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LIVE REPORT

ELECTRIC CALLBOY

2024.12.02 @豊洲PIT

Writer : 菅谷 透 Photographer:Masashi Yukimoto

5月のBABYMETAL主催フェス"FOX_FEST"出演で、約7年ぶりに日本でのパフォーマンスを披露したELECTRIC CALLBOY(以下:EC)。彼等が約半年を経て、今度は単独公演で待望の再来日を果たした。会場は日本での単独公演としては過去最大規模のキャパシティとなる豊洲PITだが、チケットは10月の時点でソールド・アウト。文字通り超満員の観客に、期待を裏切らない規格外のエンターテイメントを見せてくれた。

この日サポート・アクトを務めたCVLTEは、エッジーなエレクトロでフロアを揺らした「tokyo insomnia.」や、モッシュピットを生み出した「eat acid, see god.」等、持ち前のダークな世界観を発揮しつつもECとも共鳴するようなサウンドを展開。早くから集まったオーディエンスをしっかりと惹き付けていた。セット・チェンジ中にはVAN HALEN「Jump」、BON JOVI「You Give Love A Bad Name」、QUEEN「Don't Stop Me Now」といったロック・アンセムが流れていたが、どの曲でも会場のあちこちから合唱が起きていて、まるでカラオケ状態だ。 観客のノリの良さが垣間見えたところで、場内がゆっくりと暗転。

搭乗を歓迎するアテンダントの映像をバックにメンバーがステージへ姿を現し、「Tekkno Train」でショーの口火を切った。この日のセットリストは"FOX_FEST"のときと同様に最新アルバム『Tekkno』を中心とした内容になっていたのだが、大きく違いを感じたのはフロアの尋常じゃない盛り上がり具合だ。筆者のいた後方エリアでも拳が上がり、大音量のシンガロングが巻き起こっていたし、巨大なウォール・オブ・デスが生まれた「MC Thunder II (Dancing Like A Ninja)」の"Ichi, ni, san, kawaii"や、「Spaceman」の"Blblblblb"、"VIVA LA ELTON JOHN"といった決め台詞にもばっちりと反応していて、入念に予習をしてライヴへと臨んだのが感じられる。

そんなフロアの光景にメンバーも感慨深げで、曲間には何度も感謝の言葉を投げ掛けていた。続いて「Hate/Love」のブレイクダウンでタフな姿を見せたかと思えば、「Everytime We Touch」ではNico Sallach(Vo)とKevin Ratajczak(Vo/Key)の美しいハーモニーを披露。ライヴ・バンドとしての確かな実力で、観客のテンションをさらに上昇させていた。次の「Castrop X Spandau」では曲中でNicoとKevinがキスし、大きな歓声が上がる。全編ドイツ語な同曲でもシンガロングが起こっていたのにはメンバーも驚いたようで、"みんなドイツ語を歌うのは難しくなかった?"とNico。するとKevinは"ドイツ語は簡単だよ"と日本のファンに"Scheiße"をコール&レスポンスで伝授。イタズラっぷりを発揮していた。

Kevinが"次は愛についての曲だ"とハートマークを掲げると、"みんなが普段どんな音楽を聴いていてもかまわない。俺たちは音楽を称えるためにここにいるんだ。みんな愛してるよ、今日は来てくれてありがとう"という言葉から「Arrow Of Love」を披露。ハート型のVJも映し出され、ピースフルな雰囲気がフロアに広がっていった。テクノの名曲「Sandstorm」と"イカゲーム"のサントラのマッシュアップに合わせたDavid Friedrich(Dr)のソロ・タイムを経て、「Hypa Hypa」のSEが流れると割れんばかりの歓声が上がった。マレット・ヘアのカツラを装着したメンバーがステージに登場し、演奏が本格的にスタートすれば、まるでスタジアムのゴール裏のような大合唱が響き渡った。続くアッパー・チューンの「Parasite」でさらに勢いをつけたところで、David Friedrichをはじめとしたメンバーがキラリと光るヘルメットを被ったのが見え、会場にどよめきが起こる。そうしてプレイされたBABYMETALとのコラボ・シングル「RATATATA」は、イントロから"Fu-Fu"のコールが沸き起こるお祭り騒ぎに。曲中にはBABYMETALの3人も映像で登場し、盛り上がりに拍車を掛けていた。

フロアがすっかりヒートアップしたところで、後半戦前のブレイクとしてKevin、NicoとDaniel Haniß(Gt)によるアコースティックのセッションへ。観客がスマホのライトを掲げるなか、Kevinがキーボードでおもむろに"アナと雪の女王"の楽曲「Let It Go」のイントロを奏で始めると、意外な選曲にどよめきと笑いが起こる。その次はBACKSTREET BOYS「I Want It That Way」をプレイし、ステージとフロアの親密度をよりいっそう深めていた。一息ついた後は、"ドイツの文化、シュラーガーという音楽をプレイするよ"との紹介で「Hurrikan」が披露される。KevinとNicoによるペア・ダンスの実演や、"今はモッシュピットじゃない、ダンスの時間だ。

みんなパートナーを見つけてくれ!"という丁寧な前フリもとい説明を経て、軽快なポップ・サウンドが流れ始めると、フロアでは観客同士が手を取り、肩を組み、さながらフォーク・ダンス大会のような光景――から急転直下、超ド級デスコア・ブレイクダウンへ突入! サタニックなVJも相まって、実にカオスな空間が広がっていた。EC流ポップ・パンクの「Fuckboi」でさらに弾みをつけたあと、"次が最後の曲だよ"とKevinが告げると、観客からは楽しさの裏返しか大ブーイングが起こり、"日本人は礼儀正しいって聞いてたのに......"と思わず苦笑いする一幕も。ラストはNico加入前の楽曲である「MC Thunder」がプレイされ、特大のジャンプで会場を揺らして本編を終えた。

スクリーンにはマッチョマンにコラージュされたメンバーの写真とともに"Thank You"の文字が映し出されたが、ライヴはまだまだ終わらない。ワークアウト中のうめき声が場内に響き渡ると、再び衣装チェンジしたメンバーがステージに姿を現し「Pump It」でクライマックスへ再加速していく。打って変わってスリリングでダークな「Mindreader」で巨大サークル・ピットを生み出すと、今度はテクノカット姿にトランスフォームしたバンドが、この日最後の1曲として「We Got The Moves」をドロップ。最初から最後まで歌声が止むことのない狂乱状態で、白熱の一夜を締めくくった。

全身全霊のパフォーマンスでひたすらに楽しさを追求した今回のライヴは、近年のヴァイラル・ヒットや、"FOX_FEST"でファンになったという人はもちろん、古くからのファンをも十分に満足させる内容になっていたと思う。物珍しさや目新しさを飛び越えて、安心と風格すら感じさせたパフォーマンスは、きっと今後さらに大きな舞台で展開されるはずだ。

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