INTERVIEW
摩天楼オペラ
2013.12.04UPDATE
2013年12月号掲載
Member:苑 (Vo) 彩雨 (Key)
Interviewer:荒金 良介
-なぜそうしようと?
苑:う~ん、今ドラムの悠がライヴで叩けないので、袖で見守ってくれてるんですよ。で、メンバーみんなをステージに送り出すときに、"摩天楼オペラは希望を届けるバンドだ!"と言ってくれたんですよ。そのときに確かにと思って、次の作品は希望をテーマにしたいなと思って。いままでのように明るくても最後は悲しくなる歌詞じゃなくて、聴いてる人の心が温かくなる歌詞を書きたくなって、それで「Orb」が生まれました。
-悠さんの言葉が心に響いたと。
苑:よくぞ言ってくれた!と思いました。自分自身のことって、人から言われないと、わからなかったりするじゃないですか。悠が外から摩天楼オペラのライヴを観るようになって、俯瞰で自分のバンドを見れるようになったんでしょうね。そこから出てきた言葉だからこそ、残りのメンバー4人もそうだなと思えたんですよ。俺らのライヴは今、オーディエンスに希望を届けてるよね、というのが実感としてハマッたんですよね。そういう流れです。
-きっかけは悠さんの何気ない一言だった?
苑:きっと何も考えずに彼は言ったのかもしれないけど(笑)。
-その言葉をどういう理由で発したのか、改めて聞かなかったんですか?
苑:いや、特に。みんないいこと言うねえって(笑)。
彩雨:すんなり納得しちゃいました。特にヴィジュアル系って、絶望的な表現をする人も多いじゃないですか。ウチらもそういう曲は多いけど、その中で希望を押し出せるようになったのは、ひとつ成熟できたからじゃないかな。
-そういう意味では歌詞も曲調も完全に振り切ってますよね。
苑:そうですね。歌ってても心が開きますからね。今の摩天楼オペラは、ライヴに来た人みんなが笑顔になって帰ってほしいと思ってるんですよ。だから、CD聴いても暗い気持ちになるんじゃなくて、元気になってくれたいいなと。
-「Orb」の歌詞を書く上で、照れや恥ずかしさはなかったですか?
苑:えっ、どういうことですか? ないです、全然。
-"おやすみのキスをしたら"という歌詞がスッと心に響く人もいれば、ソフトすぎると思う人もいると思うんですよ。
彩雨:5、6年前だったら、そう思ったかもしれない。
苑:昔だったら、もっと恋愛的な意味で使っていたかもしれないですね。これは自分の妻や子供に向けた歌詞だから、そういう意味でも僕の歌詞の価値観も変わってきたのかなと。
-歌詞を読むと、実体験から生まれてきたんですか?と聴きたくなる内容なんですが。
苑:それは違います。
彩雨:ははははは。
-今、自分の妻や子供に向けた歌詞と言いませんでした?
苑:あっ、それは主人公になりきって言いました(笑)。
-あっ、そうでしたか。
苑:僕は未婚ですし、子供もいませんから。きっと子供ができたら、こういう愛情が芽生えるんだろうなという予想の元に書きました。
-無駄のないまっすぐな言葉選びで、すごくリアリティがあります。
苑:周りが結婚したり、子供も生まれてるから、意識してないけど、今回の歌詞みたいなものも書けるようになったのかもしれない。
-「Orb」の歌詞はスッと書けました?
苑:いや、時間はだいぶかかりましたね。1回できて、これは違うなと思って、二転三転して、この歌詞になりました。最初はもっと歌詞の世界観が広かったんです。地球規模というか、全世界を希望だらけにして、次の世代に渡そうぐらいの大きさだったんですよ。でもそれだと壮大すぎて、伝えたいことがわからなくなるなと。それでいち人間の愛情に世界をギュッと絞った感じです。
-世界平和と叫ばれてもあまりピンと来ないこともありますが、1人の人間の深い思いが伝わってきます。例えば結婚式で新郎新婦が自分の両親に向けて手紙を読むシーンは、第三者が聞いてもグッと来るじゃないですか。
苑:そう受け取ってもらえると、嬉しいです。書いていたときに想像していた通りの感想です。
-前作『喝采と激情のグロリア』は合唱をテーマにして、より多くの人を巻き込んでいくアプローチでしたよね。今回はそれとは真逆というか、フォーカスがギュッと絞られてますよね。根っこにある感情は同じだと思いますが。
苑:ああ、そうですね。ファンの子もそう感じてもらえるかもしれない。