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INTERVIEW

Unlucky Morpheus

2023.03.03UPDATE

2023年03月号掲載

Unlucky Morpheus

Member:Fuki(Vo) 紫煉(Gt/Scream) 仁耶(Gt) Jill(Vn) Hiroyuki Ogawa(Ba) FUMIYA(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-そんな重厚なるあんきもサウンドの根底を支えていらっしゃるのは、もちろんドラマー、FUMIYAさんです。今作『EVOLUTION & DIVERSITY LIVE 2022 at Zepp DiverCity』を、ご自身でご覧になってみたときに、何か感じられたことはありましたか。

FUMIYA:ドラムというパートの性質上、普段の僕はみんなの動きをそこまでちゃんと見られる状態にはないんですよ。とは言っても、メンバーとのアイ・コンタクトはそれなりにしているほうではあると思うんですが、多点セットを使っているので物理的に視野が限られるところもあるんですね。その点、映像として客観的に観てみると"あんきもってよう動くバンドだなぁ。大きい舞台に映えるなぁ"ということは僕もすごく感じます。昔からそれは感じていたことなんですけど、ようやくバンド自体が持っているスケール感に実際のキャパ感がついてきたといいますか。こういうジャンルの音楽をやっているバンドとしては、Zepp DiverCity(TOKYO)クラスの場所でやれるというのは、なかなかないケースだとも思うので、そこに対しての感慨深さをこの映像からまた感じたりもしました。

-FUMIYAさんはいつも後ろからメンバーの背中を見ていらっしゃることが多いぶん、よりこの映像を新鮮に感じられるところがあるのかもしれませんね。

FUMIYA:最近だと豊洲PIT("Unlucky Morpheusワンマンライブ『XIII』")でやったあたりから、ドラム台が少しせり上がった感じのステージ・セットを組むことが多くなってきて、そうなったことで、上手や下手からもメンバーがドラム台に近寄って来られるような状況が生まれてきてますからね。全体的な見栄えがさらに良くなってきたな、という感覚は今回の映像からもかなり感じます。

-見栄えと言えば、今作『EVOLUTION & DIVERSITY LIVE 2022 at Zepp DiverCity』では、上手の壇上にピアノが置かれていて、それを紫煉さんが奏でられるシーンも実に印象的です。

紫煉:自分のルーツにはX JAPANがありますし、大きい会場だとピアノも置けるなということで、あのときはせっかくだから弾きました。そして、ひとつにはあんきもにとってこのライヴまでが声出し禁止だったので、そのぶんコンサートとかショーみたいな要素を打ち出すようにしていったというのもあるんですよ。声出しでワーッとした盛り上がりがなかったとしても、観賞するだけで楽しめるライヴを目指したなかで生まれたひとつの要素だったということですね。途中のアコースティックのパートなんかも、そんな意図を持って入れた部分でもありますし、自分としてはああいう見せ方も好きなので、あのときはあのかたちでやれて良かったと思います。

-しかも、今作ではそんな紫煉さんのピアノだけではなく、各パートのソロもたっぷりと堪能することができますね。

Ogawa:各パートのソロっていうのは他のメンバーが休息をとれるところでもあるし、セッティングの切り替えをできたりもするので、もちろん舞台運営をしていくうえで大事な時間なんですけど、演奏する本人からすると唯一の自由に使える時間なんですよ。だから、自分も毎回いろんな課題を持って臨むんですが、この映像の中で言うと、「Dead Leaves Rising」のイントロがベース始まりのアレンジになってるんで、ベース・ソロはそこに繋がるように作っていきました。一般的なイメージからいくと、ベースってエンタメ的に退屈になりやすい楽器だとは思うんですよ。でも、僕としてはそういう概念に対する挑戦をこのベース・ソロでやってますし、テクニックとエンタメの共存というのは今後もさらに追求していきたい部分です。

-では、ヴァイオリン・ソロに関してのテーマは何かありましたか?

Jill:特にあのライヴに限っての特別なテーマはなかったですが、私はずっとクラシックをやっていたので、ソロでは、バッハやパガニーニの作ったヴァイオリン向け独奏曲のエッセンスを入れていくことがよくあります。自分が勉強してきたことであり、自分にとってはルーツでもありますし、今回の作品にも入っている「Carry on singing to the sky」に至っては、パガニーニの「24のカプリース第24番」のフレーズも取り入れているんですが、かといって単にクラシックに寄るだけではなくロックな雰囲気も織り交ぜつつ、ちょっと無軌道なくらい私にしかできないスタイルで弾いてますね。ソロに関しては、次のインスト曲「Wer ist Faust?」に繋がるものとして考えたところもあるので、流れが上手くいくようにということも意識しました。

-ヴァイオリニストがメンバーにいるバンド、というのもそもそもレアですし。あんきもにおけるJillさんの存在はとても重要だと思います。

紫煉:ここ5~6年くらいで、ジワジワとJillさんの存在が影響を周りに影響を与えるようになってきてる気がしますよ。ヴァイオリニストがメンバーにいる日本のバンドは、僕ら以前より明らかに増えましたね。ここからあとに続いていくバンドたちには、いろいろフォロワーが出てくる可能性はあるでしょうね。

-Jillさんはこれまで、メタル・バンドの中でヴァイオリンを弾くことが"しんどいな"と感じたことはありませんでしたか?

