LIVE REPORT
SCREAM OUT FEST 2014
2014.02.09 @新木場STUDIO COAST
Writer KAORU
昨年は渋谷CLUB QUATTROで2日間開催され、大盛況だったSCREAM OUT FEST(以下SOF)も5回目。今年は新木場STUDIO COASTへと、キャパシティを大幅に広げ開催された。海外からはTHE DEVIL WEARS PRADA、PERIPHERY、THE WORD ALIVEを招聘し、日本からはFear, and Loathing in Las Vegas 、HER NAME IN BLOOD、CRYSTAL LAKEと、海外勢に引けを取らない実力派の3組が出演し、更に、8bitサウンドを取り入れたエレクトロ・バンド、THE GAME SHOPがDJを務めた。
会場に入ると、THE GAME SHOPがドラムンベースを基調としたアグレッシヴでアゲアゲなDJでフロアを徐々に暖める。彼らがプレイしたFred V & Grafix「Just A Thought」などは、ドラムンベースが好きな人はぜひチェックしてほしい。
IMMEDIATE MUSICの「Novus Arcana」のSEが流れ、日本のメタルコア・シーンを代表するHER NAME IN BLOODが登場。その硬派でテクニカルなサウンドは海外でも必ず通用するであろう完成度を誇り、演奏力もさすがの一言。フロアもダイヴやサークル・モッシュで負けじと応戦。Lady Gagaの「Poker Face」のカヴァーでの一体感、そしてブルータルで独特のギター・フレーズが印象的な新曲も初披露され、祭の幕開けに相応しい素晴らしいショウで魅せてくれた。
続いては、アリゾナ出身のメタルコア・バンドTHE WORD ALIVE。結成して6年目ではあるが、GREELEY ESTATESやIN FEAR AND FAITHでも活躍していたTyler "Telle" Smithの安定したヴォーカルはもちろん、粒が細かく輪郭のはっきりした音質でどこまでも正確にプレイするLuke Hollandのドラミングは目を見張るものがあった。「Evolution」のような複雑な構成の曲もさらりと演奏し、暴れさせるところは徹底的に暴れさせ、聴かせるところはしっかりと聴かせてくれる。「2012」ではお客さんがフロアの柵を取ってしまい、それまで2つに分かれていたサークル・ピットがひとつになるという場面も印象に残った。
そして日本のハードコア・リスナーから絶大な人気を誇るCRYSTAL LAKE。1曲目からツー・ステップとモッシュの嵐で、テンションはMAX!ヴォーカルのRYOは2012年に加入したばかりで、若干23才と年齢も若いのだが、大きなステージでも一切物怖じせず、むしろもっと広いステージに立つべきだと感じさせるリーダーシップを発揮している。この日初披露された新曲は"Up Up Up""Down Down Down"というサビがわかりやすく、初めて聴いたにもかかわらず皆シンガロング。ギター・ソロも後まで印象に残る楽曲だったので、音源化するのが楽しみだ。
自殺してしまった仲間への想いが込められたMCを綴り、「Fire Inside」が始まると、RYOがフロアに向かって"ステージに上がって来いよ!"と煽り、セキュリティを説得するという掟破りの場面も。最終的には30人くらいのオーディエンスがステージ上に集まり、コーラスに参加したり、ダイヴしたり、賛否両論分かれるであろう雰囲気になったのだが、そのステージにあったものは、ハードコアへの熱い想いと、愛だったということは確かだ。
続いては、アメリカ、メリーランド州出身のプログレッシヴ・メタル・バンドPERIPHERY。待望の日本初来日となる。Djentスタイルを確立した第一人者として注目され、この日彼らのライヴを目当てに来たファンもかなり多かったのではないだろうか。まず目を奪われたのが、ドラムのMatt Halpermのセットの組み方だ。ハイ・タムとミドル・タムは置かず、キック、フロア・タム、スネア、ハイハット、シンバルのみと、かなり特殊な構成となっている。ミステリアスな「Muramasa」が始まると、それまで暴れ回っていたフロアがじっと聴き入り、続く「Ragnarok」では、Misha、Jake、Markが奏でるトリプル・ギターの厚みと、Spencerの伸びやかなハイトーン・ヴォイスに魅了される。その後も変幻自在なリズムを操り、圧倒的なスケール感で曲の世界観を表現し、正に異空間に飛ばされたかのような感覚に陥る。Mattのドラムはタムがない分、硬質なスネアの音に絶妙な強弱を付け、これまで見たことのない素晴らしいドラミングを披露してくれた。ライヴが終了してもしばらく熱は冷めず、フェスでは異例のアンコールの声が大きく上がった。
そして日本勢のラストとなるFear, and Loathing in Las Vegas。今回のSOFは、所謂"硬派"とされるバンドばかりが出演していたので、バンド側もお客さんも若干のアウェー感があったのではないかと思うが、結果として、彼らは完全に勝ったと言えるだろう。
SEと共に元気よく登場し、「Scream Hard as You Can」からスタート。Soのヴォーカルの音量が若干小さめで全体的に音のバランスがあまり良くなかったのだが、そんなことは気にならないほど圧巻のテンションに一気に持っていかれる。複雑な構成で獰猛なブレイクダウンが特徴の「My Dear Lady Will You Dance With Me Tonight」、そして「Chase The Light!」がプレイされた後、彼らの地元である神戸ワールド記念ホールでの初ワンマンが開催されることを告げた。そして最新シングル「Rave-Up Tonight」ではMinamiが側転を披露し、彼らの初期を髣髴させる、どこまでもアッパーでレイヴィーなサウンドと、アクロバティックなパフォーマンスにド肝を抜かれた。「Crossover」ではSoがダイヴし、「Twilight」ではヘドバンの嵐で大団円。とても緻密な音作りは賢く計算されているが、決して打算的なだけではないという本気のステージに心を動かされた人は私だけではないだろう。
そしてSOFの大トリを飾ったのは、アメリカのクリスチャン・メタルコアを代表するTHE DEVIL WEARS PRADAだ。赤い照明に彩られた中、メンバーが登場し、一気に緊張感が高まる。キーボードの白鍵の音色と生々しいグロウルが心臓を突き刺すかのような「Gloom」から始まり、「Escape」ではドラマチックな世界観の中、Mike Hranicaはステージ上を所狭しと走り回り、フロアはWODの嵐が繰り広げられた。"コンニチハ。アリガトウゴザイマス"と、意外と気さくなMCで緊迫感が中和されたが、もう全部切り裂いてやる!と言わんばかりの獰猛な「Sailor's Prayer」、聴いているだけで全身から血が噴出しそうな「Martyrs」と畳み掛ける。「War」ではMikeがトレーナーの首元を頭に被せて奇妙な動きをしながらステージを1周し、Daniel Williamsは安定したプレイをしながらも派手なパフォーマンスで魅せる。「Born To Lose」ではメンバーそれぞれの音の輪郭を際立たせた一体感を見せ、美しいヴォーカルのメロディに合わせフロアもシンガロング& WODで応戦。ドロッドロの重いリフが印象的な「First Sight」、そして本編最後の「Danger」ではメンバーのテンションもフロアのボルテージも最高潮に達した。まだまだ身体がうずく。すぐにアンコールの声が上がり、「Mammoth」が披露され、Mikeの咆哮と巨大なサークル・ピットが一体となり、大爆発という言葉が相応しい最高のラストとなった。UNDEROATH以降のクリスチャン・メタルコアの未来を背負う彼らのプレイは、とにかく圧巻の一言だった。
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