INTERVIEW
ナノ
2018.08.16UPDATE
2018年08月号掲載
Interviewer:吉羽 さおり
-5周年を経て、新しいナノがスタートするということが伝わる曲です。また、ナノ盤のカップリングが「Gloria」ですが、こちらは舞台"大正浪漫探偵譚 -六つのマリア像-"の主題歌なんですね。
もともと発表したのは4月(※4月13日にリリック・ムービーを公開した)なんですけど、ちゃんとフル尺で聴かせられるのはこのCDが初めてなので。早くみんなに聴いてもらいたいと思ったし、これもこれで、今までやったことないタイプの曲で、すごくファンタジックで──
-壮大な曲になりましたね。
何回かライヴでもやったんですけど、すっごく気持ちのいい曲なんです。実際に舞台も観に行かせていただいて、この曲が最後に流れるんですけど、感動的でしたね。今までアニメの主題歌はやってきましたけど、生の舞台で自分の曲が重なっていくのは、鳥肌が立つというか、今までにない感じでした。
-先ほど、"新しいものを表したい"という話が出ましたが、この曲もまた、ゼロになってリスタートするという力強さが描かれています。
アルバム『The Crossing』は、5周年の区切りでもあって。"crossing"──次へと渡る自分を探したいというのがあったんです。アルバム以降、より自分を追求したいと思いましたし、常に初心を忘れないという意味でのゼロでもあって。いつもなぜか自分はゼロとか原点とか、そういうところをすごく意識しているんですよね。
-その飢餓感みたいなものって、なんなんでしょう。
すべて、やってきたことは繋がっていると思うんです。過去の自分がないかぎり、今の自分はないので。そういう部分で、自分の芯や、ゼロっていうものは大事なのかなって思うんですね。ゼロであるかぎり、上にいくしかないですしね。ゼロが怖いとか、何もないものが怖いとか、そういうふうにはあまり考えないんです。
-ナノさんの志向としても、例えば、何か物事に行き詰まってしまったり、頭がこんがらがったりしたときというのは、"いったんゼロに戻ろう"じゃないですけど、そういうふうに考えられる感じですか。
そうですね。あとは、そうなったときって、"自分が変われるいいチャンスだ"とか、"方向転換するための苦しみなのかな、迷いなのかな"って思うようにしているんですよね。行き詰まっているということは、何かしらそこに警告が出ているということで。"この先、ちょっと違う方向なんじゃない?"っていう警告なんだって自分で思えれば、たぶんその苦しみは乗り越えられるだろうなって思うんです。わりとポジティヴ思考なので......強がりかもしれないですけど、全部ポジティヴな方に持っていこうとしちゃいますね。
-なるほど。作曲のWEST GROUNDさんとは楽曲について、どういう話を?
教会っぽいイメージがあったので、とにかくストリングスとかオーケストラをふんだんに入れて、壮大感を出そうと考えました。
-タイトルの「Gloria」という言葉には、どんな想いを込めていますか。
歌い出しの部分が教会の、ミサとかで歌いそうな感じだなと思って。最終的には英語詞になっているんですけど、途中の段階では、ラテン語にしようかなとか、お祈りっぽい感じにしようかなとも思っていたんです。小さいころ、教会のやっている合唱団に入っていて、教会が主催のものなので、キリスト教関連の歌を歌うことが多くて。その歌の中によく登場する言葉が"Gloria"だったんですよね。なので、この曲を聴いたときに、ピンときたというか、"なんかいいな"って思って。そういう、過去の自分の引き出しも開けられた感じがして、嬉しかったですね。
-子供ながらにナノさんは"Gloria"という言葉をどう解釈していたんですか。
きれいな言葉だなって思っていたんです。希望を湧かせるような美しい言葉で、きれいな歌で使われる言葉なんですよね。意味としては"最も素晴らしいもの"というものなので、天国だったり、希望だったり、光だったり......暗い曲なのにあえて"Gloria"というタイトルにしたという部分が、自分の中でのひねりでもあって。
-そういうことでは、ゴスペル的な感覚ですかね。
まさしくそういう感じですね。ただ、ひとつ裏話があるんですけど、レコーディングをしたときに"Gloria"という言葉自体があまり歌い出しには向いてない音だなって、正直思っちゃったんですよね(笑)。"Gloria"の"グ"が地味な音なんですよ。弾けないし、勢いもないし。なので実は、冒頭の"Gloria"だけ"クローリア"と歌っているんです(笑)。
-気づきませんでした(笑)。
そんな裏話があるんです。実際にレコーディングをしてみて初めて"これは良かったな"とか、逆に"これは難しいな"とか、気づくことがすごくあるんですよね。