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LIVE REPORT

Leetspeak monsters

2021.10.30 @Veats Shibuya

Writer 武市 尚子

墓場の街、グレイヴタウン出身のモンスター4人によるミクスチャー・ロック・バンド、Leetspeak monsters。
年中ハロウィンという彼らにとって、人間界が定めたハロウィン・シーズンともなれば絶好の暴れ日和である。
2021年10月30日。彼らが"儀式の場"として選んだ場所はVeats Shibuyaだった。コロナ禍ながらもハロウィン一色に染まる渋谷の街は、ハロウィン前夜祭とあって、警察機動隊が出動するほどに賑わっていた。
人混みを潜り抜け辿り着いた彼らが待つ地下室には、思い思いの仮装をしたファンたちがガイドラインに沿った形でフロアを埋め尽くしていた。美しく整えられた客席は、コロナ前に見ていたオーディエンスが重なり合うように密接した景色とは異なるものであったが、ショー要素の強いステージを届ける彼らのライヴは、熱量を落とすことなく、むしろ現状を受け止めた整頓された景色をプラスに変えていた。
オーディエンスへの挨拶代わりとなる「The Beginning」を1曲目にショーの幕は開けられた。
蜘蛛の巣だらけのお城のような佇まいのドラム・セットで、リズミカルなドラミングを魅せるDieWolf。鎖で拘束されたマイク・スタンドを前に、フランケンシュタインさをよりリアルに浮かび上がらせる、荒々しさを押し出したギター・プレイを届けるYo'shmeer。薔薇の蔓が絡みついたマイク・スタンドを前に、妖艶な出で立ちからは想像のつかない重低音で、サウンドの基盤を支えるベース・プレイを届けるEuskyss。3人が紡ぎ出すホーンテッドな世界観の上に、繋ぎ目を感じさせない難易度の高い歌声を乗せていくD13は、存在そのものが"Leetspeak monstersの象徴"と言っても過言ではない。

ピンクと紫とオレンジの照明と、冷たさが際立つ氷色の無色の照明が幻想的な世界を描き出し、オーディエンスの目の前には幻想的な世界が広がっていった。4人によって放たれるリアルなサウンドと幻想的な世界の共存は、観る者を不思議な現実逃避へと導いていく。そんな演奏シーンはもちろんのこと、ピタリと息の合った演奏が止められるエンディングと次曲の繋ぎ目は、幻想と現実の間を彷徨うさらなる異空間を感じ取ることができる楽しさもあるのだ。それくらい彼らのライヴには無駄な時間がない。Leetspeak monstersのライヴは、一度幕が開いたら、目まぐるしく変化する様々なゴースト・ストーリーへのワープに、ワクワクさせられっぱなしなのである。
"ヴィジュアル系"というカテゴリの中で活動する彼らだが、ヴィジュアル系にはないノリがメインであることも特筆すべきところだろう。
曲始まりからラップで攻めたてられるディープ・ナンバー「Freak」で見られる、右手を垂直に伸ばし、大きく縦に振るノリこそが"それ=ヴィジュアル系にはないノリ"である。ステージから促されるD13の振りは、フロアの最後尾まできれいに広がっていった。1曲の中で"手拍子とヘドバン"が共存するのも、"それ=ヴィジュアル系にはないノリ"であり、独自のスタイルであると言えるだろう。手拍子のあと、ヘドバンでフロアが埋め尽くされていった「Sweet Nightmare」は、大きな波を作るかのような美しい楽曲なのだが、D13は大きなリズムを煽りとしてオーディエンスを導き、Yo'shmeerはドラマチックなメロを伸びやかに響かせた。
Leetspeak monstersの武器は、異なる音楽ルーツを持つ4人の個性の融合だ。
90年代のヴィジュアル系をルーツとするYo'shmeerと、フュージョンやジャズをルーツとするDieWolfと、ミクスチャー・ロックやオルタナティヴ・ロックをルーツとするD13と、幅広い音楽ルーツを持つEuskyss。
自身の音楽への探究心と雑食さを生かしながら、メンバーの個性を尊重し、それぞれの得意分野を実に上手く調理し、Leetspeak monstersの楽曲に落とし込んでいく、メイン・コーンポーザーのEuskyssのセンスは実に素晴らしく、そこに"らしさ"である絶対的なモンスター感を生み出していくのである。4人それぞれの個性が炸裂する「Devil's play」などは、まさにその極みだ。DieWolfの叩き出すリズミックなドラムが楽曲をリードし、猟奇的な動きでズクズクと攻めたてられるギター・フレーズを、かきむしるように弾き放つYo'shmeerと、メロディアスなスラップでアクセントを差し込んでいくEuskyssと、曲中に"ジャンプジャンプ!"と煽りを入れてオーディエンスを盛り上げていきながらも、独特な世界観を描き上げ、確実にオーディエンスを魅了していったD13。知らぬうちに完全に彼らのペースに取り込まれてしまう呪文のようなこの歌は、この4人だからこそ生み出せる誰にも真似できない武器だと言い切っていいだろう。それは、まさに"らしさ"を強く感じた瞬間だった。

