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LIVE REPORT

Welcome to INFERNO -supported by 激ロック-

2018.08.31 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 菅谷 透

8月31日に激ロックプロデュースのライヴハウス、下北沢LIVEHOLICにてライヴ・イベント"Welcome to INFERNO -supported by 激ロック-"が開催された。この日はASTERISM、Rie a.k.a. Suzaku Special Band、D_Driveの技巧派3バンドが出演。満員の会場にそれぞれが持てるテクニックを惜しげなく披露する、白熱の一夜となった。

この日の口火を切ったのは、平均年齢16歳の3ピース・ヘヴィ・メタル・インスト・バンド、ASTERISM。8月22日に待望の1stフル・アルバム『IGNITION』をリリースしたばかりということもあって、開演前から会場はほぼ満員と言ってもいいほどの観客で埋まっており、注目度の高さが窺える。そんなフロアをかき分けてメンバーがステージに姿を現すと、早くも歓声が巻き起こった。HAL-CA(Gt)が両手を広げながらステージ最前にあるモニターの上に立ち、挨拶代わりに「Light In The Darkness」冒頭の流れるような高速シュレッドをお見舞いすると、入れ替わりに前に出たMIYUが今度はヘヴィなベース・リフを叩きつける。MIO(Dr)のパワフルなサウンドも加わったアンサンブルは、3ピースとは思えない厚みだ。HAL-CAがテクニカルなフレーズを弾き倒し慟哭のサビメロを鳴らすと、MIYUが7弦ベースならではの高音域でリード・プレイを披露。曲名のとおり、暗闇の中にひと筋の光が差すような力強さで会場を圧倒した。

MCではまだ10代らしいあどけなさも感じられ、演奏とのギャップで観客を和ませたが、"ついて来れんのか!"というHAL-CAのひと言でDIOのカバー「Stand Up And Shout」を投下。一糸乱れぬヘドバンも披露し、再び熱量を上げていく。矢継ぎ早に放たれた「Warning」ではHAL-CA、MIYUの焦燥感を煽るトリッキーなプレイとMIOの迫力あるツーバスで、フロアを熱狂の渦に巻き込んだ。それにしても、これだけテクニカルなプレイを披露していながら、観客ひとりひとりに挑みかかるような視線を投げ掛け、ステージを自在に動き回る余裕のパフォーマンスぶりには本当に恐れ入る。

続いてのMCでは、"1stフル・アルバムから最も長い曲を披露します"とのHAL-CAの言葉にフロアからどよめきが起こる。アルバムの中でもひと際異彩を放つ、DREAM THEATERの向こうを張るような10分近くの大曲「DAWN」だ。薄暗い照明が灯りスモークが立ち込めるなか、幽玄なベース・アルペジオにクリーン・トーンのギターが絡んでいき、徐々にヘヴィなリフへと流れ込んでいくイントロからもう鳥肌が立つ。MIOが自在にリズムの変化をつけ、フィルインからHAL-CAが緊迫感溢れるサビメロを奏でていく。目まぐるしく変わる展開が心地よい。中盤に差し掛かると、MIYUが少しはにかみながらセンターに立ち、タッピングも駆使したベース・ソロを披露。優しげな音色でフロアを満たしていき、そのままHAL-CAが感情むき出しに弾き倒す、長尺のギター・ソロへと移り変わる。開放感溢れるフレーズに淡いライティングも相まった、まさに夜明けのような清々しさで会場に余韻を残していった。

後半戦では、疾走感に満ちたメタリックなショート・トラック「Midnight Hunter」を叩きつけると、続いてTHE BEATLESのカバー「Helter Skelter」を披露。HR/HMの元祖とも称される原曲を、今のシーンを突っ走るASTERISMらしいテクニカルなフレーズで彩ったナンバーに、フロアからは無数のメロイック・サインが掲げられ、サビでは"Helter Skelter"の合唱まで巻き起こった。最後に披露されたのは1stフル・アルバムのオープニング・トラック「BLAZE」。"業火"を意味するこの曲は、ライヴのタイトル"Welcome to INFERNO"になんとも相応しい。ダイナミックな展開とエモーショナルなフレーズでフロアのテンションは最高潮に達し、大歓声のなかステージを豪快に締めくくった。

