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LIVE REPORT

Ken Yokoyama

2023.11.09 @LINE CUBE SHIBUYA

Writer : ヤコウリュウジ Photographer:半田安政

"ライヴハウスには得れないものがある。この歳になってチャレンジができるってこと、すごくありがたく思うな"、そう横山 健(Gt/Vo)がしみじみと口にした。ライヴハウスでカオスを生み出し、ゼロ距離で観客と対峙し続けてきたKen Yokoyamaにとって初のホール・ツアーとなった"Ken Yokoyama「My One Wish Tour」"の最終公演がLINE CUBE SHIBUYAにて開催された。

ただ、会場がホールとなっても特別な装飾はなく、掲げられたバックドロップも大きめのバスタオルぐらいのサイズでシンプルに"Ken Band"と書かれたもの。飾り気のないステージに横山、南 英紀 (Gt)、Jun Gray(Ba)、松本"EKKUN"英二(Dr)が姿を現し、「Ten Years From Now」で口火を切っていく。

盛り上がりを見せつつも慣れない環境に戸惑う観客の姿が目に入ったのか、横山がFreddie Mercury(QUEEN)を憑依させて笑いを誘い、お互いに大きな声を出せば、名曲「Walk」、鮮烈なメロディック・チューン「4Wheels 9Lives」ではいつも以上の大合唱の嵐。場所は違えどライヴはライヴ、Ken YokoyamaはKen Yokoyama。思いっきり感情を開放することは一緒。Jun Grayも足を蹴り上げ、南も引き締まったフレーズを奏で、EKKUNはしっかりボトムを支え、ど真ん中で横山は会場全体へ投げ掛けるように歌い、力いっぱいギターを掻き鳴らす。

熱気が充満し、横山が滴る汗を拭ってから未来へ願いを込めた「My One Wish」、しばらくやっていなかったという「The Story Of The Fallin' Sleet」などを披露し、いつもと変わらない熱気が渦巻くなか、"ゲスト・シンガーがいるんだよ!"と横山が告げる。もしや「Tomorrow」で共演した木村カエラか、と想像したところに呼び込んだのは初代ベーシストのサージ! これは予想できないサプライズ。共に鳴らした「Sucky Yacky」は激しく温かく、いいムードを描いていった。

ホールならではのミドル・チューン「Soul Survivors」、自然とクラップが起こり、クライマックスはギターと歌のみで尊さもにじみ出た「I Won't Turn Off My Radio」と中盤戦も突き進み、観客は遠慮なしに声を上げていく。ライヴ中、何度も"歌ってくれ!"と横山も呼び掛けていたが、観客の歌声も鳴り響くのはライヴならではの醍醐味であり、彼らには欠かせないパーツ。テーマ・ソングとも言える「Let The Beat Carry On」では自身のマイクを、「Believer」では、Jun Grayや南のマイクも客席へ投げ入れ、より一体感が生まれる。ライヴはこうでなくっちゃ、と思わされる場面がこの日もいくつもあった。

本編の締めくくりとして、何度も横山が感謝を口にしてから「While I'm Still Around」をプレイ。たくさんのありがとうを込めた曲を盛大に響き渡らせたあと、会場にいた子供たちをステージ前へ招いて自身のピックをプレゼントし、ステージをあとにした。

そして、鳴り止まない拍手に呼び戻され、アコースティック・ギターを持った横山が登場。深々と一礼し、"父親であることの歌をやろうかなと思って"と話してから、プライベートな事情を赤裸々に語っていく。改めて父親としての想いを再確認したことでやりたいと考えた「Father's Arms」をしっとりと歌い上げ、途中から南、Jun Gray、EKKUNも加わった「Longing(A Quiet Time)」、ラストは「The Cost Of My Freedom」を4人で鮮烈に鳴り響かせていった。 11月29日にはシングル・シリーズ第3弾『These Magic Words』を発表しただけでなく、来年早々にはアルバムのリリースも控えているという彼ら。現状維持に甘んじることなく、ライヴハウスでもホールでも変わらぬ熱を生み出せるという新たな武器も手に入れた姿がなんとも頼もしかった。

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