INTERVIEW
coldrain
2022.07.11UPDATE
2022年07月号掲載
Member:Masato(Vo)
Interviewer:高橋 美穂
下の世代が目指すところになりたいって、15年が経って初めて思うようになった
-「PARADISE (Kill The Silence)」も「Help Me Help You」もですけど、今作はライヴ・バンドとしてのアイデンティティを感じる楽曲が多いですよね。
合唱ポイントが散りばめられていますけど、今回は今までのアルバムの中で、もしかしたら一番狙わず、勝手にどんどん足されていったところがあるかもしれなくって。自分たちは、どうしてもライヴ・バンドっていうか、ライヴがバンドの生活の半分以上を占めている感覚でやってきたから、この1年半ずっとお客さんの声を聞けていない、みんなが歌えていない状況が、苦しくて悩ましかった。それを取り戻したい一心が、アルバムに注ぎ込まれたんだと思います。その意味では自由に書いていたっていうか。歌詞のテーマ的には、状況もあって、どうしてもコロナとの戦いのことは出たんですけど、その状況に負けていないライヴ感も出ていると思います。コロナ禍でライヴをしながら、声を出せないお客さんから、音楽を届ける、空間を変えるっていうライヴの大切さを教えてもらったから、お客さんが歌えるようになったときには、待ってました! という曲にすることが大事なのかなって。そうやって、いつもと違うライヴ感を経験したからこそ生まれたアルバムだと思います。
-お客さんの声が恋しいっていう本能で、シンガロングのパートが増えていった、っていう。
そうですね、それはめちゃくちゃあると思います。なのか、すごく性格が悪いのか(笑)。
-(笑)
まだ歌えないのに、歌いたい曲をいっぱい作るっていう。
-もう、家では聴きながら歌ってますから(笑)。そういう現場感がある一方で、「Bloody Power Fame」は、全世界配信されているNetflixシリーズ・アニメ"BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー"のオープニング主題歌となり、「Before I Go」は、"サッポロ GOLD STAR"とのコラボ映像が作られていて、オーバーグラウンドでも流れていますよね。こういうタイアップからは、アンダーグラウンドを越えて響き渡るべきという、自分たちの音楽に対する誇りを感じます。
なんだかんだ自由にやらせてもらえているんですよね。染まってほしいというより、一緒に何かをやりたいってことで向こうに誘われたものが多くって。お互い本気で作っているものがカッコ良くなったり、人により届いたりしたら嬉しいとか。アニメに関しては、作品の空気感を貰って曲を作ることが、自分たちもいっぱい曲を出していくなかで、ひとつのチャレンジになっていて。最終的には自分たちの曲になるんですけど、スタートラインを渡されるのは面白いっていうか。それが最終的に本気で作っている映像とリンクしていくのも楽しいし、且つアニメは世界に注目されているものだから、一番世界的なプロモーションだと思っていて。世界のリスナーに聴かせるチャンスを貰えているんですよね。バンドを始めた当初は、アニソン・バンドみたいなイメージをつけられるから、アニメのタイアップはあんまりやらないようにしよう、みたいな考えがありましたけど、今は世界を目指しているならやらないともったいないっていう。しかも、日本のアニメのクオリティはすごいんで、そこと一緒にやらないのは、大谷翔平がバッター・ボックス立つときにcoldrainを流したいって言っているのに、嫌だって言っているようなものですからね(笑)。ビールのCMに関しては、昔から憧れがあったので。ビールのCMでHOOBASTANKやJIMMY EAT WORLDが流れた瞬間は、民放に自分たちが好きなロックが流れた瞬間だったので。そういうものの、今のカッコいいバージョンを作りたくて、ずっと僕らのPVを作ってきた監督と一緒に作ったんです。それを見てきた世代として、こういうものにチャレンジできるのは、ただのタイアップっていうより、憧れを叶えた感覚が強いですね。
-フェスとかと同じように、憧れのステージのひとつだったんですね。
そうですね。15年やってても、また埋めていけるチェックリストがあるなって。
-あとアニメの場合は、今はコロナ禍で海外にライヴに行くのが難しいから、アニメを通して最新のcoldrainを届けることができるっていう意味でも大きいですよね。
でも、難しいのが逆にアニメで海外の人に身近に感じてもらえるからこそ、なんでライヴには来ないんだよ! って言われるっていう。南米とかから、来週にでも来たらいいじゃんってメールが来るんですけど。だから、海外にライヴに行きやすい環境を作らなきゃいけない。そうやって環境を変えるには、数字で結果を出さなきゃいけないんです。だから、アニメによってサブスクやYouTubeの数字が伸びて、自分たちの音楽が注目されれば、いろんなバンドが海外にライヴに行きやすくなると思うので。SiMが"「進撃の巨人」The Final Season Part 2"(のオープニング・テーマ「The Rumbling」)で記録を作ったのは、ほかのバンドにもプラスになるんじゃないかなと。
-coldrainやSiMが風穴をあけていって、どんどん風通しが良くなるわけですもんね。"TRIPLE AXE"でワールド・ツアーとかやってほしいですよ。あと、今作にはNO DOUBT「Don't Speak」のカバーも収録されていますよね。これを選曲した理由は?
