PANIC AT THE DISCO : Ryan Ross(G,Vo,Key) Spencer Smith(Ds)
Interviewer : MAY-E
-今日のファッションも「Pretty.Odd.」のイメージのようにクラシカルですね。
Ryan:そうだよ。いつも見ている僕らは嘘じゃないってことを証明したくてね。
-普段もそのようなクラシックな服をよくきているのですか?
Ryan:そうだね、だいたいいつもこんな感じだよ。日本ってこういう服をたくさん売っているし、サイズも僕に合うものがたくさんあるから、前回日本に来たときにけっこう洋服を買いこんで帰ったよ。
Spencer:そうそう、僕も前回はたくさん買い物をしたな。日本で値札を見ると、アメリカのドルの桁とは違うから最初は驚いちゃうんだけど、値段が分からない分、勢いで買っちゃったりするんだよね。
-今回もショッピングなどに出かける時間はありそうですか?
Ryan:うん、あると思うよ!昨日の夜はホテルの近くで日本ならではの風景を見ることが出来たし、今日も明日もいくらか時間はあるから、前回見ることが出来なかったところに行けたらいいなぁと思っているよ。
-サマーソニックのステージ・セットも「Pretty.Odd.」をイメージしたものになるのでしょうか?
Ryan:いや、そうでもないよ。僕らがヘッドライナーでない限りたくさん物を運ぶのは大変だからね。フェスティバルでプレイするときは毎回違った感じにしているんだ。サマーソニックでは、僕らがステージを駆け回って、汗をかいて歌ってるようなライブになると思うよ。
-ファースト・アルバムとセカンド・アルバムの楽曲をライブで一つにまとめるのは大変ではないですか?
Spencer:うん、そうだね。「Pretty.Odd.」が出てからは本当に難しくなったよ。アルバムを1枚しか出していない頃は、あまり考えずにとにかく全部の曲をプレイする気持ちでやっていたから。セカンド・アルバムを出してからはとても難しい選択にぶつかった。ライブでプレイしたときにどの曲が一番映えるのかって考えてセットリストを考えるようにしてきて、今ではセカンド・アルバムとファースト・アルバムをちょうど半々くらいの比率でプレイしてはいるかな。
-では、セカンド・アルバム「Pretty.Odd.」の曲をライブでプレイして、ファンが改めて良いリアクションをくれた楽曲はどれですか?
Spencer:やっぱり「Nine In The Afternoon」はシングル曲だったっていう理由もあるんだろうけど、リアクションはやっぱり良いよね。今、セットリストに残っているセカンド・アルバムの曲は、ライブでプレイしていてどれも良いリアクションが得られたものになっているよ。例えば「She's A Handsome Woman」、僕らはアルバムが出て間もない頃にツアーをスタートさせたんだけど、最初の頃はいまいちかなって感じていた曲だったんだ。だけど、何度もプレイしていくうちにどんどん良くなってきていると感じている曲なんだよ。
Ryan:うん。「Northern Downpour」なんかも同じことが言えるかな。この曲は、他の曲に比べてとても素直な歌なんだ。だからライブでプレイするのは、最初は戸惑いもあったんだけど、ショウの中での良いブレイクダウンの役割も果たしているし、ファンもきっとこの曲を気に入ってくれていると思う。あと、アルバムの一番最後に収録されている曲の「Mad As Rabbits」は、曲の最後にコーラス・パートがあるんだ。この曲でみんなで合唱してショウをしめることも多いよ。実はこの曲はアルバムの中で一番最後に書いた曲でもあるんだけどね。
-ありがとうございます。サマーソニックのショウを楽しみにしていますね。 では、話を変えて、MY CHEMICAL ROMANCEのファンが自殺したことを報道したロンドンのデイリーメイル紙のニュースはご存知ですか?
Ryan:いや、少しは聞いことがあるんだけど僕らはその頃ちょうどツアーに出ていて詳しい話を知らないんだ。いったい何があったの?
