェーブアタック
18. ヤキトリズム
19. 日本の米は世界一
20. カモン諭吉
-Encore-
21. フローネル
22. 1/6の夢旅人2002

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