INTERVIEW
vistlip
2020.03.16UPDATE
2020年03月号掲載
Member:智(Vo) Yuh(Gt) 海(Gt) Tohya(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
温故知新とは"昔のことを尋ね求めて、そこから新しい知識、見解を導くこと"であるという。vistlipがこのたび2020年第1弾音源として発表するミニ・アルバム『No.9』は、まさに温故知新なものであり、今作には各メンバーにとってのルーツ・ミュージックや、初期衝動のもととなった要素たちを下敷きにしながら、今のvistlipだからこそ具現化できたのであろう楽曲たちが計6曲収録されている。過去を踏まえつつ、今現在を生きながら、未来をも見据えている彼らが真摯に放つ音。それは多彩にして躍動する音たちにほかならない。なお、この取材においてはギタリスト、Yuhが一部飛び入り参加してくれている点にもご注目をいただきたい。
-vistlipにとって2020年第1弾音源となるミニ・アルバム『No.9』がここに完成しましたが、こちらは、2019年9月に22thシングル『CRACK&MARBLE CITY』をリリースして以降に行っていた、ワンマン・ツアー"New ERA STYLE"の終了後から、随時制作を始めたものになるのでしょうか。
海:曲作りは、あのツアーの最中からメンバーそれぞれで始めていた感じです。
Tohya:そして、ツアー・ファイナルの翌日にはみんなで曲出しをしましたね。
-では、まず曲作り段階についてのお話をうかがわせてください。今回のミニ・アルバムに関しては、バンド内でどのような方向性を目指しながらの曲作りが進んでいたのでしょう。
海:曲作りに入る前の段階で、智が言っていたのは"メンバー各々の原点やルーツになっている要素を、今現在のvistlipの音として形にしたい"っていうことだったんですよ。だから、僕らもそこを踏まえながら制作をしていくことになりました。
-だとすると、智さんが今回のミニ・アルバムを作るうえで、"メンバー各々の原点やルーツ"に着目した理由が、そもそも何に起因していたのかという点がとても気になります。
智:この間ツアー中に、僕とTohyaとYuhの3人でご飯を食べに、鳥貴族に行ったことがあったんですよ(笑)。そこで浮かんだプランだったんです。
Tohya:たまたまお店のBGMで有線からAqua Timezの曲が流れてきたんだよね。"うわー、懐かしい!"とか"超好きだったわー"っていう話になって、そこから、お互いの音楽に関する原点みたいなところの話がだんだんと深まっていったなかで、"そういう初期衝動を取り入れたうえで、今の最新の自分たちの音楽を作れたら面白いよね"っていう話になったんです。
-なるほど、そういうことでしたか。実を言うと、今回の音源を資料として聴かせていただいた際には、"ちょっとした懐かしさ"をメロディの端々や、ふとしたリズム・パターンに対して感じたところがあったのですよ。この『No.9』の中に漂うある種のノスタルジーは意図して生み出されたものだったのですね。
海:そこを感じてもらえたなら、今回のアルバムの仕上がり具合は成功したっていうことになるのかな!
-メンバー個々の音楽的背景がそれだけ色濃く反映されているせいか、今作は作曲者の違いによって曲調もかなり様々な雰囲気を纏っている印象です。
海:そこはもう作り出す前から、いい具合にバラバラなものが出てくるだろうなという予想を僕らもしてました。バラバラなものが出てきたとしても、それを結果として1枚の作品としてうまくまとめることができれば、それでいいよねって考えてたんです。
-ひと口にうまくまとめるとは言っても、そこはきっとバンドとしての手腕が問われるところになったはずです。今作を1枚の作品として成立させるためにみなさんがとったアプローチとは、果たしてどのようなものだったのでしょうか。
Tohya:もとを正せば、このバンドを始めた頃からメンバーそれぞれの持っているものってバラバラだったし、今までもそれをvistlipの音としてずっとまとめてきているので、もはや特に考えなくても、自然とまとまるんですよね。
海:無意識なところでの"みんな、きっとこうまとめるよね"っていう共有感覚がバンド内にあったのは確かでしょうね。あと、自分のギターに関して言えばメインのアンプは、今回はどの曲でも同じものを使ってます。しいて言うなら、そのへんでトータリティを出すようにしたっていうのはあるかな。そこはこのミニ・アルバムのためだけにそうしたっていうだけじゃなく、今の自分にとって最も好みな音を使ったって言ったほうが正しいのかもしれないけど。
-ギターの音色を一貫させることで、中心軸がはっきりしたわけですね。
海:いずれにしても、マスタリングをしたときには、"ちゃんと1枚の作品として仕上がったな"っていう手応えを、自分としても得られたのは良かったです。あとは、このミニ・アルバムっていうサイズ感と曲数も良かったのかな。メイン・コンポーザーのTohyaとYuhが2曲ずつ、俺と瑠伊が1曲ずつ書いてるから、そのバランスも良かったんでしょうね。
智:"曲が揃わなくてフルじゃなくてミニになりました"じゃなくて、この6曲っていうところに意味があるし、ミニ・アルバムを作る必要があったっていうことなんです。
Tohya:それに音楽的な背景はそれぞれ違えど、根本の部分ではどの曲でもメロディを大事にしているっていう点で、共通の姿勢を持っていますし、それを最終的に智が歌い上げることで、この作品はvistlipの作品としてしっかり仕上がったなと思います。
海:たしかに、なんだかんだで歌っていうのは大きいですよね。今回はいつも以上に曲によっての歌い方もいろいろ違ってるし。
智:そういうふうに感じてもらえるなら僕としてはありがたいですね。