-THE BLACK PARADEに憧れていた13歳の女の子が自殺した原因をMY CHEMICAL ROMANCE、しいてはエモ・ミュージックのせいだとして報道したんです。ロンドンのMY CHEMICAL ROMANCEがデモ行進をする事態にまで発展しました。
Spencer:うーん・・・彼女が実際にどんな女の子だったのか詳しいことは分からないけれど、そういう出来事を全て音楽のせいにするのはおかしいと思う。彼女がどんな音楽を聴いていたのかってことより、彼女を取り囲んでいた両親だったり、環境なんかにももっと目を向けるべきなんじゃないかな。
-そうですね。音楽が持つ影響力についてどうお考えですか?
Ryan:僕らの音楽のスタイルが新しい音スタイルに向かおうとしたのは自然なステップだった。一つの場所に留まっていたくないっていう気持ちがあったからね。あのファースト・アルバムは、暗く悲しい気持ちにある中で書かれたものなんだ。だけど、次はもっとポジティヴな気持ちを曲にしていこうってね。悲しんでいる人々をそこから救いだしてあげるような歌を歌っていきたいって思ったんだ。僕らのセカンド・アルバムはネガティヴな面だけじゃなくて、例えば良い面と悪い面とか、曲線があるものを表したものになっていると思うよ。
-では、MY CHEMICAL ROMANCEと共にあなた方PANIC AT THE DISCOも「エモのバンド」として語られることも未だ多いですが、そこは否定したいところですか?
Ryan:「エモ」をというより、ステレオタイプな「エモ」の定義付けは否定したいかな。そういうカテゴリに簡単に当てはめてしまうのはあまりにも怠けた作業であるし、とても手を抜いた評価の仕方だと思うよ。
-そうですね。ロシアでは法律で「エモ」を禁止しようという動きまで出ているそうです。世界的なエモへの批判が高まってきていますが。
Spencer:それってロックンロールが世界に初めて登場したときの状況によく似ていると思うんだ。人って、自分の知らないものに出会うととても恐れるものだから。当時は、ロックが流行ったら国がダメになると思われていたしね。
Ryan:何をもって「エモ」とするかにもよると思う。ロシアの状況については、この先ロシアに行ったときにきっと自分の目で見ることになるだろうね。
-では、あなた方は何をもって「エモ」としますか?
Spencer:エモって定義がない分、そういう悪い出来事を語られるところがあって、それでさらにフラストレーションをため込んでしまう、みたいなところがあるよね。僕らはひとつのジャンルに固執したことがないんだ。既にアメリカとそこを囲むいくつかの国では、「エモ」はもう過去の物としてとらえられている。はもうエモに飽きてきて、次の音楽を探しているんだ。だけど他の国や若い人にとってはエモはまだ新しい物として存在しているのかもしれないけど。僕らはたくさんの音楽を聴いてきたバンドなんだ。好きな音楽を語るときは、このパートのここが良いとか具体的に語るものであって、ジャンルで語るべきじゃないと思うんだよね。
Ryan:ジャンルっていうのはレコードショップだけで使われる単なる用語だと思う。まぁ個人の見方にもよるけど。大きな一つのジャンルの中から、最近はサブジャンルもたくさん生まれてきているわけだし。例えばデスメタルみたいに、ひとつのジャンルだけに拘ってプレイしている人たちもいるけれど、僕らはそういうバンドではないんだよね。
-POWERSPACEにインタビューした際「PANIC AT THE DISCOのPretty.Odd.はダンス・エモ・シーンの大きなターニングポイントになったと思う」とコメントしてくれました。私も同感です。実際のところ、「Pretty.Odd.」でシーンに変えたいという意思はありましたか?
