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INTERVIEW

Ken Yokoyama

2023.09.21UPDATE

Ken Yokoyama

Member:横山 健(Gt/Vo) Hidenori Minami(Gt) Jun Gray(Ba) EKKUN(Dr)

Interviewer:ヤコウリュウジ

サブスク中心となった現代の音楽の聴かれ方に合わせつつ、バンドとしてのステートメントを数多く届けるため、"シングル・シリーズ"という形でのリリースを開始したKen Yokoyama。このたび発表される第2弾『My One Wish』には、生まれ変わってもギターと出会って、ロックンロールと生きていきたいという願いが込められた表題曲や、自戒の念も込めて、時間には限りがあると突きつけるシリアスな「Time Waits For No One」、さらには木村カエラとのツイン・ヴォーカルで繰り広げられるミュージカル"アニー"の「Tomorrow」のカバーが収録。本作の背景を、メンバー4人に語ってもらった。

-シングル・シリーズの第2弾ということですが、サブスク時代にマッチしつつ、バンドのステートメントを届ける機会を増やすという試みなんですよね。

横山:そうですね。サブスク中心になって、音楽の聴かれ方が変わってきたことを僕たちも認めざるを得ないじゃないですか。やっぱシングル曲を中心に聴かれるというか、もしかしたらサブスク側のシステムの問題かもしれないですけど、そういう曲が推されがちですよね。

-実際、よく聴かれる曲のランキングがまず出てきたりもしますし。

横山:ミュージシャンとして、やる以上は聴かれたい。聴かれるんだったら、単純に出るところを増やすっていう意味でいいんじゃないかな、と。悔しいですけどね、そういうのって。僕たちはアルバム・アーティストだと思ってて、そういう自負は今でもあるけど、それを捨てなきゃいけないというか。やっぱ、バンドにとっては結構な大事なんですよ。シングルを連続で出すためには今までよりも長いスパンで考えることもあるし、正直面倒臭いじゃないですか(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

横山:今までのペースとは違うことを一昨年ぐらいからやってまして。それをメンバー間で共有するのも最初は前向きな話じゃなかったんですよ。

-違和感があるというか、すんなり前を向ける話ではなかった、と。

横山:ではなかったですね。まず、なんで? というところから入って。

-ただ、そうであったとしてもやるべきだという。前提とするものがアルバムからシングルになると、曲作りの考え方は変わってくるんですか?

横山:変えないつもりでも自然と......でも、それは偶然かな。ただ、今までのアルバム単位での考えでは収録できなかったような、選曲から漏れていたような曲をシングルに入れることができる。それでアルバムとシングルの色の違いっていうのも出せるし。それはできたのかな。

-少し振り返った話にはなりますが、第1弾として『Better Left Unsaid』を今年5月にリリースされました。横山節がギュッと詰め込まれたミドルチューン「Better Left Unsaid」、WANIMAとのキャッチボールで生まれた「Whatcha Gonna Do」という2曲入りながら非常に濃い作品だったと思います。

Jun:「Better Left Unsaid」はリリース前から結構ライヴでやってたんで、当然ここからリリースするだろうな、って動いてたところもあったし。一番最初にできてた曲だったかな、これからリリースされていくものの中で。

-「Whatcha Gonna Do」に関してはいかがですか?

Jun:あれは健が"やっぱ、あれをやったほうがいいんじゃね?"って急にやることになって。

横山:直前に作って"これ、入れちゃおう!"みたいな。

-シングルは曲数が限られることもあり、手応えのある曲を入れるということだけではなく、何かしらみんなに引っ掛かるようなフックを作りたいというところも?

横山:あぁ、WANIMAの「Whatcha gonna do?」に関してはありましたね。WANIMAのカバーっていうのは面白いじゃないですか(笑)?

-ホントにありえないですよ(笑)。

横山:LED ZEPPELINがGRETA VAN FLEETのカバーをするみたいな......そこまで開きはないかな(笑)?

-でも、近しいバンドなことを知ってても想像はできなかったです。

横山:だから、そういう要素も入ってましたね。彼らもちゃんとアルバムに収録してないので、どこまで認知度があるかっていうのはわからなかったんですけど、とにかくWANIMAのカバーっていうのがインパクトもあっていいなと思ってました。

-実際、制作は大変だったそうですけど。特に歌詞の部分だったり。

横山:そこは大変でしたね。僕じゃなくてMinamiちゃんが、ですけど(笑)。

-ニヤニヤさせられる仕上がりだと感じました。

Minami:でも、ライヴでやってると演奏の気持ち良さがあるんで、意外と歌詞に耳がいったりはしないんですよね。単純に気持ちいい曲っていう。

-曲が生まれたストーリーを踏まえると、ちょっと飛び道具的なイメージがあるかもしれませんが、心が浮き立ついい曲なんですよね。

横山:いい曲なんですよ、実は。(イメージから)一番抜け落ちてるところなんですけどね(笑)。

-そして、第2弾がリリースされますが、シリーズの流れは事前に想定されていたんですか?

横山:最初から考えてましたね。ホント、2年計画ぐらいなんで、自分たちの曲作りの力量を逆算しながらスケジュールを立てて。

-今回の『My One Wish』の選曲やボリュームも早い段階から考えていたんですね。

横山:そうですね。あとは僕が毎晩毎晩、ちょっと(曲の組み合わせを)変えちゃ、メンバーにLINEを送るんですね。これでどう? って。

-それに対して、みなさんはどういう返信を?

