INTERVIEW
Ken Yokoyama
2015.09.02UPDATE
Member:横山健(Vo/Gt)
Interviewer:柳 憲一郎
-このタイミングで大きな変化を感じさせるアルバムが作られました。これは結果としてのものなのか、それともそうしたいと思ったからこうなったのか。
パッケージとしては結果的に――なんだろうけど。この2年間の流れの中で、さあ次回作へこれから向かっていこうというときに、変わったところに行きたいなっていうのはあったかもしれないです。
-そういう思いと、前回のシングルのタイミングでもすでに語られている箱モノのギターとの出会いが結びついた。
そう、それがすべての始まりですね。それで結局アルバムの楽曲の世界観はそこからのアプローチが基本になりました。
-それが今回のアルバムの最大の特徴なんですが、これは、僕からすると突発的なものではなくて、時間の問題でもあったと思うんです。
そうなのかもしれない。
-いわゆるオーソドックスなロックンロールへのアプローチなわけですが、健さんがそれをするのがまったくの初めて、というわけではなかったと思うんです。これまでもカバーの選曲やアレンジという部分で限定されてはいながらも存在していました。
ああ、なるほど。それはそうですね。
-Hi-STANDARD(以下:ハイスタ)から現在に至るまで、カバーのチョイスはかなり気合い入ってますよね。
はい(笑)。
-これまでのカバー曲のチョイスとアレンジが、今回のアルバム全体の手触りとすごく繋がっていると思うんです。
なるほどね。それは本当にそうだと思う。ハイスタのころからカバーは僕が選ぶことが多かったんですね。カバーは自分たちで書けない曲、自分たちでは出せないフィーリングのものをチョイスしてきたっていう発言を過去にしてるんです。言ってしまえば、先人の名曲を無邪気に自分たちのものにしたい、っていうことなんですけど(笑)。
-あははは。そういうと身も蓋もないですけど。ただ、健さんに限らずですけど、メロディック・パンク・バンドはカバー曲やるの、ほんと好きですよね。
結局パンク・ロックって、音楽のことじゃない。圧倒的に精神性の問題なんですよ。メタル・サウンドっていえば音楽的な問題なんだけど、パンク・サウンド――例えばハイスタがパンク・サウンドかと言えば必ずしも全員がそうは思わないわけで。精神の問題。だからパンク・バンドがいろんな音楽のカバーをしちゃうっていうのは、意外と普通のことなんだと思う。
-なるほどね。そして、そうやってカバーでやってきた"自分たちでは出せないフィーリング"だけれど、そろそろもう自分で出せるんじゃないか思った?
そういうこと。
-ですよね。怒りのアルバム『FOUR』、横山健という人間をそのまま出した『Best Wishes』、それを経ての今、このアルバムが出てきたのも興味深い。
『FOUR』は本当に怒っていたと思う。『Best Wishes』は、メッセージありきのものだった。だから今こそ、音楽そのものに向かいたかったんだと思う。
-"怒りとメッセージ"というとメロディック・パンクの真骨頂なわけですけど、そういう意味でメロディック・パンクをやりきったという感触もあったんでしょうか。
いや、そういうのとはまたちょっと違うんですよね。そこはやはり箱モノのギターとの出会いのほうが大きいんです。2年前くらいに出会って、家でのギター・ライフが変わって、高校生みたいなギター中心の毎日になっていったんですね。そうしていたら、昔から普通に聴いていた初期THE BEATLES、Chuck BerryだとかElvis Presleyだとかが俄然輝きをもって聴こえてきたんです。だから、ロックンロールのカバー・バンドを別に組もうかななんてアイディアも出てきたんですけど、そのアイディアを自分の中で転がしているうちに"何故これをKen Bandでできないんだろう"って思ったんです。自分がこんなにやりたいことを、何故できないのか、と。メロディック・パンクの呪縛が解き放たれるとかそういうことではなく、このアプローチでKen Bandの可能性を広げてみようじゃないか、と思ったんです。
-なるほど。
Gretschっていうギターを弾き始めたんですけど、弾いてるとロカビリーの世界が身近になってくるんです。音楽だけでなく文化も身近に思えてくるようになって、車の中にダイスぶら下げてみたりとか。ウチの奥さんはちょっと心配してましたね(笑)。ファッションまでそっちの方へ走り始めてしまったんじゃないか、って(苦笑)。もちろんそんなことはないんですよ。僕らと同時代を過ごしたアメリカのメロディック・パンクには、根底にロカビリーの感覚があるんだなってことがわかってきたんですよね。こうなるまではわからなかったことです。