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INTERVIEW

ナノ

2020.03.13UPDATE

2020年03月号掲載

ナノ

Interviewer:吉羽 さおり

怒りが自分の原動力になって、プラスのエネルギーに変わったんだなって、今は思う


-デビューする前に、自分がどういうシンガーでありアーティストになりたいかというヴィジョンは、具体的に思い描いていたんですか。

自分は、こうであるべきっていうのはもしかしたらあったかもしれないですけど、でもそれがたぶん正解ではなかったんだと思うんです。だから、どんどんぶち壊されていって。自信喪失もしましたし、自分が思っていた自分とは全然違う方向にいっているけど、これで大丈夫なのか? とか不安な気持ちもいっぱいあったし。でも今振り返ると、全部ぶち壊されて良かったなって思うんです。今の自分が正解かって言ったら、それも正解ではないと思うんですけど、確実に今ここにいて、ベストにたどり着けたことは間違ってなかったなっていうことだけはわかりましたね。

-デビュー後の最初のターニング・ポイントはなんだったと思いますか。

デビュー後で考えるとなんだろうなぁ。初めて、自分の殻を無理やりぶち壊さなきゃいけなかったのは、MY FIRST STORYとのコラボレーション(2013年リリースの3rdシングル『SAVIOR OF SONG』)だったかもしれないですね。誰かと一緒に何かを作るというのは、調和でもあるし、自分を壊さなきゃいけない部分っていうのがちょっとあって。それが最初は、どうやったらいいかわからなくて、すべてにおいてぎこちなかったと思います。相手とのコミュニケーションもそうだし、一緒にレコーディングをするとか、MVを一緒に撮ることも、自分に違和感を覚えてぎこちなかったし、自分が気持ち悪いと思いました。

-ちゃんと"自分"になれていない感じが。

自分自身がマジでキモいって思っていて(笑)。その悔しさは、そのあともずっと残っていたんです。いい作品を作るために精一杯尽くして、結果として、作品としては成立しているんですけど、自分自身はずっと悔しくて。その悔しさを、払拭するために成長しなきゃって思って。次にまたこういう機会があったら、もう二度とこんな悔しい思いをしたくないっていう。で、2019年にいろんな対バンをしたり、コラボレーションをしたりしたときに、これはリベンジのチャンスだなって思っていたんです。

-曲単位ではどうですか、思わぬものを引っ張り出されて、自分にとって大きな曲になったものはありますか。

わりと最近のことで、「KEMURIKUSA」だったかもしれないですね。それはただ単に激しい曲だからとか、レベルが高いからというわけではなくて。この曲ではアニメ作品の監督とゼロの段階から打ち合わせをしたんですけど、曲の世界観とか何もない段階から監督と会って話し合うというのは、この作品が初めてだったので、そういうのも新鮮だったし、そのぶんハードルも上がったんですよね。

-そこでも一緒に作っていくという作業が始まるわけですもんね。

まず、相手の期待度もそれだけ上がりますしね。ゼロから作るということで、向こうも思いが曲にも込められるし、一緒に作っている感がよりあったから。自分自身も、思い入れが深い作品にもなりましたね。あとは、もともと"ケムリクサ"という作品自体は存在していたもので、はっきりと"ケムリクサ"のファンがいたんです。その人たちにどうやって触れたらいいんだろう、その世界観にナノの曲をぶっ刺して大丈夫かなみたいな。

-作品の音楽として提示するだけに、役割としても大きいですよね。

特別この作品のファンたちは熱かったので、その火の元を手でアチアチアチってしながら、その中に自分の曲という燃料を入れていくことになるんだなって。でもね、これはやってみて幸せしかなかったですね。

-そのあとの反響も糧になった。

こんなにうまくいっていいのかなと思うくらい、いい反響しかなったし、自分のファンとアニメ"ケムリクサ"のファンたちが、交流している姿も見えたし。みんなお互いを讃えあって、友情というか絆が感じられたので。

-ひとつの曲が、そうやっていろんな形で結びつきを生んでいくことを実感するのは大きなものですね。

そうですね。この時代は境界線を越える時代だなって思って。昨年はいろんな意味で、どんどん境界線を、概念をぶち壊していく1年になったなと。