Jun:"いいね"って(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

EKKUN:どのパターンでも素晴らしいって思っちゃうんですよ(笑)。

-良さを毎回見つけられるとも言えますね(笑)。

Jun:それにリード・トラックは決まってるんで、そりゃ作ってる人の想いがあるだろうし、健のアイディアを優先したほうがいいんじゃないの、って。

横山:Minamiちゃんは毎回、自分の思い描いてる曲調のバランスとか僕と違ったものを持ってるので、"これだと速い曲が多すぎるんじゃないか?"とか、そういうことを返してくれて。そこで意見交換をしたり。

Minami:でも、素直に思ってることを返してるだけなんですけどね。

-まず、タイトル曲でもある「My One Wish」はらしさ全開のパンク・チューンであり、ライヴハウスが戻ってきた今だからこそこういう新曲も待ってたんだよ、というファンも多いと思います。この曲をセレクトした理由はなんだったんですか?

横山:単純にいい曲なんじゃないかと思ったんですよ。最初、別の曲を候補にしてたんですけど、途中でこっちのほうがキャッチーかも、とも感じて。ただ、ライヴハウスがこうなってることは、曲を作ってるときはそんなに考えなかったですね。そこはなかなか予測できないというか。前回、『4Wheels 9Lives』(2021年リリース)ってアルバムを出したときはまさにコロナ禍だったんですけど、めちゃめちゃ合唱できる、めちゃめちゃ速い曲がいっぱい入ってて。

-シンガロング必至な曲ばかりでしたよね。

横山:たまたま「My One Wish」は速くてらしい曲だと思うんですけど、このシングル・シリーズから続いていくアルバムはもうちょっとミドル寄りというか。コロナ禍での声出しNG、お客さんが動けないっていうライヴの経験が出ちゃうんですよね。

-みなさん、最初に「My One Wish」を聴いた印象はいかがでした?

Jun:一番最初に聴いたときからイケそうだと思ったけど、意外と健ってイケるかどうかわからない、"どっちなんだろうな?"って感じで(曲を)持ってくることもあって。これもそんな感じだったんじゃないかな。でも、演奏も含め、仕上がっていくうちに"いいじゃん"って。

EKKUN:たぶん、最初にアイディアを貰ったときはイントロのギターがなかったんですよ。で、イントロができあがったときにカッコいいなってなりました。

横山:この曲はサビから作ってて、それに対して他のパーツをどうしようか、っていうのがあったんですよね。

Minami:意外と僕の中では、健さん節じゃない感じで聴こえるんですよね、サビが。あのメロディ、今までにないような。それがすごく印象的で。

横山:そうだね。Aメロのほうが横山節っていうか。

-全体のパッケージとしてはらしい曲ではあるけど、また違った色味も加わってて。

Minami:そうなんですよ。ただ、だからと言って、そんなに新しく感じないというか......なんて説明したらいいんだろう、っていう(笑)。

-歌詞としては、生まれ変わってもギターと出会って、ロックンロールと生きていきたいというパーソナルな願いが綴られています。

横山:日頃から考えてることなんですけど、そもそも僕らが死んだあとの世代にとってロックンロールが有効かと言えば、あんまりそうとは思えないんですよね。例えとして合ってるかわからないんですけど、存在が演歌みたくなってるな、と。今の若い子にとって"ロックはおじさん、おばさんが聴くものでしょ?"っていう。性質の違いはあるんですけど、存在としては近からず遠からず。あとあと、そういったものになる可能性ってあるだろうな、って。

-昔の若い世代がロックンロールに求めてたものを、今はヒップホップが担ってるかもしれませんし。

横山:今はギターのない音楽だとか、PCで作った音楽がメインストリームを席巻してるじゃないですか。だから、僕の考えは妥当な現状認識だと思う。でも、それは嫌だと言ってるのがこの曲ですね。

-SNSなどで共感が可視化されてる今、マイノリティな願いが言い出しにくい風潮が世の中にあるなと感じていて。個人の願いはもっと尊重されるべきじゃないかと思っていたのもあり、すごくグッときました。

横山:これをSNSで言うとまた伝わり方が全然違うんですよね。反論がたくさん来ちゃって話にならないだろうし。やっぱ、歌詞として言葉にするのは特別なことだと僕は思いますね。

-また、「Time Waits For No One」はサウンドとしてもメッセージとしてもエグる曲だと感じました。こういったシリアスなチューンも、バランスとして入れようと考えたんですか?

横山:そうですね。これ、話が脱線してしまうんですけど、シングル・シリーズ、その先にあるアルバムへ向けて制作を始めたとき、次はこの「Time Waits For No One」みたいな曲をたくさん作るって言ってて。実際に取り掛かったんですよ。

Jun:そうはならなかったけどね(笑)。

横山:そう、"俺、才能ないのかな?"って(笑)。

-いやいや、そんなことはないと思いますけど(笑)。

横山:シリアスなマイナー調の曲を書くと、どうしても単調になってしまって。結構トライしちゃ、"俺、ダメだわ"っていうのを5~6回は練習のあとに言ってたよね?

Minami:ただ、そう感じてるのは本人だけなんですよ。"これ、いいじゃん!"って思う曲もあったりして。でも本人が納得いかないんだったら、っていう。

Jun:だから得意分野じゃないんだよ、きっと。「Time Waits For No One」は上手くいったけど、途中で引っ込めちゃったりする曲もあったりして。

-バンドとしてはいい感じだなっていう空気があったとしても、健さんの中では違うようなところがあったり。

横山:で、僕のその勢いが勝っちゃうんです(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

EKKUN:もったいないなと思うんですけどね。