カラフルな照明がステージとフロアを照らすなか、Yo'shmeerとEuskyssがDieWolfの前に集まるフォーメーションを魅せたり、DieWolf、Yo'shmeer、Euskyssと繋がれていくセリフを魅せたりと、とにかく見せ場の多い「Trick or Treat」では、ピアノの同期がより楽曲を華やかに導き、D13 のタイトルコールから始まった「Monster's Party」では、D13 の指揮のもと、サビでオーディンスが両手を挙げ、左右に上げ下げする振りで曲を盛り上げながら、ギター・フレーズに合わせたクラップを重ねていった。"一緒にライヴを創り上げていく"という一体感は、客席をも巻き込んだ大掛かりなミュージカルを観ているかのような感覚にもなる。まさに、ショーの中、ストーリーの中に巻き込まれたかのような立体感も、彼らLeetspeak monstersの特徴だ。
しかしこの日。そんな"彼ららしさの提示"と"オーディエンスからの渇望"の応酬の連続の中で、新たなるLeetspeak monstersが垣間見れた瞬間もあった。「Supernatural」だ。"らしさ"を感じさせるデジタル・ロック的な攻めではあるのだが、Yo'shmeerが爪弾くいなたいギター・フレーズに重ねられたD13の語り的な歌が、今までにないDieWolfの力強いドラミングを引き出していたのだ。前にも記したように、フュージョンやジャズをルーツとするDieWolfのドラミングは、ニュアンス的であり、描写的であるのが特徴なのだが、この楽曲で魅せる力一杯フロア・タムを叩くプレイに、より広がっていくであろうLeetspeak monstersの音楽性を見た気がした。
12月から始まる最新シングル『Trick or Treat』を引っ提げてのツアーでも、「Supernatural」の変化と進化は注目したいところである。
同じく、最新シングルのカップリング・ナンバーであった物語性の強いポップ・ロック「Starry night」を本編ラストに置いてライヴを締めくくると、アンコールの2曲目に届けられた「Gothic」でJILUKAのヴォーカリスト、Rickoをゲストとしてステージに招き入れ、ハロウィン前夜祭ならではのサプライズとしてオーディエンスを楽しませたのだった。D13とRickoというまったく異なる個性のダブル・ヴォーカルで届けられたこの曲は、原曲の景色をガラッと塗り替えたことで、改めてD13という声の指紋こそがLeetspeak monstersの悪夢(物語)を描き出す重要な鍵であることを確信させたのだった。

2021年12月6日の西川口Hearts を初日に、年を跨ぎ、2022年1月29日福岡DRUM Be-1でツアー・ファイナルを迎える全9ヶ所での"Leetspeak monsters ONEMAN TOUR Welcome to Monster's Theater~2021-2022~"は、新たなLeetspeak monstersの展開と、さらなる探究のきっかけとなるツアーになるのではないだろうか。


[Setlist]
1. The Beginning
2. This is Halloween
3. Samhain
4. Freak
5. Sweet Nightmare
6. Devil's play
7. Perfect night
8. Jack-o'-lantern
9. Make your treats
10. Party in the midnight
11. Haunted Mansion
12. Supernatural
13. Trick or Treat
14. Dance Dance
15. Monster's Party
16. Wonderland
17. Starry night
En1. 13th Friday night
En2. Gothic with Ricko

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