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INTERVIEW

Ken Yokoyama

2023.09.21UPDATE

Ken Yokoyama

Member:横山 健(Gt/Vo) Hidenori Minami(Gt) Jun Gray(Ba) EKKUN(Dr)

Interviewer:ヤコウリュウジ

ホントはひとりひとりに言ってやりたいですもん――顔をグッと掴んで"いいか、時間ってのは誰にでも平等でな!"って(笑)


-そういったトライの中で「Time Waits For No One」は生き残った曲。

横山:ハード・ドライビンなロックンロールで、めちゃくちゃ速くならないカッコいい曲が作りたくて、それが形になったと思います。

-誰にとっても時間は有限だと突きつけるこの曲の歌詞はホントにエグいというか、食らわされました。

横山:今って自分たちの子供世代、成人する前の子たちが世の中に出ていこうとする時期じゃないですか。それがすごく頭にありましたね。そういう子たちと話をするときは"やっぱ世の中、お金はすごく大切だけど、何しろ大切なのは好きなことを見つけることだ"って必ず言うんです。で、その好きなことがパッと見つかる子もいれば、いろいろ模索して夢を持ったけど破れた子もいる。でも、そういう子たちにまず火をつけるために言いたいことがこの歌詞だったりするんです。爺さんからこんこんと言われてるみたいに感じるかもしれないけど(笑)。

-日本語訳を引用すると、普通だったら"だってオレ達は 可能性のかたまりだろ/金はないけど 時間ならたっぷりある"という部分で終わると思うんです。でも、この曲ではそこから"そう思っているうちに 片足は棺桶の中"と綴られていて。

横山:僕も20代だったらその最初の部分で終わりですよ。書き手として20~30代だったら自分にも時間はたっぷりあるわけで。でも僕自身50歳を超えていて、いつまでできるかと考えるときもある。そういうところがあるんでしょうね、背景に。

-自戒の念も込めて、というところも?

横山:それもありますね。ホントはひとりひとりに言ってやりたいですもん。顔をグッと掴んで"いいか、時間ってのは誰にでも平等でな!"って(笑)。

-でも、若いうちってそこを意識できないですよね。

横山:できないです、できないです。

-それこそ、コロナ禍で何もできないと決めつけて、怠惰な流れに身を任せてしまった経験は誰しもあると思いますし。わかっちゃいるけど、をガツンと言ってくれる歌詞だと思います。

横山:説教おじさんですね(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

横山:いや、説法おじさんかな(笑)?

-間違いなくまっすぐ響くと思います(笑)。そして、「Tomorrow」は木村カエラさんをゲストに迎えた曲となりました。これは2021年10月の配信ライヴ("Ken Yokoyama『Bored? Take A Breath』")で共演したことがきっかけだそうですが、もともと交流があったんですか?

横山:僕は結構前から、一緒に何かをやったことはなかったんですけど、友達の......つもりでした(笑)。

-友達だったんですね(笑)。一緒にプレイしてみた印象はどうでしたか?

Minami:華がありますよね。

EKKUN:気遣いが細やかだなと思いました。アイス・コーヒーの差し入れをしてくれたり(笑)。

Jun:よく覚えてるな(笑)。

EKKUN:テレビの中の人っていうイメージがあったんですけど、すごく気さくで。

-それまで面識はなかったんですか?

Minami:僕ら3人はなかったんですよ。

横山:実は何年も前からライヴでもレコーディングでも、音楽にかかわらないことでも何かやろうという話はカエラさんとしてて。で、その配信ライヴにゲスト・シンガーとして来てもらい、初めて人前で一緒にプレイできて、僕としては素晴らしかったし、楽しかったんです。だから、シングルでもミニ・アルバムでも作ろうみたいなテンションになったんですよ。5人でバンドを組み直すぐらいの勢いで。

-それはそれでめちゃくちゃ聴きたいです。

横山:ところが、それは今のカエラさんがすべきことじゃないかもなとか、僕らも曲を作るのが大変だなとか、いろいろと考えて、アイディアがどんどん小さくなっていって(笑)、1曲だけ歌ってもらったのが今回っていう感じですね。

-そこだけ切り取ると寂しくもなりますが(笑)、「Tomorrow」を選んだ理由はなんだったんですか?