Ryan:そうだね。色々なものを変えていきたいという気持ちは確かにあった。ファースト・アルバム当時は、キーボードを取り入れたダンスっぽいサウンドをやっているバンドはまだそんなにいなかっただろ?当時はTHE KILLERSとか聴きながら、それにインスパイアされて曲を作っていたこともあったんだけど、当時の僕らがやりたかったことはファースト・アルバムで全てやりつくしたと今は思っている。これから先は何をしようかって考えた時に、新たなるサウンドを目指して作り上げたものが「Pretty.Odd.」なのさ。だけど僕らが変わらずに持っている信条は、常に良い曲を書き続ける、ということ。それによって他のバンドが影響を受けるのはとても光栄な話だし、古いものを打ち壊すことが出来たらそれはとても嬉しいことだね。
-では、「Pretty.Odd.」のこの先のヴィジョンはいかがでしょう?今後はシーンをどう動かしていきたいですか?
Ryan:うん、これからもそこに無かった新しいものを生み出していきたいと思ってるよ。どんな音楽をやりたいかってことになると、まず普段どんな音楽を良いと思って聴いているのかによると思う。というのも、僕らの場合、好きな音楽をまず真似してみるのさ。真似してみて、なぜ僕がこの音楽が好きなのかを自分自身で分析するんだ。そして、そこから僕が何を生み出せるのかを考える。これが、僕らが楽曲を作っていくうちの一つの流れなんだけど、その中に僕ら自身の趣味を盛り込んでいきたいと思っているよ。なぜかと言えば、最近の音楽で心が動かされるものがないんだよね。その反面、The Beach BoysやThe BeatlesやThe Kinksなどのアーティストやそれらの作品は、素晴らしい地位を確立している。僕らは、本当の意味でのロックンロールのスピリットを大切にして、本物のバンドを目指して音楽をやっていきたい。最近はロックでも90%がエレクトロで作られているんじゃないかって思うくらいにエレクトロニカが進んでいるけど、僕らはそれらとは違った、僕らのロックンロールを求めて進んでいきたいと思っているよ。
-なるほど。では現代の音楽シーンにやり辛さを感じることってありますか?例えば今が90年代、80年代の方がもっと自由にやれたのに、とか思います?このシーンにいるアーティストにとって、今はとても窮屈な時代だと感じるのですが。
Spencer:そうだなぁ、よく分からないけど、多分80年代や90年代であったとしても今と変わらず難しい時代だったんじゃないかなぁと思うよ。アメリカはポップやヒップホップというような大きなジャンルで語るところがあるんだ。僕らの書きたい曲や好きな音楽だけをやっていくのはきっと難しいだろうね。その時代なりに難しいことがきっとあると思うんだ。どの時代だったら今より楽なのかを語るのはとても難しいことだね。
Ryan:たとえば、60年代や70年代だったらきっと今よりもっと難しかったって思うんだ。なぜなら、その時代に活躍していたアーティストのソングライティングの才能やパフォーマンスも、今よりももっと高いスタンダードが求められていたと思うから。その時代に僕らが飛び込んだとしたら、そんな厳しい状況の中で競争していかなくてはなないからね。
今の時代で音楽をやっていて確かに難しさを感じることはあるけれど、たとえば日本や他の国に行ってショウを行ったときに、僕らが情熱を持って書いた曲を情熱を持って聴いてくれるファンがいるという状況は本当に素晴らしいことだと感じているよ。
Spencer:うん。例えばウェブのデザインが良いとか、Tシャツのデザインがかっこいいとかそんなことじゃなくて、僕らがスピリットを持って活動をしていくことによって、それらのバンドに違う方向性を提示したり、やる気を持ってもらいたいと思っている。何かを変えていくこと・・・それは僕らのゴールでもあるんだ。
Ryan:昔はロックンロールっていうものを、バンドもファンももっとシリアスに考えていたはずなんだ。だけど今の時代は人々の気持ちが変わってきてしまっている。僕は昔のようなスピリットが現代にもまだ残っていることを信じたい。サマーソニックにヘッドライナーで出演しているバンドは、今でもそういうスピリットを持った本物のバンドだから、そこに希望はあるような気がするよ。
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