INTERVIEW
Unlucky Morpheus
2019.07.30UPDATE
2019年07月号掲載
Member:天外 冬黄(Vo) 紫煉(Gt) 仁耶(Gt) 小川 洋行(Ba) FUMIYA(Dr) Jill(Vn)
Interviewer:荒金 良介
あんきもの独自性を確立することができたツアーだった
-ライヴではメンバーひとりひとりの見せ場もしっかり作ってて、それも観応えがありました。
冬黄:みんな器用なんですよ。ふーみん(FUMIYA)はピアノを弾けたり、Jillさんはクラシック音楽に強かったりするし......特にワンマンはいろんなことができるんだぞ! って見せられるから。
紫煉:今年のツアーではトランペットを吹いてみようと思っています。
-マジですか! メタル・バンドにホーンってまた斬新ですね。
冬黄:飽きさせないように、いろんな側面を魅せていけたらなと。いずれ全員パート・チェンジとかやりたい......。
小川:ヴァイオリンは誰もできないよ(笑)。
冬黄:紫煉はピアノ、ドラムも叩けますからね。
-「鎮昏歌」などはJillさんが楽曲を引っ張ってますよね。
Jill:それもそうですし、アコースティック・セットでやった曲もヴァイオリンが前面に出ます。そのぶん、責任感を感じていますね。
-そうなんですね。あと、小川さんと仁耶さんの二人羽織プレイにもビックリしました。
小川:あそこはベース・ソロの場所なんですが、ベーシストの俺が言うのも変だけど、退屈な時間と思われるのが嫌だから毎回違うことをやったんですよ。二人羽織は新宿ReNYだけでやりました。Victor Wootenがベーシスト同士で1本のベースを弾いてて、それが面白いなと思い、いつかやりたいと考えていたんですよ。
冬黄:サービス精神というか、観る人のことも考えてます。
小川:ベース・ソロが唯一楽しくなかったと思われたら嫌だから(笑)。
仁耶:"こうじゃなきゃ"っていう固定概念は持たず、新しいことをやっていきたいですね。
紫煉:各メンバーのソロ・コーナーやアコースティック・セットは自分の手を休ませるための時間なのですが、それをただのマイナスではなく、新しいことにチャレンジするきっかけにできているかなと思います。3人(紫煉、仁耶、Jill)でソロを分担することで曲やライヴのバリエーションも増えたし、それはいい変化だと思います。
FUMIYA:リーダーが柔軟で良かった。普通こういうバンドだと、メインに立つ人はこういう考えに至らないと思うから、それはあんきもの強みだなと思うし、尊敬します。
冬黄:紫煉の柔軟なところが出てるなと。変わってるというか、不思議な人だなと思いますね(笑)。
仁耶:紫煉さんから"俺は弾けないから、そのぶん弾いて"とお願いされたら、責任感も生まれるし、頑張ろうという気持ちになります。
小川:"俺が俺が"がじゃなくて、バンド全体を見てますからね。"俺が死んでもあんきもは残す!"くらいの気持ちがあるのかなって。
-紫煉さんはプロデューサー視点が強いんですかね?
紫煉:そうですね。
冬黄:紫煉はリーダーであり、ギタリストであり、作曲家であり、プロデューサーでもあるから。
-映像を観ても現6人のカタマリ感は増し、あんきもにしか鳴らせないオリジナリティがより強固になっている印象を受けます。
紫煉:あんきもの独自性を確立することができたツアーだったかもしれないですね。
冬黄:あんきもは編成としてもあまりいないメタル・バンドだし、個々のキャラも強い。
-激しさはもちろん、華やかさ、美しさ、ドラマ性という部分において、ここまで過剰に追求しているメタル・バンドもそうそういないんじゃないかと。
紫煉:そういう音楽に影響を受けたし、無人島に持っていくなら、そういう楽曲がいいなって(笑)。ストーリーのない音楽って、聴いて泣けたり、元気が出たりするかな? って思うほうだから。コンパクトな曲でも元気が出る人もいるだろうけど、自分はそうじゃないですからね。これからもインスタントじゃないものを作り続けたい。作曲家としては、そこにこだわってます。聴いてグッとくるものを作らないと、意味がない。
-そういえば、話は少し変わりますけど、VIPER/ANGRAのAndre Matos(Vo)が6月8日に47歳の若さで死去しました。紫煉さんは自身のTwitterで"俺の人生で最も重要な曲は何? と言われたらこの一択!"と綴り、ANGRAの超名曲「Carry On」を選んでましたね。
紫煉:そうですね。Andre Matosには影響を受けました。昔から彼の曲や音の積み方にこだわりを感じていたし。曲を聴いていると、彼が愛してきた音楽の歴史を感じるし、自分もそういう音楽を作りたいんですよ。高校生のときかな、ANGRAが日本に来て、アンコールで「Carry On」をやってくれたんですけど、SEの時点でダムに水が溜まって、始まった瞬間に泣きましたからね。そういう体験を学生の頃にしているので......「Smoke On The Water」(DEEP PURPLE)も名曲ですけど、あれでは泣けないじゃないですか(笑)。
-言いたいことはわかります。
冬黄:イントロの時点で人の魂を高揚させるというね。あんきもに「その魂に安らぎを ~ Dignity of Spirit」(2010年リリースのアルバム『Hypothetical Box ACT 2』収録曲)という曲があるんですけど、それもイントロでダムの水が溜まる曲だと思う。
紫煉:そうだね。あと今後の予定を話すと、今はツアー中ですけど、『Hypothetical Box ACT 2』のリレコーディングを並行してやってて、ざっくりと今年中には出したいと思ってます。今ツアーでやってる曲を録音しているので、ライヴの感触やノリをレコーディングに反映させるいい機会なんです。ライヴで固めてからレコーディングできるメリットがありますからね。
-リレコーディング作を出そうと思った理由は?
紫煉:去年10周年で、次は何をやろうかなと思ったときに、普通にアルバムを出すのもアリだけど、昔は東方アレンジだけで活動していたので、その頃を振り返ってもいいかなと。昔の曲をやることで、今のあんきもにも興味を持ってもらいたいし。
冬黄:じゃあ、来年は(笑)?
紫煉:来年はアルバムを作ってツアーをしようかなと思ってます。
-あんきもの動きはますます活発化する流れで?
FUMIYA:そうですね。前回、初のツアー・ファイナルで新宿ReNYを埋めたのはすごいと思ってて、今はすごくいい流れなので、このまま上り調子でいきたいなと。来年アルバムを出したら、キャパ上げもできるだろうし、明確にバンドとして上がっていくヴィジョンが共通認識としてありますからね。
紫煉:来年はどれぐらいでやれるかな。
FUMIYA:CLUBCITTA'川崎? TSUTAYA O-EASTとか?
紫煉:そのへんのキャパを抑えられたらいいね。
冬黄:ハコのキャパが上がると、ファンも嬉しいだろうし、右肩上がりの活動をしていきたいです。
紫煉:これからも音楽の歴史を紡ぐものを作っていこうという気持ちで頑張っていきます。あと、これまではいい音楽を作ることにモチベーションを集中しすぎて、売れることに対するモチベーションが高くなかったんだけど......世間一般で言うところの売れることを目指すのも面白いかなと最近は思うようになりました。俺がそう思っちゃったら、どんどんそうなるだろうから。そのつもりなので、今後のあんきもを楽しみにしてほしいですね。