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INTERVIEW

Ken Yokoyama

2021.05.25UPDATE

Ken Yokoyama

Member:横山 健(Vo/Gt) Jun Gray(Ba)

Interviewer:小野島 大

Ken Yokoyamaがニュー・アルバム『4Wheels 9Lives』を完成させた! 本作はオリジナル・フル・アルバムとしては5年8ヶ月ぶりの作品になるが、Ken Yokoyamaの王道と言えるエネルギッシュな1枚であると同時に、フレッシュに音が耳に飛び込んでくる感覚もある。それは、新ドラマーのEKKUNがバンドに加入したことによる刺激も大きかったようだ。そんな本作の完成までの軌跡について、横山 健とJun Grayのふたりに話を訊いた。

『Sentimental Trash』(2015年リリース)以来5年8ヶ月ぶりのオリジナル・フル・アルバムです。制作は、昨年秋に出たミニ・アルバム『Bored? Yeah, Me Too』と同時進行で行われたんですね。

横山:レコーディング自体は別だったんですけど、曲作りを並行してやってました。

-曲作りはいつから始まったんですか。

Jun:2019年の頭の頃かな。

横山:EKKUN(Dr)が2019年に入って、過去曲を覚えると同時に新曲を作り始めたんです。ずっとツアーしながら作ってたんですけど、2019年の秋に僕が抑うつ状態になって、ライヴがストップしてたんですよ。2019年の年末にアルバムを録る予定だったのも延びて。そのあともコロナで何度か延期になったんです。延びてる間に曲はどんどん増えていくわけで。今回はめちゃくちゃ曲を作りましたよ。とにかく時間があったので。なので曲もよく吟味できましたね。

-今作を聴かせてもらって、めちゃくちゃ音が強いな、と思いました。Ken Yokoyamaの王道と言えるアルバムだけど、これまで以上に強い確信に満ちている感じで、非常にいいアルバムだなと。

横山&Jun:ありがとうございます!

-ドラマー交代とか健さんの病気とかコロナとかいろんなことがあって、でもこれだけ強いアルバムができた。

Jun:いろんなことがあったからできたんですよ(笑)。健の体調不良がなければ、予定通り2019年末にアルバムを作ってたわけです。それには今作に至るまでにボツにした曲も何曲か入っていたわけで。結果的にどういうものになっていたかはわからないけど、でも確実に違うものになっていたはずなんです。

横山:その時期に録っていたら、今作ほど焦点が絞られてないアルバムになっていたかもしれないですね。

-ボツにした曲ってどういう曲だったんですか。

横山:うーん......ちょっとKen Band にとってトライだったりとか、今までにやったことのない展開が入っていたりする......。なので時間があったぶん、この曲入れると少し散漫になっちゃうから代わりに別の曲を書こうかとか、そういう余裕ができた。

-2019年の末の時点ではある程度いろんな方向性があるアルバムを考えていたけど、でもそれが、時間が経つに従って、ある程度絞り込んだほうがいいという判断に変わってきたということですか。

横山:そうすね! アルバム作ってるときはいつもそうなんですけど、全部金太郎飴みたいなアルバムを作っちゃうのもどうかなぁ、と思うんです。たとえライヴではやらないにしても、アルバムに入っていれば面白いかも、と欲が出ちゃったりするんですね。でも今回はそういうのを排除できました。

-金太郎飴であろうが、とにかく勢いでもっていくようなエネルギーや突き進む力があったということでしょうか。

横山:もしかしたらそうかもしれないですね。

Jun:それはドラムが代わったのが大きくて。

横山:そうそう。

-ドラマーが代わったことで曲作りも変わってきた?

横山:曲を作るうえでは、実はそんなに(影響は)ないんですけど、演奏するときにありますね。僕が曲を思いついてバンドに持っていく時点では今までとそんなに変わらない。

Jun:そこからの味つけ、表現力が違う。ドラムでどれだけ楽曲をパワーアップできるか。

横山:一応頭の中に全体像はあるんです。こういう感じの雰囲気にしたい、という。でもスタジオで、4人で音を出すと変わりますね。これは2ビートじゃなくて8(ビート)のほうがいいな、とか。根本が変わっちゃうときがある。そこはすごく大きいと思います。

-EKKUNさんのプレイの特徴というとすごく巧くて手数が多いという印象です。

横山:そこは彼の大きな強みですね。あと、叩いたものをマイクに乗せたときに、すごく粒立ちがいいんです。

Jun:練習スタジオではよくわからないことが、レコーディングしてみると"あぁ、こういう風にやってたのか、なおさらいいじゃん"みたいなことが多くて。

横山:練習スタジオでは、タム系だと意外と聴こえなかったりするんですよね。こんな細かいことやってるんだ、と(レコーディングで)気づく。それがしっかり叩ききれてるんで、ものすごく粒立ちが良くて。その結果、ミックスのときも"これドラムと歌だけ聴こえてればいいよ"ってなる。今までできなかったことができるんですよ。今まではギターを大きくして、ギターのビートを聴かせる方向にならざるをえないところがあった。ギターでビートを作るっていうか。それが、ちゃんとドラムでビートを聴かせられるようになった。

-つまり今まではギターのノイズでいろんなものを隠してたところがあった?

