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LIVE REPORT

vistlip

2021.07.07 @Zepp Tokyo

Writer 杉江 由紀 Photo by @tk_nonseptic

時に空が曇り、雨や嵐で我々の視界が遮られることがあったとしても。その向こうに存在している星たちの輝きまでもが簡単に失われるようなことは、決してない。

vistlipがこのたび約2年ぶりにZepp Tokyoにて開催した恒例の七夕アニバーサリー・ライヴ"14th Anniversary LIVE BJ"は、間違いなくバンドとファンの双方にとって極めて大切な逢瀬となったはずだ。(なお、このライヴ・タイトルに冠されていた"BJ"とはトランプ・ゲームのブラックジャック=21を指すものであり、バンドの14周年とvistlipにとってのラッキー・ナンバー 7をプラスしたものであったのだとか)

"お待たせしました、vistlipです!!"
最新シングルの表題曲にしてTVアニメ"デュエル・マスターズ キング!"EDテーマに起用された「Act」を含む数曲を立て続けに演奏したところで、フロントマンの智が告げたこの"ごくあたりまえ"なはずの挨拶。これに対して、ことさらの感慨を覚えてしまったのは何も筆者だけではあるまい。まさに、コロナ禍の中で生まれたという「Act」の中にある"次なんてもう無いかもしれないって事、嫌という程思い知らされただろ?"という歌詞のとおり、我々はこの昨今の日々の中で散々"ライヴという空間の素晴らしさとその尊さ"を突きつけられ続けてきたわけで、ようやくここに来てvistlipのライヴが有観客で実現したという喜びは何にも代え難いものだった。そして、ここで聴けた「Act」はvistlipが高らかに伸びやかに歌う"開戦を告げる合図"でもあったと確信する。

かと思うと、本編中盤では"今日は椅子があるんでね。たまには、それを逆手にとって座ってみちゃったらどうでしょう。こういう景色も新鮮だね"(智)と、ソーシャル・ディスタンシングを確保するために客席内に設営された椅子を活用しつつ、じっくりと聴かせるかたちで「ミミックの残骸」を筆頭に数曲を披露してみせ、カッコいい曲だけではなく"しみじみと味わえる"vistlipの一面も堪能させてくれることに。

それでいて、そのあとには"いつまで座ってるんだよ(笑)"(智)とハッパをかけてから本編後半へと突入していくあたりがこれまた心憎く、ある意味でvistlipの5人のことを意味するような「FIVE BARKIN ANIMALS」から火蓋を切ったこのパートでは、強靭なリズムを叩き出すドラマー Tohya、躍動感溢れるフィンガリングでグルーヴを生むベーシスト 瑠伊、ヘヴィな音像でバンド・サウンドをスパイシーに彩るギタリスト Yuh、エッジーなプレイを武器に斬り込むギタリスト 海がそれぞれにvistlipとしてのタフなラウドロックを体現してみせ、フロントマンの智も時にアグレッシヴなラップを織り交ぜながらの説得力あるパフォーマンスで、我々を圧倒してみせることになったのである。

なお、今宵のアンコールでは昨年は残念ながら実施することのできなかった[vistlip 13th Anniversary Live "Screams under the Milky Way"]を、来たる10月17日にvistlipとしてのZepp Tokyo最終公演(2022年1月1日に閉店予定のため)として改めて開催することが告知されたうえで、七夕伝説をモチーフとした「-OZONE-」と、七夕にしか聴けないレアな「July Ⅶth」の2曲で、彼らは2021年の七夕の一夜を麗しく華やかに締めくくってみせたのだった。

始動から14年。たとえ空が曇ろうと、荒れようと、vistlipという名の星の放つ輝きが失われることは決してない。その燦然たる光は今、彼らの未来をも照らしている――

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