横山:配信ライヴのときにカエラさんがやりたいって言ってくれた曲で、バンドとしても急遽アレンジして。僕としては曲として仕上がった感じがしたんですよね。

-今回は健さんとカエラさんのツイン・ヴォーカルになっていますが、おふたりの声の相性の良さにも驚きました。

横山:もともと、カエラさんはこういう音楽というか、ポップ・パンクから出てきた人だし。このシーンが大好きで、ここの住人だったんですよ。だから、合わないわけがないと思ってましたね。

-女性ヴォーカルをカバーする健さんってすごく魅力的だなと思ってるんですけど。

横山:じゃあ次はテレサ・テンですね(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

-ちなみに、初回盤には「Love Me Slowly」、「Teenage Victory Song」(WEEZERカバー)、「Fuck Up, Fuck Up」のスタジオ・ライヴ3曲が収録されています。これはわざわざCDを手に取ろうとしてくれるファンに、楽しみの幅を提供してみたいということなのかなと。

横山:まさにそうですね。もう、こういうことをするのはアルバムだけかと思いきや、シングルにまですることになりました(笑)。ただ、そりゃそうですよねって。僕らの客層って比較的パッケージを手に取ってくれる人たちが多いと思うし、タダとは言わないけど、サブスクで聴けてしまう曲ばかりじゃ、買う人すら買ってくれないんじゃないかって気がするんですよね。

-やっぱり、バンドとしては音源を形にはしたい気持ちがある。

横山:ものすごい乖離ですよ。僕はミュージシャンとして音源を残すのが子供のときは夢だったりして。アルバムを作りたい、アルバム1枚作れたら音楽をやめてもいい、っていう情熱をパッケージに持ってた世代だけど、世の中としてはパッケージに価値がないと言われてる状況じゃないですか。子供のときに信じてた神話が崩れた感じですね。ただ、頑固にはなりたくなくて。夢だからやりたいんですけど......それって、正直赤字になったらやる意味がないというか。

-単純に続けていくことができなくなりますからね。

横山:そうなんですよ。誰が悪いって言うつもりはないんですけど、なかなかつらい時代になりましたよね。

-理想はありつつ、現実と折り合いをつけながら、やれるところまではパッケージにもこだわっていきたい。

横山:あと、今回のシングル・シリーズは全部僕がジャケットを描いてるんです。それもCDを買おうと思ってくれる人たちにプレゼントするつもりで描いてますね。

-リリース後には東名阪のホール・ツアー("Ken Yokoyama「My One Wish Tour」")が予定されています。実際、椅子ありのライヴを経験されてどう感じましたか?

Minami:すごく楽しかったんですよ、単純に。それに、お客さんも僕らと一緒で歳を重ねてる方も多いし、喜んでくれたりもして。別にコロナが落ち着いたからやめることでもないな、って。

横山:両方できるように、と。

-ライヴハウスはちょっと、と二の足を踏む年代の人たちにも来てほしいですよね。

横山:特に、僕らのバンドはライヴの風景がものすごく激しいっていうイメージだと思うんですよね。それだと怖くて行けないっていう人が、僕らが想像してる以上に多くて。あと椅子ありのライヴですごく感激したのが、激しいライヴの前方だと吹き飛ばされてしまう女性とか子供がギターの手元をじっと観てるんです。生々しいライヴの手の動きとか観れないじゃないですか。それがすごく嬉しかったんですね。

-スペースが確保されてる椅子ありの会場だからこそ、滴る汗やちょっとした表情もしっかり観れますよね。

横山:コロナ禍で唯一不満だったのが、お客さんが声を出せないことで。それは気持ち悪かったけど、ホールでやっても一緒に歌えるんなら、もっと素晴らしいライヴになるんだろうなって思ってました。ただ僕らは、というか僕だけかもわかんないですけど、激しい音楽を聴いて、激しいライヴが好きで。僕なんてHi-STANDARDのキャリアを考えても、オールスタンディングやカオスの申し子みたいなもんじゃないですか。カオスを作りたくて音楽をやってるし、それは美しい光景だとも感じてるんだけど、全員が全員カオスを求めてるわけじゃないんじゃないか、とも最近ちょっと思い始めたんですよね。実際、ホール・ツアーが発表されて、えっ? っていう人もいれば、それなら観に行こうっていう人もいて。今後も続けていけたらなと。

-ただ、モッシュやダイブがないにしろ、集まる年齢層といった幅広さを考えれば、それはそれでカオスかもしれないですよね。輝かしいキャリアを長年積んできたからこそ、生まれるものでしょうし。

横山:たしかに、それはベテランならではかもしれないですね。

-今後、リリース・ツアーの前半がホールで、後半がライヴハウスみたいなこともあったり?

横山:可能性としてはありますね。事前に明記しておけば、お客さんも行く場所を選べるでしょうし。

-ホール・ツアーはもちろん、アルバムへ向かっていく流れもやっぱり楽しみですし、期待が高まります。現時点での話になりますが、どんなアルバムになりそうですか?

Jun:いろいろ、やったことがないような曲もあったり。

Minami:ギターが入ってないやつとかね?

横山:そうだね。ボカロ的な?

EKKUN:夜な夜な打ち込みましたからね。

-すんなりと頷いたら騙されるやつですね、それ(笑)。

Minami:まぁ、新しい挑戦もあるんですけど、しっかりKen Yokoyamaの世界観は崩さずに挑戦してますね。

横山:うん、絶妙なところに落とし込めてると思う。もう次で8枚目のアルバムになるんですけど、過去7作のどれにも似てない感じがしてますね。