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INTERVIEW

打首獄門同好会

2020.11.25UPDATE

打首獄門同好会

Member:大澤 敦史(Gt/Vo) 河本 あす香(Dr) junko(Ba)

Interviewer:吉羽 さおり

敵対なんですよね。刃向かうぞっていう感じです


-もともと曲のきっかけはどういうところからだったんですか。

大澤:日常的に思っていることなんですけど、特に作曲中って太るんですよ。煮詰まったときに、ダメだ、ここはこの気分のままでは進まない、食べようって食べちゃって。

そうすると、食べた3倍、4倍とまた身体を動かないといけないですよね。

大澤:筋肉の話に戻っちゃいますけどね(笑)。

-そしてTwitterで上がったときに最高だなと思ったのが、「牛乳推奨月間」のパンチ力でした。

:これもリアルタイムでしたね。とにかくあの頃は、学校が一斉休校になって牛乳が余ってしまうと。だからみんなで牛乳を飲もうと。それは心から賛同しましたね。牛乳も好きなんですよ。子供の頃、親から"牛乳は1日1リットルまでにしなさい"と怒られていたくらいで。だからいつも、家族の中で牛乳を買いに行く当番が俺でしたね。

河本:私は逆に牛乳は飲まないんですけど、この曲を作った当時はちょっと飲もうと思って(笑)。小さいの買って飲んでいましたね。

大澤:朝は牛乳にケロッグで、そのあと作業するときにアイスカフェラテを飲みながらやって。この自粛期間、意を決して買ったのがエスプレッソマシンだったんです。さっきの甘いものの話じゃないですけど、どうしても家で口が寂しくなるんですよ。でも、コンビニで甘いものを買って飲んでしまうのはいかんと。何か無糖でいけるものはないかということで、美味しいアイスカフェラテを家で作れるようにしようと買ったんです。そしたらちょうど世の中的にも"牛乳推奨月間"がきて。まぁ飲むこと、飲むこと。でも終わってみたら、この時期の牛乳は無駄になりませんでしたという報告がされたので。少しでも役に立てたならと、非常に誇らしく思いましたね。

-この曲も一翼を担ったかもしれません。しかもお酒のコールのような曲で、飲んで飲んで飲んでと言われたら(笑)。

河本:まさか牛乳でこのコールがくるとはね(笑)。

大澤:このときは飲むことが応援でしたからね。この曲はできるのが早かったです。この時期Twitterに上げていた曲は大概そうですけど、かかって1日、2日で、だいたい数時間で作っていましたからね。そういう作り方はあまりしたことなかったんです。曲の一部がポンとできても、Bメロがずっとできないとか、Aメロが気に入らないから作り直すとか、時間をかけるタイプで。だから最終的にどう作ったのかわからないような曲になるんですけど。これはさっと全部できあがって。そういう曲を出すことを許したのも、2020年の独特の背景があったからなんですよね。

-そういうふうにTwitterに上げた曲を、こうして1枚の作品にまとめることも、これまでだったらしなかった発想ですか?

大澤:そうですね、いろんな背景が重なってのものですね。とにかくまずはライヴをいつ再開するのか、ツアーをいつ再開するのかというのがあったので。だからリリースはツアーができるとき、ツアーありきでタイミングを見計らっていた感じがありました。で、年末にツアーをやることが決まって、逆算して秋のリリースをしようとなって、じゃあこの曲たちを入れようくらいの順番だったんです。だから、本当に成り行きなんですよね。この「牛乳推奨月間」とかライヴでやると良さそうですよね。

-盛り上がると思います。すぐに覚えられる曲でもあるので。

河本:今は、ライヴでお客さんが声を出せないのがちょっと悔しいところですけどね。

大澤:何千人が、"牛乳推奨月間!"って言うのを聞きたかったよね。"何を言っているんだ君たちは"っていう。だからコロナが明けても歌っていきたい曲ですね。

-「足の筋肉の衰えヤバイ」や「ニンニクは正義」もまた共感の嵐の方も多いと思います。そして今作のラストを飾るのが「明日の計画」で、自粛明けの開放感を綴った曲でした。

大澤:これは緊急事態宣言の解除とともに発表したんですけど、作ったのは緊急事態宣言前で3月のうちに作っていたんです。緊急事態宣言に入るギリギリのタイミングでレコーディングを終えてというか、楽器録りとコーラスまで終えたんです。歌録りをするとなって緊急事態宣言に入ってしまったので、だから男声しかないんです。大澤が自宅で録ったヴォーカル・パートしかないんですよね。とりあえずその頃は、緊急事態宣言くらいで収束すると思っていたので、それが明けたときのための歌を作ったんですけども、奇しくもこの曲の本当の出番は、このリリースに至ってもまた訪れていないという......。MVも発表していますけど、まだまだ本番はこれからというか。

-気持ちのいいサウンドが本当に体感できるのはいつなんだろうという感じですね。そして、このアルバムの1曲目「新型コロナウイルスが憎い」という、やっぱりここに戻ってしまう感覚があります。この「新型コロナウイルスが憎い」は2月29日の無観客配信ライヴのオープニングとして発表されてから、その都度歌詞が更新されるなど変化をしてきた曲ですが、いろんな思いが詰まった曲になりましたね。

大澤:それでも憎い気持ちは変わらないですよね。コロナウイルスそんな悪いやつじゃないなって、思えないですからね。憎いままですよ。

-あの配信ライヴのオープニングでこの曲が流れたときに、ここまでストレートに今を歌ってくれるバンドはやっぱりいないなと思いました。もうこれしか言いようがなかった、ということをストレートに言ってくれた清々しさがあって。

