INTERVIEW
SUGIZO (LUNA SEA) × TOSHI-LOW (BRAHMAN)
2018.06.04UPDATE
LUNA SEA:SUGIZO(Gt/Vn)
BRAHMAN:TOSHI-LOW(Vo)
インタビュアー:TAISHI IWAMI Photo by 石崎祥子
-そうなると音楽的にはかなり難しいですよね。
TOSHI-LOW:音の隙間を縫うとか、そういう器用な感じじゃないんだろうなって、それは最初から思ってた。俺がスギちゃんだとしたら何を期待するかなって、そこを考えてみたりしたね。他の参加メンバーのこととかも。で、まさかドロス([ALEXANDROS])の川上(川上洋平/Vo/Gt)と同じことは期待してないだろうし、自分の役割とあの音から見えることを想像するんだけど、どこから始めたらいいかだけはどうしてもわからなかった。それで"スギちゃん、これどこから入れればいい?"って相談して、"2分○秒のとこかな"って言われた。
-ちょうど半分くらいのところですね。絶妙だと思いました。
TOSHI-LOW:その秒数を聞いてから、今まで粒々の塊みたいに聞こえていた音に、ドラマがあることを感じて、自分が思うバースを合わせていったら、ポエトリー・リーディングみたいなものとは違って、スギちゃんのトラックに言葉が乗ってるというイメージにはなったと思う。
SUGIZO:めちゃくちゃグルーヴが出たよね。TOSHI-LOW君は言霊が本当に強いから、そこは予想どおりというか、予想を超えた展開になって嬉しかった。またTOSHI-LOW君の声をダブ的に飛ばすとかっこいいのよ。それはTHE POP GROUPが好きで、そこからの影響もあっての要素なんだけど。
-THE POP GROUPのようなジャズやダブを取り入れたポスト・パンクも、現代音楽/電子音楽も、SUGIZOさんのアーカイヴにあるということは、キャリアを辿るとさほど大きな驚きではないんです。TOSHI-LOWさんの語りも然り。でも、そこが合わさったときの化学反応の凄まじさと言ったらもう......。
SUGIZO:俺も完成したときに"よっしゃ~! うぉ~やった!"って、めちゃくちゃ興奮しましたね。スタッフもみんな。あの曲は、間違いなくアルバムの核になってます。
TOSHI-LOW:自分としてはベストは尽くしたんだけど、それがスギちゃんにとっていいものかどうかは不安があったから、嫌だったらボツにしてくれていいと本当に思ってたの。喜んでくれてたなら良かった。
-曲中にあるTOSHI-LOWさんの"堕落とは落ちていくことではない 自分という存在がわからないまま生きていくということだ"という言葉と、少し強引かもしれませんが、"LUNATIC FEST. 2018"に向けてのSUGIZOさんの"ファンの方々が思っている常識をぶち壊すような内容になるんじゃないかな。3年前の「LUNATIC FEST.」で何かが音を立てて変わった実感があった。今回はその続きではなく、まったく新しいディメンションへ移行する"というコメントには通じる部分があると思うんです。自らの意志を強く持つことの大切さという意味で。
TOSHI-LOW:スギちゃんをイメージして、この人はこのことがわかるだろうなって思って書いた言葉だから。スギちゃんは常に心の自由を求めている人。でも、とらわれている何か、例えば大学入ったらいい暮らしできるとか、お金が入ったら幸せになれるとか。そういう刷り込まれた思い込みから解放されるには考えなきゃいけない。自分の心と深く話をしなきゃいけない。だから、そのスギちゃんの声明みたいなのも、スギちゃんらしいなって思う。
-今回のラインナップにはどのような想いがあるのでしょう?