横山:ありますね(苦笑)。はい。

-それが、ドラムがしっかりしてビートを表現できるようになったから、バンド・サウンドをちゃんとバランス良く聴かせることができるようになったと。

横山:はい。そうなんです。今さらバンドの基礎的なとこなんですけど、やっとそこに辿り着くことができましたね。

-だから音が強くなったんですね。納得です。Ken Bandは今までいろいろメンバー・チェンジもあったわけですが、今のラインナップはかなり強力なんじゃないですか。

横山:いや、もう強力だし、僕はこれが最終メンバーだと思ってます。

-おぉ。Junさんはどうですか。

Jun:ドラムのビートがしっかりしてきたので、前はあまり思わなかったような、例えば"ドラムはこういうことやってるなら、ギターのカッティングと違うことになっちゃうけど、ドラムのほうに合わせてベースをこうやってみれば、面白いことになるんじゃないか"というアイディアが湧いて。やってて面白いですよね。「Helpless Romantic」はミディアムの8ビートなんですけど、ハイハットの入れ方なんかもただ8分だけで叩いてるだけじゃなくて、ちょっと小技を入れてきたりしてて、今までのドラマーだったらこういうことやらないよな、とか思いました。そういうことがいろんな曲にあって。

-プレイがしっかりしてるだけじゃなくいろんなことができるから、アイディアもたくさん浮かんでくる。

横山:そう。あとEKKUNの特徴として、人の意見を面白がって聴く、というのがあるんです。ドラマーって、ドラマーのマナーがあるらしいんです。ドラマーのやり方というか、セオリー。僕らはドラムを叩けないから、むちゃくちゃなことを結構言うんですけど、EKKUNはそれを面白がってくれる。

-"それは無理です"とは言わないと。

横山:そう。ドラマーに限らず、バンドって自分のパートに意見されると気分を害する人が多いと思うんです。でもEKKUNは面白がって"じゃあちょっと試してみる"って、やるんですよ。

-Junさんが言うようにいろんなアイディアが浮かんできても、それに対応してくれる。

横山:人としての波長が同じところを向いてるかってことだと思うんです。それは小さいことのようで大きくて。だから曲作りも演奏も楽しいですね。

-なるほど。ミニ(ミニ・アルバム『Bored? Yeah, Me Too』)はこんなコンセプトで、フル(フル・アルバム『4Wheels 9Lives』)はこんなテーマで、というような考えはあったんですか。

横山:いや、言葉としてはなかったですね。ミニは6曲しか入ってないわりにバラエティに富んだものになったし、フルは12曲入ってるけど、豪快一直線な。

-たしかにそんなアルバムですよね。

横山:力強いアルバムにしたかったんです。2010年に出した『Four』ってアルバムがあるんですけど、曲の揃い方が好きで。そのときも"強いアルバムを作ろう"って意識したんです。それに近かったかもしれない。

-なぜそうしようと思ったんですか。

横山:わかんない(笑)。前作(『Sentimental Trash』)の反動かもしれないですね。前作はちょっとロックンロール色が強い、バラエティに富んだアルバムだったから。それからNAMBA69とのスプリット(2018年6月リリースの『Ken Yokoyama VS NAMBA69』)を出したり、『Songs Of The Living Dead』(2018年10月リリース)っていうコンピレーションを出したりしたんですけど。どれも変化球的なものだったんですよ。だから今回は自分らの得意技で固めてやろうと思ったのかもしれない。

Jun:最初のほうにできたのは『Bored? Yeah, Me Too』に入ってる「Runaway With Me」とか、今作の「Helpless Romantic」とか、「I'm Going Now , I Love You」だったんです。ああいう2ビートの激しい、俺らの得意のメロディック・パンク系の曲が最初のほうにできていった。なのでこんな方向でいくんだねっていうのは共有してたと思う。『Sentimental Trash』みたいな、バラエティに富んだものをまた作るという感じじゃないんだなって。ドラマーが代わったことも大きいですね。今までも2ビートのメロディック・パンクはたくさん作ってきましたけど、EKKUNが叩くことによって全然違った。"これこれ!"っていうものを表現できる。