Jill:メンタル的にはいつもめちゃめちゃ楽しく弾いてるんですけど、ヴァイオリンって大音量の中で弾く楽器としてはもともと作られてはいないので、機材とか音響の面では結構苦労してます。周りがうるさすぎて自分の音がちょっと聴こえにくいんですよ(苦笑)。

Ogawa:そんなうるさいと思ってんだ(笑)。

FUMIYA:まじでごめんよ(笑)。

Jill:(笑)なので最初は苦労したんですけど、今では試行錯誤した結果、最適化できていると思います。

Fuki:それはメタル・ヴォーカリストも一緒なんですよ。ヴァイオリンと同じように喉もフレットのない楽器なので、自分の音をちゃんととれていないと、ピッチのコントロールができなくなってしまいますからね。爆音の中でそれに負けないように歌っていたら声量がだんだんついていって、今に至っているという感じです。

-では、次にFUMIYAさんが今作のドラム・ソロで重視されていたのは、主にどのようなことだったのでしょう。

FUMIYA:あれはわりと出たとこ勝負でしたよ(笑)。ある程度の尺が必要なのは認識していたので、ライヴの1週間くらい前からお風呂で"どうしようかな?"と考えて、ふわっと大きな枠だけ決めてそのまま本番に臨みました。あとは、その日のテンションで自分の中から何が出てくるのか? という感じで。もっとも、流れ的にあのソロは、あんきもの中でも特に激しい「Angreifer」と「Black Pentagram」の間に入ってくるので、体力的にはマジでキツかったです。自分としてはあの場面であえてソロをやるっていうところに、意義を見いだしていたところもありましたね。だから、テーマがあるとしたらそこかな。あの状況であそこまで叩いた、という部分が自分にとっての存在意義を示したことになってる気がします。正直、あれを当たり前とは思って観てほしくないです。ある意味、僕は自分の賞味期限と闘いながら日々ドラムを叩いてますからね。

-賞味期限!?

FUMIYA:前から公言してますけど、僕はヘルニアだったり股関節のすり減りだったり、身体を壊しながらドラムをやってますからね。あと何回ライヴがやれるかっていうのはわかんないですし、それだけに1本ずつのライヴに懸けているものも大きいので、リアルに闘っているところを観てほしいです。

-承知いたしました。そう考えますと、今作『EVOLUTION & DIVERSITY LIVE 2022 at Zepp DiverCity』は、ひとつのドキュメントでもあるのですね。

紫煉:ここまでは何年も声出しができなかったんだなっていう記録にもなりましたしね。10年後とかにこの映像を見直したときには、きっと"こんなこともあったな"って時代を感じるんじゃないかと思いますよ。

-なお、22年末に川崎CLUB CITTA'で開催された声出し解禁公演[Unlucky Morpheus Oneman Live 『Carry on "SINGING" to the sky』]と、先だって渋谷ストリームホールにて行われた追加公演では盛大な歓声が場内に溢れました。今年はいよいよ15周年を迎えられるということもあり、ここからUnlucky Morpheusの活動はさらに激化していくことになりそうですね。

紫煉:実を言うと、その15周年というところに対して、僕はあまり強い思い入れみたいなものはなかったりするんですよ。もちろん、長く活動ができていることに対する感謝や"ラッキーだな"っていう気持ちはあるんだけど、基本的にはこれからもいっぱいリリースをして、いっぱいライヴをやりたいなって考えてるくらいですね。ただし、あんきもはすでに、俺個人の判断とか価値観だけで動いていいバンドではなくなっているのも事実なので、みんなが15周年ということに対して祝ってくれる以上は、何か特別なことをしないとなぁって気持ちは持ってます。15周年っていうものに自分なりの意味を見つけて、ここから楽しんでいきたいとは思ってますね。

FUMIYA:かれこれ僕もあんきもで12年くらいはやってることになるんですが、これだけ長くやれるバンドに出会えたことが自分にとっては奇跡みたいなもんですからね。自分の賞味期限と闘いつつではありますけど、ここからも変わらずにやっていけたらいいなと思ってますし、僕は骨を埋める覚悟で今このバンドをやってるので、メタルの界隈だけでとどまるような器じゃないあんきもの良さを、もっと世に広げていきたいです。

Ogawa:ようやく声出しができるようになり、今年は本当の意味でのロックのライヴをできるんじゃないか? って期待が持てる状況にはなっているので、お客さんあってのあんきもという部分をここからのライヴではもっと感じていきたいですね。

Jill:あんきもってジャンル的にはメタルのバンドの枠に入ると思うんですけど、決してメタル・ファンだけが好きな音楽じゃないと思うんですよ。あんきもは一般ピープルや、いろんな方たちが夢中になれるような楽しい音楽をやっているバンドだと思っているので、ここからもっと発展させていきながら、いずれ日本の全国民に知れ渡るようなバンドにしていきたいです。

仁耶:前までは豊洲PITや、Zepp DiverCity(TOKYO)を、それぞれそこがひとつのゴールだと捉えてライヴをやっていたところがあったんですけど、そのあとにCLUB CITTA'や渋谷ストリームホールでの声出しライヴをやったとき、ここからまた新しい世界が始まっていくんだな、ということを感じたんですよね。すごく新鮮な気持ちになれた自分がいて、ここからも引き続き頑張っていきたいなという気持ちになったので、15周年に向けた新しい展開を自分も楽しんでいきたいです。

Fuki:今回の『EVOLUTION & DIVERSITY LIVE 2022 at Zepp DiverCity』のタイトルにも使われている"DIVERSITY"っていうのは、多様性を意味する言葉ですけど、まさにあんきもは、メンバーそれぞれの持っている多様性が生かされているバンドだと思うので、15周年にとどまらずこれからも多彩な音楽性とか、いろんな個性をみんなが発揮していける場として続けていくことができたらいいな、と思ってます。あんきもとしてこの6人で作る作品だったり、この6人でやるライヴだったりを、私としてはおじいちゃんおばあちゃんになるまで続けていきたい、というのが昔からの大きな目標なんです。