SUGIZO:そこは単純に、俺たちが最高にカッコいいと思うアーティストを呼んだだけです。前回は同時期の仲間や、慕ってくれる後輩や、尊敬する先輩など、LUNA SEAのファミリー・ツリー的なものでしたが、今回はとにかく一緒にやりたい人たちに声を掛けました。そこに関係性があろうとなかろうと。表層的なジャンルとかカテゴリーとか立ち位置とか、関係ないんですよ。本当に音楽や意識がカッコ良くて共鳴し合えるアーティストが出会ったときは、絶対にいいイベントになる。
-はい。そう思います。
SUGIZO:実はファンや媒体の人たちの方が戸惑ってると思うんです。カテゴリーを作りたがる人もいるじゃないですか。その方がわかりやすいから。
TOSHI-LOW:そうかもしれない。アーティスト同士って、共通の意識やルーツがあると、ジャンルとか関係なしに仲良くなるから、そう考えると今回のルナフェス("LUNATIC FEST.")みたいなラインナップって、ごく自然なことでもあるよね。
SUGIZO:例えば俺の5~6年上の先輩世代は、ハードコアとヘヴィ・メタルが喧嘩してたんだよね。でも俺たちの世代はそうじゃなかった。時代とともに壁は壊れていくんだって、そこは強く伝えたいんだよね。
TOSHI-LOW:俺もそう思ってる。けど、ルナフェスに出ることはそれでも不安で。壊せるのか、超えられるのか。もう次の日、全員に怒られても嫌われても大丈夫なメンタルでいようって(笑)。
SUGIZO:(BRAHMANの)武道館でのライヴ(2018年2月9日に開催された"八面玲瓏")が本当に素晴らしかったんだよね。いつものままやってもらえたら、ものすごいことになると思うよ。
TOSHI-LOW:武道館のとき、終わったらスギちゃんがすぐ楽屋に来て褒めてくれたよね。ライヴのあとって、やり切った感触はありつつも、どこかフワッとしていて、どこかにダメだったんじゃないかっていう自分もいるから、ああやって気持ちを表してくれるのは、ありがたいんだよね。
SUGIZO:KOHKI君のギターはすごくいい。MAKOTO君(Ba)のポテンシャルも尋常じゃない。で、BRAHMANってRONZI君のドラムが肝じゃない?
TOSHI-LOW:うん、そうだね。
SUGIZO:俺はギタリストだから特にKOHKI君を見ちゃうんだけど、ひとつひとつの音からいろんなジャンルを吸収してるのがわかる。ただのパンク・ギタリストだったら、あんなクリーン・トーンの使い方はできないし、実はすごく知的。
TOSHI-LOW:なるほど。そこはもしかしたら俺よりスギちゃんの方が見えてるのかもしれない。KOHKIにも言っとく。
SUGIZO:とにかく、あの武道館は本当に素晴らしかったし、うらやましかったの。"こういうことやりてぇ"って、ただロック小僧の自分が燃えてる感じ。
TOSHI-LOW:ほんとに? 誰かにそういう影響を与えられていたなら、やって良かったな。ありがとう。
SUGIZO:LUNA SEAは結成して30年、俺自身は来年で50歳。やればやるほどロック小僧になっていくし、やればやるほどやりたいことが増えて、カッコいいと思うアーティストも増えて、まるで子供のころに退行していってるみたいなんだよね。
TOSHI-LOW:50歳っていう年齢はどうなの? 俺はもう少しあとだから、想像できないんだけど、やっぱ違う?
SUGIZO:年を取るのが怖くなくなるんだよね。いつ死んでもいいというか、無理に生きてる必要もないというか。決して投げやりな意味ではなくてね。
TOSHI-LOW:そうなんだ。なんかすごいね。
SUGIZO:15年ほど前に、仕事も経済面も友人関係も無茶苦茶に壊れてどん底になった時期があって。もうバイトをしないと食えない状態。それでもなんとか生きながらえて、近年はまた一線でやらせてもらっている。俺はあそこで一度自分が消滅したと思ってるの。でも、ギリギリのところで音楽に救ってもらったと思ってる。もう今の人生は特別報酬だと思ってるの。毎年がご褒美。だから何があってももう大丈夫なんだよね。
TOSHI-LOW:その投げやりじゃないっていう感覚はなんとなくわかる。そのうえで、生に執着するより、今を大切に生きてるっていうスタンスは理想的だなぁ。