いろんな偶然が重なって。そろそろカバーをやろうかって話していたときに、僕は声が高めなので、女性ヴォーカルの曲がやりたくなる、且つ自分たちのサウンドでやるとなると難しくなる。でも、ほかの人があまりやっていない、それでいて過去の名曲を探していてレコーディング中ずっと悩んでいて。海外の人にも聴いてほしくって、日本でも知られている洋楽の曲を探していたら、プロデューサーのElvis(Michael "Elvis" Baskette)の奥さんが、その曲を挙げてくれて。その前の候補がt.A.T.u.だったんです。
-なんと! それはそれで興味深い。
意外とヘヴィにできそうだったんですけど、歌の要素があんまりエモくなくって。僕としては、カバーするときにノリで済ませたくなかったんですけど、t.A.T.u.はクラブ・サウンドなので、DJ的なカバーになっちゃう。そのときに提案されたのが「Don't Speak」でした。僕も、レコードを持っているし好きな曲だったからやりたいって。しかも、Elvisがアコースティック・ギターのソロのために、その時代によく使われていたオベーションのギターを買ってきてくれて。僕もGwen(Gwen Stefani/NO DOUBT/Vo)と戦うわけだし、原キーで歌いましたよ。やるからにはNO DOUBTじゃなくcoldrainの曲だねって言われれるように頑張りました。
-歌いこなしているから、若い子はcoldrainのオリジナルだと思うかもしれないですよね。
そこが面白いところです。ちょうど僕ら世代からは、そこを選ぶのずるいよって言われているんですけど、若い子が本家を聴いたときにカバーって勘違いするような曲が一番面白くって。そうなると、若い子が僕らのルーツを聴きにいくこともできますし。
-すでに世代を跨いで聴かれているかもしれないcoldrainですが、今年で結成15周年ですもんね。そのことに関しては、どんな思いでいらっしゃいますか。
ついに若手じゃないタイミングが来たな、とは思っていて。こないだHYDEさんと対バンして、逆にフェスでは、中学生のときから聴いていますっていう若いバンドと会うこともあって。僕、最初にカバーした曲がラルク(L'Arc~en~Ciel)なんです。こういうところにたどり着けるんだな、ちょうど15周年で、いいレジェンド像を見せていただけたなって。僕もHYDEさんぐらいの年齢までやれるんだなっていうのを見せられちゃったから。個人的には、こんな歌って叫ぶ音楽ができるのは40歳までかな、みたいに思っていたんですよね。でも、HYDEさんを見ちゃったから、最低でも50までは頑張ろうかなって。下の世代にも見せていかなきゃいけないし。最初にコピーしたのはcoldrainですって言われるように頑張らなきゃいけないなって。今まではおこがましいって考えていましたけど、下の世代が目指すところになりたいって、15年が経って初めて思うようになった。『Nonnegative』を出して、ツアー(["Nonnegative" ONE MAN TOUR 2022])もあるしファイナルには横アリ(横浜アリーナ)も控えていますし、これからも、まだいくつか登れる階段があると感じています。
-すごく余談ですけど、ラルクのコピーした曲は、なんだったんですか。
いろいろやったんですけど、こないだKatsuma(Dr)と話していたら、僕は「STAY AWAY」だと思っていたんですが、Katsumaは"ゴジラ GODZILLA"のサントラに入っていた「浸食 -lose control-」だって言うんです。ラルクの中でもヘヴィな曲だったからやっていたっていう。当時、日本のバンドの中でもリフがある曲を探していたんですよね。でも、自分には難しかったです。こないだの対バンでは「HONEY」を一緒に歌わせてもらったんですけど、写真を見たら、HYDEさんは歌っているときもずっと顔がカッコいいんです。絵にならない瞬間がないんですよね。僕はめっちゃ必死な顔なのに。その技術は盗んでいけばと思います(笑)。
-今、coldrainがすごくいい場所に立っていることが伝わってきますね。
楽しいですね。それは、ある意味コロナっていう状況から貰ったことかもしれない。改めて、全部が楽しくなった。できるっていう喜びを教えてもらったかもしれないです。