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COLUMN

ESKIMO CALLBOYのいきなり!チャラアゲ伝説。 vol.16

ESKIMO CALLBOYのいきなり!チャラアゲ伝説。 vol.16

ESKIMO CALLBOYのある1日 ロンドン公演編(後半)

俺たちがここに来たのはショーをやるため。それには真面目な準備が必要だ。ツアーは楽しいことがすべてだと思う人もいるかも知れないけど、そうじゃない。時には好きじゃないことだってやらないといけない。重労働だぜ。 というわけで大急ぎでバスに戻って、Xboxのスイッチを入れて、FIFAの過酷な試合をやる。俺たちはあのゲームが大嫌いだ。マジで。バンド内の揉め事の原因になりすぎるんだ。でも俺が唯一のチャンピオンだってメンバーが認めてくれない限りはこのゲームは続く。やつらの屈辱とともにね。俺は、世界一憎々しい汚い言葉の90%は俺たちのFIFAゲーム中に生まれたって確信しているんだ。そして残りの10%が、ジョン・スノウが死んだ時に生まれたってこともね。

おーーーっと!ごめん!
俺に挑戦してもムダだってことを分からせるには3試合かかる。汗だくになって、顔にパッド型の痕を深く残した俺たちは、1回目のサウンド・チェックをしにバスを降りる。テレビの画面の前で猛烈に頑張る俺たちを観ながら、クルーたちはライトや楽器をセットすることに喜びを覚えていた。このゴロツキたちめが。

勤勉は必ずしも全員の好みではないらしい。俺たちはステージに出て、何曲かやりながらサウンドをチェックする。とても気に入った。ひとつひとつのビートが胸に押しつけられてくるようなパワーを十分感じた。ショーには不可欠な要素なんだ。オーディエンスのためだけじゃなくて、俺たちのためにもね。俺たちはショーをプレイするのが大好きだけど、ガツンとくるサウンドが出るってわかるとモチベーションも特別に上がるってものさ!俺たちは今夜に向けてやる気満々だ。

で、酒はどこだ?!

会場から慌しく飛び出した俺たちは、景気づけにPascal(Schillo)のスペシャルなカクテルをゲットしにバスに戻った。とてもスペシャルなひとときのためのとてもスペシャルなドリンクだ。伝説となった2013年のニューイヤー・パーティー以来、バンド内では日に日に人気を増している。このドリンクはすべてを変えることができるんだ。現代の名作だね。

アイツは目についたリキュールをとにかく全部ミックスしていると俺は確信している。そこにほんのちょっとだけそのへんにあったジュースと氷を足して、実験的な名前をつけるんだ......。まぁ、マーケティングがすべてだからね。1番安いドイツのウォッカ、ウィスキー、ワインを、気の抜けたコカコーラ・ゼロと混ぜる。Pascalがそのいたずらで元気な笑顔を見せながら1杯差し出してくれるまでは美味しいものじゃない。さっさと乾杯したら一気に飲み干す。ううううう!!

腹が破れそうな感じがする。何もかもがぼやけて見えて、下半身は両親のセックスを見てしまったばかりかのように萎えてしまった。あれはいったいなんだったんだ? 自分のドリンクは自分でミックスした方がいいな!......空になったグラスを流しに置こうとしていたら、"CABIN BOY JUMPED SHIP"の連中が通りをこっちに向かってくるのが見えた。すぐに時間が巻き戻ったような気がした。メンバーの中には、俺たちが数年前に初めてロンドンでショーをやったとき来てくれて、それ以来連絡を取り合っているやつらもいる。やつらのあたたかい歓迎のおかげで、ここでの居心地がずっと良くなった。ツアーしている国に友達がいると、もう外国人みたいな気がしなくなるんだよね。

会場に戻ると、2番目に出演するバンドがすでにサウンド・チェックを待っていた。"THE ONE HUNDRED"というバンド。何というか......大らかでフレンドリーで、素晴らしい連中だよ。俺はまずヴォーカルのJacobに話しかけて、俺がどのくらいやつらの音楽が好きか伝えた。ラップとメタル・ミュージックを繋げる音楽なんだ。ニューメタル時代の思い出が蘇るね。指2本の爪を黒く塗ってスタッズ付きのベルトをしていれば、寝る相手には事欠かなかった時代。

そろそろ出番だ!

俺たちは通常、ショー前の1時間くらいを準備にかける。メイク、衣装、Pascalのカクテルをもう数杯、それからうるさい音楽でね。長年の間にこれが伝統みたいになってきた。その時間が取れないととても不思議な感じがするんだ。前に用を足したやつがクソの最中にずっとスーパーマリオランドだかゲームボーイだかファッキンなゲームをやっていて、生温かくなってしまった便座に座らないといけないような感じ。

そこで俺は急いでバスに戻ってメンバーに合流した。実は、やつらはすでに楽屋入り口の前で待っていたんだ。ドラッグか武器を売っているかのように輪になってね。近づいてみると、やつらがなぜかヘソの臭いを嗅ぎ比べていることが分かった。スイーツの味比べをしているかのように人差し指を伸ばして嗅がせて回って、お互い肯定とリスペクトの会釈を交わし合っているんだ。こいつら最高だぜ!

30分後パーフェクトにドレスアップした俺たちはステージの真裏に立って、このツアーの初日公演への臨戦態勢に入った。Pascalのスペシャル・ドリンクはさらに少しスペシャル度を増した。冷蔵庫にライムを見つけたあいつはもうひとつ楽しいドリンクを作ったんだ。古い車から塗装をはがすのにも使えそうなやつをね。

"CABIN BOY JUMPED SHIP"と"THE ONE HUNDRED"はどちらも度肝を抜くショーで、これ以上ないってくらいオーディエンスをヒートアップさせてくれた。俺たちはステージに出て、「Pitch Blease」でショーを始める。すぐに最高のヴァイブを掴む。俺たちの曲を、その受け入れ方をバッチリ心得ている人たちに向けてプレイする。俺たちのすべてがそのためにあるんだ。もちろん、オーディエンスの中にはこの日職場や学校で嫌な日を過ごした人もいるだろう。でも今、この場所では......そんなことはまったく関係ない。この1時間は完全に瞬間を味わうために生きるんだ。クラウドサーファーもいれば、俺たちと一緒に歌っている人もいる。ステージに上がって一緒に写真に収まる人たちまでいる。......ツアーのオープニングとしては完璧だ。

1時間後俺たちはステージをあとにする。完全に疲れきって。プールに落ちたかのように汗だくだ。でもそうなった甲斐はもちろんある。ショーが驚くほど素晴らしかったからだけじゃなく、下着を替える真面目な理由ができたからだ。このツアーではたぶん最初で最後だろうな!

バスの前で楽しいおしゃべりをしながら夜が更けてゆく。何人かのファンが少し長く残って俺たちに付き合ってくれたんだ。俺たちはこういうコミュニケーションが大好きだ......って俺が言う時は本音だからね。もちろんもっと大きなショーだと、全員と話すのは難しいことがある。でも可能なときはいつもみんなとちょっと飲んで、人生について語り合うんだ。新しい顔や馴染みのある顔に出会うのは、いろんな国に旅してたくさんのクールな場所を見ることと並んで、俺たちにとって大きな価値のあることだし、これからもそうあり続けるんだ。ロンドンのみんな、ありがとう!楽しかったよ、また会おう!

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