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LIVE REPORT

摩天楼オペラ

2012.12.07 @新木場 STUDIO COAST

Writer 荒金 良介

"楽しいね、新木場COAST。「Orb」は聴いてくれたかな? 俺たちの新しい1歩みたいな曲になった"と苑は嬉々とした表情で語っていた。摩天楼オペラの5thシングル『Orb』レコ発ショート・ツアー"as if an Orb tour"が東名阪で行われ、その初日の東京公演に足を運んだ。開演17時前に会場に着くと、既に多くの観客で溢れ返っていた。最終チェックなのか、幕に覆われたステージの裏側からYngwie Malmsteenの「Rising Force」のギター・フレーズが聴こえ、ニヤッとする。

17時2分、ステージの幕が開くと、オープニングは「ANOMIE」で始まった。苑が伸びやかなシャウトを披露し、そこに重厚なサウンドを畳み掛け、Anziが煌びやかなギター・ソロで色づけをする。すると会場は早くもヘドバン、拳を突き上げる人、はたまペンライトを振る人など、それぞれの楽しみ方で盛り上がっている。2曲目「Psychic Paradise」を終えると、すぐに上着を脱ぐ苑。"暑くてさ"と気さくに語りかけると、観客も笑っていた。"(ドラムが)復帰したから、思い切りやれるぜ!"と煽ると、悠のヘヴィなドラムで始まる「落とし穴の底はこんな世界」へ移り、観客のオイオイ・コールはでかくなり、COASTは熱い一体感に包まれた。激しいリフとドラマティックな展開が合わさった「SWORD」は、後半に耀のベース、彩雨のキーボード、Anziのギターとリレー形式でソロ・パートも折り込んだスリリングな曲調で耳目を引きつける。苑だけ一旦ステージから離れると、哀切極まるインスト・ナンバー「Utopia」をプレイし、華麗なキーボードの旋律、Gary Mooreを彷彿とさせるブルージーなギター・ソロも素晴らしかった。そして、ここで新曲「foolish」がお披露目された。彩雨がボコーダーを使用してリード・ヴォーカルを務める打ち込み主体のダンサブルな楽曲を放ち、そのグルーヴ感は最新シングルのカップリング曲「DRACULA」へと受け継がれる。苑と彩雨の2人だけがステージに立つ光景も希だが、異国情緒たっぷりの摩天楼オペラ流のダンス・ナンバーはショウの流れにいいアクセントを与えていた。

中盤に差し掛かると、「Adult Children」、「INDEPENDENT」とスピーディーな楽曲で会場のヘドバンの嵐を作り上げ、ここで最新シングル表題曲「Orb」に移行する。その前に苑が長めのMCを添えた。某記事でメンバーの誰かが結婚したんじゃないか、というニュアンスの内容があり、結婚おめでとうの手紙が来たことを明かすと、会場は爆笑。その事実はなく、いつかは普通に温かい家庭を持ちたいと告げ"家族愛みたいな歌詞を書いたことがなくて、ああいう歌詞を書けて嬉しい。最近、人に優しくなってきた。大人の階段を上ってます"と吐露すると、ようやく曲に入った。音源で聴いたときにも感じたが、ライヴで聴くと、改めて曲の世界観が心に染み込んでくる。ギミックなしの壮大な曲調に奥深いメッセージを秘め、それが多くの観客と共有されることで、さらなるパワーを発揮していた。苑も摩天楼オペラの土台は崩さず、ぶっ壊したかったと言っていた。従来の型をなぞらず、新しい可能性を追い求める姿勢はロック・バンドとして健全な姿だと思う。もっと未知の領域に果敢に突き進んでほしい、と素直に思えた。そのきっかけにもなる重要な1曲と言えるだろう。本編を「GLORIA」で締め括ると、バンドはアンコールにもきっちり応える。"腹から声出せ、オレに付いて来い!"と悠が叫び、完全復帰をアピールする渾身のドラム・ソロや、hideの「DICE」のカヴァーもやってくれた。ラストは「喝采と激情のグロリア」で大合唱を巻き起こし、2時間強のライヴは盛大に幕を閉じた。苑が何度も口にしていたが、ツアー初日にもかかわらず、ファイナルのような気合いと熱狂が渦巻いていた。

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