40分足らずのステージだったが、観る人に鮮烈な印象を焼きつけるライヴだったことは間違いないだろう。アクト終了後、ステージから降りていくメンバーたちへ向けられる拍手の大きさが、それを物語っていた。

続いてステージに登場したのは、ソロ活動やRiViNiなどのバンドでも活躍する女性ロック・ギタリスト&コンポーザー、Rie a.k.a. Suzaku率いるスペシャル・バンドだ。深井麻梨恵(Key)、芹田ジュナ(Ba)、RiViNiでも共に活動するViVi(Dr)というメンバーに、涼しげなビキニ・トップのRie a.k.a. Suzakuがセンターに姿を現す。1曲目は爽快なギター・フレーズが印象的な「Southern Wind」。8月の終わりでまだ残暑の厳しいなか、ニコニコと笑顔を浮かべながらRie a.k.a. Suzakuが奏でる爽やかなメロディが会場に響きわたっていく。ステージと観客の近さに"ギターを刺さないか心配"と茶目っ気のあるMCをしつつ、「Sunrise」では淡いピアノ・フレーズの上で情熱的なメロディを聴かせる。続いてはパワー・メタル調の自称"暑苦しい曲"、「Kingdom of the Sun」を演奏し、テクニカル且つメロディアスなソロや、キーボードとのハモりに拳が突き上がる。前半のインスト曲セットの最後は、縦ノリのリズムが心地よい「Across the Sky」。ベース、ドラムのソロ回しも披露され、ギターとキーボードとのスリリングなバトルで会場も熱気を帯びていく。その熱を保ったまま、REASTERISKのヴォーカリスト NANAがステージに登場し、「Desire」からヴォーカル有りの楽曲を演奏していく。NANAが観客を煽りながらパワフルに歌い上げると、Rie a.k.a. SuzakuもVシェイプのギターを膝に立てて豪快な演奏を見せる。続く「Dreaming Eyes」では"頭振ってけ"とNANAがアジテートし力強い歌声を響かせると、最後は青木コータ(KOLDRYDE/快進のICHIGEKI)がオリジナルを歌うメロデス・チューン「Don't Hide Your Face」を女性ヴォーカルで披露。幅広い活動を行うRie a.k.a. Suzakuならではの、前半と後半で異なる色を見せたステージに、フロアも大盛り上がりだった。

この日のトリを飾ったのは、SeijiとYukiのツイン・ギターを擁する、インストゥルメンタル・ハード・ロック・バンドのD_Driveだ。ソリッドなギター・リフから1曲目の「Attraction 4D」が始まると、メロディアスなフレーズから速弾き、タッピングのハモりまで、緩急自在の息の合ったツイン・リードで早くも会場を惹き込んでいき、フロアからは呼応するように拳が突き上がる。"準備はいいですか!"のひと言でドロップされた「M16」では、Chiiko(Dr)の繰り出すダンサブルなビートの上でメロディが流麗に奏でられていく。今年4月に新メンバーとして加入したToshiyuki(Ba)も安定感あるプレイでバンドの屋台骨を支えつつ、笑顔と激しいステージ・アクションを絶やさないのが好印象だ。雨のSEとともに披露されたバラード「Unkind Rain」では、スローなリズムに絡み合うアルペジオとエモーショナルなリードが大きなうねりとなって観客を揺らしていく。続いてのハード・チューン「The Last Revenge」は、荒々しく叩きつけられるツーバスと同期して点滅する照明が合わさり、深夜の高速道路をかっ飛ばしているかのような強烈な疾走感で、まさにバンドの掲げる"Driving Rock"を体現しているようだ。MCでは関西出身のバンドらしいきれいなフリとオチで会場の笑いを誘い、ここでも抜群のコンビネーションを見せつける。プログレッシヴなナンバー「Russian Roulette」ではキメのリズムに合わせて観客に手拍子を促し、一体感を高めていく。本編の最後には、アグレッシヴなツーバスの連打とバウンスしたリフが特徴的な「Screw Driver」をプレイ。大歓声を受けてのアンコールでは明るいテイストのロック・ナンバー「Cassis Orange」を放ち、タッピングと高速シュレッドの応酬で、技巧派たちが集結した熱狂の一夜を締めくくった。

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