LIVE REPORT
the GazettE
2021.12.23 @東京ガーデンシアター
Writer 杉江 由紀 Photo by Keiko Tanabe
何人たりとも消すことなどできないthe GazettEの灯す火は、今宵その空間の中を確かに明るく照らしていた。ある種の絶望を超えたその先で、未来と希望の光をたずさえたthe GazettEが、ようやく私たちの目の前に再び姿を現すことになったのだ。
何しろ、この2年近くの間にthe GazettEがたどってきた道程は、決してなだらかなものだったとは言い難い。まずは、2020年3月10日に予定されていた、武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナでの18周年記念ライヴ"18TH ANNIVERSARY DAY/6576"が、コロナ禍発生によって中止となり、その後の彼らは活動の場を水面下へと移行させて制作活動を開始。配信ライヴなどの動きは一切見せることのないまま、2021年春には3年ぶりにして10枚目となったアルバム『MASS』を発表したものの、かといってアルバム・ツアーの類が開催されることはなかった。その代わり、そのあとの9月から11月にかけては、東名阪にて"LIVE 2021 -DEMONSTRATION EXPERIMENT- BLINDING HOPE"と題されたライヴが久しぶりに開催されることになったのは良かったのだが......なんと、11月1日に予定されたファイナルの東京ガーデンシアター公演が、メンバーの体調不良によって、公演当日に急遽延期となる憂き目にあってしまう。
それだけに、今宵ようやくその振替公演の当日を迎えられることになったという歓喜と感慨は、the GazettEと彼らを愛する人々にとってよりひとしおなものとなっていたと思われる。歌詞中に"Blinding Hope/消せぬ灯よ"という一節が含まれている「BLINDING HOPE」は、アルバム『MASS』の実質的な1曲目であり、今回のライヴ・タイトルにも曲名が冠されているほど今のthe GazettEにとって大切で重要なものとなるが、まさにその楽曲から、完全復活へと向けたライヴがこうして威風堂々と始められたということは、この場に希望の光が戻ってきたことを意味していたように感じられた。
"待たせたな、お前ら! マジで心配かけました。見ての通りピンピンしてるから安心しろよ。今夜は俺も全力で暴れてくからさ、お前らも全員暴れてってくれよ! やれんのか東京! 気合入れてかかってこい!!"
かくして、この夜のライヴでは、REITA(Ba)の発する重いフレーズが心地よいグルーヴを生み出していた「NOX」、戒(Dr)がタフなプレイを聴かせたラウド・チューン「HOLD」、葵と麗がともにアコースティック・ギターを取り入れたプレイで聴衆を魅了してみせた「LAST HEAVEN」、RUKIが力強い歌で歌いあげてみせた「THE PALE」と、アルバム『MASS』からの楽曲を交えながら、彼ら5人の放つ生音に飢えていたファンの心と身体を、存分に満たしていくことになったと言っていいだろう。
ただ、その一方で今回のライヴにおいては、"DEMONSTRATION EXPERIMENT"とタイトルに付けられていたせいもあるのか、アルバム『MASS』収録曲がすべて披露されたわけではない。そこは、いずれアルバム・ツアーというかたちで別途の機会が設けられることを願いたいものだが、その前にこの場では、「TOMORROW NEVER DIES」などを筆頭に盛り上がりに盛り上がったアンコールのあと、2022年3月10日に国立代々木競技場 第一体育館にて"20th ANNIVERSARY -HERESY-"が開催されることが告知されたことも付記しておこう。
何人たりとも消すことなどできないthe GazettEの灯す火は、20年の時を超えてここからさらにその輝かしさを増していくに違いない。
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