大澤:そのまんまでしたね。あの時点で本当に憎かったんですよ。こっちは15周年で47都道府県ツアーをやって、ワンマン・ツアーをやって、喉も潰さず、いずれの会場もソールド・アウトで、万々歳で15周年を終える気満々のツアー・ファイナルが中止って(苦笑)。あぁ憎たらしいっていう。自然とできますよね、こういう曲が。

-ライヴの前日に作られたんですよね。

大澤:そうですね。無観客ライヴが決まって、本番まで3日間あって。1日目にやるぞって決まって、2日目にみんなで相談だってなって、3日目にライヴの進行のシナリオとオープニングを決めるという作業をしていて。そこまでのワンマン・ツアーのオープニングは47都道府県ツアーでわっしょいわっしょいやっている映像のダイジェスト版だったんですけど。それを無観客の配信ライヴで流すのは、ちがうなとなっちゃって。オープニングも作り直したほうがいいですね、何か考えますって帰って──考えたらこれになりました。とりあえず今の心情を総括してから始めようと。

-心の叫びであると同時に、すぐ覚えてしまうキャッチーさもあって。どこかしらユーモアも混じった打首ならではのものが出ていたのが良かったです。

大澤:4~5時間で作った曲だったんですけどね。そのあと、思った以上にこの曲がひとり歩きし始めたので、Twitterに"あのとき流したのはこれだよ"って動画を上げたんです。そしたらTwitter動画のくせに100万回再生とかされていて。"そんなに!?"っていう。あとはメディアで、今こんなに無観客のライヴがやられていますよっていう紹介されるなかで、確か"ミュージックステーション"で紹介されたのがこの曲のシーンだったんですよね。

河本:(笑)

大澤:"これかー!"っていう。もっといろんな素材渡したんだけどなって。

-1番のインパクトだったんでしょうね(笑)。

大澤:その時点の曲は打首獄門同好会の作品というか、俺の宅録なんだけどねっていう(笑)。そういうこともあって、ある意味今年を代表するナンバーになったので、改めて3人で編曲して録り直したんです。

-エンディングは歌詞カードにないですが、いろんな思いが叫ばれてもいますね。

大澤:最後にナレーションを入れているのは、もう賭けですよね。この『2020』を例えば3~4年経って聴いたときに、"この年、こんなことあったね"って振り返るような想定で作ったんです。そうあってほしいという願望も込めて作ったところはありました。この年はこんな年だったというふうになってほしいなという。いろんな象徴的な年ってあるじゃないですか。例えば日本だったら、2011年といえばピンとくるとか。たぶんいろんな国、いろんな文化でそういう、"この年は、ああいう年だね"というのがあると思うんですけど。2020年ばかりは世界共通で"あの年だね"ってなると思うので。このタイトルを付けたことが、どういう意味をもたらすのか、こうあってほしいなという願望を込めたのがあのナレーションの内容にもなりますね。

-ジャケットのアートワークも、シリアスな雰囲気です。

大澤:"新型コロナウイルスが憎い"というのが、主軸のテーマなので。だからもう敵対なんですよね。刃向かうぞっていう感じです。我々にとっては、それでもちゃんと音楽活動をする、音を出して、音を届けて、ライヴも大変不自由な状況になると思うんですけど、それでも楽しかったと言わせて帰るというのが、この時代に対する反抗だと考えているので。このジャケットのイメージが固まるのは早かったです。

-打首の"生活密着型ラウドロック"が、ブレることなく、よりリアリティをもって響くアルバムですね。

大澤:自分でも成り行き、成り行きと言っていますけど、本当に成り行きでこうなった、こういう作品ができたので。あぁ、こういうふうになるんだなと自分でも客観的に思います。昨年だったら想像してないですもんね、こういうアルバムを作るだろうなというのは。

-きっと昨年の段階では、無事にツアーを終えて16年目を迎えるうえで考えていたこともたくさんあったと思うのですが、その点はどうだったんですか。

大澤:といっても大したことを考えてなかったんですよ(笑)。これは公言しちゃっているんですけど、47都道府県ツアーと7都市8会場のワンマン・ツアーに留まらず、ベスト・アルバムも出してという感じで、15周年がすごく忙しかったんです。なので、2020年はちょっとのんびりといく予定で。小さいツアーと夏フェスに力を入れて、あとはオリンピックを見に行くつもりだったんです。せっかく東京でやるんだしって思っていたんですよ。本当は今年3月にアメリカ・ツアーが予定されていたので、異国の空気に触れて、その後ツアーをやって、夏フェスをやって、2020年終了! っていう気持ちだったんです。

-11月末から"新型コロナウイルスが憎いツアー2020"がスタートします。まだまだライヴでの制限が多い中で、いろいろ打首らしいステージを考えているだろうなと思うので、そこを楽しみにしています。

大澤:仕込み始めていますけど、うまくいくかどうかは本当に読めませんね、今回に関しては。8月に一度、大阪で有観客のフェス型イベントに参加して、なんとなくこうなるんだなという感触はあるんですけど。とはいえそれで2時間、どう切り抜けるのかっていう(笑)。絶対に、お客さんのほうが自由を奪われていると思うので。その状況で、"それでも楽しかった"と言ってもらえないのは我々として敗北なので、そこはなんとかやっていかなきゃと。チャレンジですよね、"果たして打首獄門同好会は、それでも楽しかったと言わせることができるのか"っていう。力が試されますね。