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INTERVIEW

vistlip

2020.03.16UPDATE

2020年03月号掲載

vistlip

Member:智(Vo) Yuh(Gt) 海(Gt) Tohya(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-そんな海さんの作られた「J's Melancholy」は、いかなるプロセスを経て生まれた楽曲だったのでしょうか。

海:僕は他のみんなと比べると曲を作るのにマジで時間がかかってしまう人間なんですよ。今回もツアー中どころか、自分だけその前から先に下準備を始めて、トータルで3ヶ月半かけて2曲を書いたんですよね。その内の1曲が採用になって「J's Melancholy」としてここに入ったんですけど、流れとしてはサビのメロディがまずは先にできて、次に弾き語りみたいなミドル・テンポの曲になって、さらに、そのあとテンポをちょっとアップさせて自分なりにドラムとベースをつけてから、それをまるごとTohyaに投げたらこの形になって返ってきました。

-投げられたTohyaさんとしては、この曲をどう受け止められたのですか?

Tohya:その原曲が届いたのがツアー・ファイナルの朝だったんですよ。でも、正直言うとその段階では"このままだと採用されないだろうなぁ"と感じたので、そこから大アレンジをしてこうなりました。そして、今回の『No.9』はですね、全部で4形態出るんですが、その中の"lipper"バージョンにはなんとオーディオ・コメンタリー(「RADIO the vistlip [No.9 EDITION]」)が入ってまして、その中でこの曲も含めて各曲のデモを聴くことができるようになってます。

海:メンバーみんなでいろいろしゃべりながらもとのデモを聴くっていう企画ですね。「J's Melancholy」に関してはTohyaのデモと俺が作ったデモを両方聴き比べてるんで、その差に絶句できます(笑)。でも、いいんですよ。俺は作曲家じゃないし、バンドで作ってるわけだし、その原形がどうあったとしても、恥ずかしいとかは思ってません。

-バンドの持つ最大の醍醐味とは、メンバー全員の力によって引き起こされる化学反応にあるわけですしね。ポテンシャルを持つ原石だからこそ、磨きをかけたときに光り輝くのではないかと思います。

海:メロディも作ってない、コード進行もまるで跡形もないとかだったら、さすがに"いい加減にしろよ!"となるでしょうけどね。そこの骨格の部分をTohyaやみんなが生かしてくれたっていうのは、改めてバンドっていいもんだなって感じました。今回は瑠伊の書いた「ミミックの残骸」もかなり原形からは変わったよね。

Tohya:明日ドラム録りだよっていう日の夜2時くらいになって智から"やっぱり、曲調変えよう"っていう話が出たんですよ(笑)。

海:もとは爽やかな疾走感のある曲だったのが、いきなりバラードになりました(笑)。

-えぇっ! それはものすごい変わりようですねぇ。

Tohya:ドラムも全部分解して作り直しましたよ。まぁ、そういう突然の無茶振りに応え続けてもう何年なんだ? っていうくらいには慣れっこと言えば慣れっこです(笑)。

智:結果としてはバラードになってくれたおかげで、僕からするとこの曲では今しか歌えないというか、今だからこそ歌える歌を形にできたような気がしてます。

-さて、今作はYuhさんの作られている「四季彩」が美しく締めくくってくれておりますが、この曲を最後に持ってきた理由があればそれも教えてください。

智:この曲は俺とYuhが前のバンドで一緒にやっていた頃の曲調に近いものなんですよ。というか、当時もまったくこれと同じタイトルで曲を作ったことがあって、今回はあえて同じタイトルで別の曲をvistlipとして新たに作ったんです。それこそ、鳥貴族で話をしたとき"まず原点っていうことで言えば、あの頃の感じを今またやってみたいよね"っていう話をしましたからね。その話が出てなかったらこのアルバムは生まれてなかったと言ってもいいくらいです。だからこそ、最後に持ってきたというのもあります。

Tohya:ラスボス感がある曲だなとも思いますね。

智:それに昔の曲を0からリメイクしたら今のほうが良かったっていうのも、自分にとってはひとつの収穫でした。あの頃より何倍も良く作れるようになったんだなということがわかったのは、すごく嬉しかったです。

-では、そうした成果もあれこれと得られたこのミニ・アルバムに、今回"No.9"というタイトルを冠したのはなぜなのでしょう。

智:「DANCE IN THE DARK」の歌詞に、[テーマソングを付けるなら"第九"。]というフレーズがあるんですけど、第九っていう言葉が意味してるのは、過去も未来もひとつに繋がるっていうことなんですよね。その意味合いが今回のアルバムに相応しかったので、"No.9"にしました。vistlipにとっても音楽業界そのものにとっても、今はたぶんとても大きな転換期でもありますから、このアルバムを作っていくことで過去と現在と未来について考える必要があったんです。

-ところで、3月28日からはツアー"Good vibes CIRCUIT ZERO"も始まりますが、こちらでも『No.9』の楽曲たちは聴かせていただけるのでしょうか。

Tohya:いや、音源発売記念ツアーとかではないので、必ずやるとも限らないですね。

海:"Good vibes CIRCUIT"っていうもの自体はコンスタントにやってきているもので、コンセプトやリリースに縛られずに、自由にライヴを楽しみましょうというスタンスでやっているシリーズなんですよ。

Tohya:各メンバーが日によってセットリストを独断で考えたりね。

海:これのときはいつも衣装っぽい衣装も着ないし、物販で売ってるTシャツとか、自前の私服とかでやるんですよ。衣装とかメイクっていうのはあくまでも音楽や作品を演出するためのものだから、コンセプトに縛られずに、純粋に音楽を楽しみたいってなったら僕らとしては着飾った衣装はいらないんです。Tohyaなんて、たまたまツアー先で買ったご当地土産みたいなTシャツ着てることあるもんな(笑)。

Tohya:あれ、ちゃんと自分で買ってるからね(笑)。

智:普段はコンセプトや見せ方もガチガチに固めてるだけに、すべてそこを取っ払って、vistlipとそのファンで純粋に熱く音楽を楽しもうという場なんですよ。

海:普段のツアーだと衣装もメイクもガチガチなので、"やっぱヴィジュアル系だよなぁ"って言われちゃうと思うけど、そういう意味では次のツアーは激ロック読者向けですね(笑)。良かったらぜひ来てください!