LIVE REPORT
the GazettE
2017.03.10 @国立代々木競技場第一体育館
Writer KAORU
2017年3月10日、"十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」"と題されたライヴが国立代々木競技場第一体育館にて行われた。約1万3千人のファンが集った特別な公演の模様をお伝えする。
客席後方からまっすぐに伸びる眩しいライトがステージを貫き、桜吹雪の美しさに圧倒されて大きなどよめきが起きる。ステージの両端から"大日本異端芸者"、"暴動区 愚鈍の桜"のタイトルが記された大きな垂れ幕が上がってくる。腕章を付けた白い軍服調の衣装を身に纏い、階段から降りてくるメンバーを大きな歓声が迎える。ここまででも、ものすごいヴィジュアル・インパクトだ。
1曲目は「貴女ノ為ノ此ノ命。」からスタート。縦ノリのリズムに合わせて会場が大きく振動する。異端時代の代表曲だが、こうしてライヴで聴いていると『DOGMA』やここ数年のラウドロック的なアプローチとは違う響きが新鮮に聞こえる。(この曲だけ少し構成を解析してみたいと思う)イントロ2音目で使われるセブンスコードが広がりのあるドラマチックな響きをもたらし、Aメロで繰り返される麗のギター・フレーズとRUKIの歌はカラッとした雰囲気だが、Bメロでは下降していくラインに象徴されるように全体に悲壮感が漂っている。そこから展開するサビは、マイナー・コードを保ちつつ小気味よく歌うRUKIのメロディと、REITAのうねるベース・ラインが際立って全体がパッと明るくなる。ギター・ソロから間奏の経過音にディミニッシュコードを用いて独立した不穏な場面を演出し、"貴女を見てる「脳が」"の後ろ3小節半のリズムをアクセントにして大胆にサビへ展開する。シンバルの残響を活かしたキレのいい戒のドラムと葵のヴォイシングを基盤として、REITAのベース・ラインと麗のギター・フレーズをと引き立たせるというツイン・ギターならではの構成を駆使した絶妙なアンサンブル、ウェットとドライを使い分けてシアトリカルに歌い上げるRUKIのヴォーカル。フックに用いるコード感や展開のさせ方はラウドロックの系譜ではあまり見かけないし、歌詞や歌い回しも含めて"ヴィジュアル系ならでは"のサウンドであり、なおかつバックボーンにハード・ロックがあることを納得するダイナミズムも共存している。全体的に歌謡曲テイストと言われているが、それにしてもかなり捻りが効いている。異端時代のthe GazettEのオリジナリティが凝縮された1曲だろう。そのハード・ロック感とニューメタルの要素を取り入れた疾走感のある「舐~zetsu~」、「十四歳のナイフ」ではドラムのアクセントに合わせてRUKIが左右で手を叩くパフォーマンスも披露される。その姿は全力ながらも恥ずかしそうでもあり、歓喜の声を上げながら同じ動きをしてみせるファンの姿もかわいらしかった。
シュールな雰囲気のコード感と縦に刻まれるリズムがヒリヒリした緊迫感を放つ「センチメンタルな鬼ごっこ」、日本古謡「さくらさくら」を引用した不吉な旋律の歌が先導しパンキッシュな2ビートになだれ込んで激しくなっていく「Back drop Junkie[nancy]」、妖しい色のライトに照らされて奏でられる葵のギターの音に呑み込まれそうな錯覚に陥った 「Sugar Pain」。この3曲の音像とヴィジュアルは、本公演を象徴づけるものとして強く記憶に残っている。"the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC FINAL -漆黒- LIVE AT 02.28 国立代々木競技場第一体育館"公演時のダークさとも趣が違い、100人規模のライヴハウスだからこそ映える表現でもあった密室的なサウンド、その密室感のニュアンスを損なわずに、大規模な会場で再現し進化させていた5人の演奏にとても感服させられた。ヴィジュアル系黎明期の90年代初期を彷彿させるものでもあり、ラウドロック的なヘヴィネスとは方向性が違ってグルーヴを出しづらい音像ではないかと思うが、適度なシャリシャリ感のある音色も絶妙だった。どう身体を動かしたらいいか戸惑っている人も多かったが、この密室的な異端時代のサウンドを体感できたのは貴重なことだったのではないだろうか。
ボトムの重さに迫力がある「蜷局」、そして「飼育れた春、変われぬ春」と「Last bouquet」 では、当時の青さのようなものも感じられ、美しく儚いメロディにひたすら聴き入ってしまった。このメロディに相反するかのようにソリッドに刻まれるリズムというのも、またヴィジュアル系然としていてかっこいいのだ。
ピアノのイントロが鳴り響くと歓声が湧き、先日リリースされたバラード・ベスト『TRACES VOL.2』の再録バージョンで「Cassis」が披露される。RUKIはギターをかき鳴らしながらしっとりと歌い上げ、恍惚感に溢れる麗のソロが郷愁を誘いながらも、優しく会場を包み込んでいた。葵のアコースティック・ギターとジャジーな雰囲気を効果的に彩る照明も秀逸だった「ザクロ型の憂鬱」が演奏されたのち、ドスの利いた声でRUKIがMCを入れる。
"今日はさ、いつもと違う曲ばっかりやってるけど、お前らノリがわかんねぇんだろ? 思い出そうとしてもどんどん先いっちゃうから(笑)。アタマ使ってんじゃねーよ! いつものお前ららしくないんじゃない? 突っ込んでこいよ! 派手にやろうぜ!!"
ここからは暴れ曲のオンパレード。戒の跳ねるリズムとREITAのチョッパー・ベースとソリッドなギターがグルーヴィで、ラップ・パートも含めてニューメタル以降のミクスチャーを彷彿させる「COCKROACH」でファンのジャンプが会場中を大きく振動させる。続けて披露された「ワイフ」がスタートすると戒のツーバスに合わせてRUKIが煽り、ファンと掛け合いの応酬を繰り広げる。ヘヴィなリフと冷たさを感じる間奏部分のコントラスト、そこから展開ごとに爆発させていく様は圧巻のひと言。"I am Ruder!"という声と同時に麗がロックンロールなリフをかき鳴らし、「Ruder」になだれ込む。サビ終わりでRUKIから煽られ力強くベース・ソロを弾くREITAの姿、テンション高くステージを駆け回りセンターに来た麗に、葵がチュッとキスする場面も素敵すぎた。疾走感のあるパートからヘヴィにドロップして展開を重ねていく「The $ocial riot machine$」、そしてラストの「関東土下座組合」でのぐっちゃぐちゃっぷりも凄まじく、その光景の何もかもが素敵すぎだった。ジーンときてしまった。
アンコールで再びメンバーがステージに登場し、戒はファンに向かって"楽しいね! まだ身体が動いてないな。復習しろって言っただろー"と気合を入れ直し、生声で"かかってこい!!!"と会場中に声を響かせると、「泥だらけの青春」がプレイされる。ダンサブルなリズムに乗って踊りながら麗の太ももをいじったり、「「春ニ散リケリ、身ハ枯レルデゴザイマス。」」で全力の振りをしながら歌ったりするRUKIの姿も印象的で、とにかく今日はメンバー5人の全身から幸せ感が満ち溢れていた。
"大日本異端芸者"の名を心に刻み、これからも変わらずに誇りを持ってヴィジュアル系でやっていくということ、the GazettEというバンドとファンを心から誇りに思っているということ。"俺たちはお前たちを離したりしないから。愛してます"という言葉をもってラストに「未成年」がプレイされると、"大日本異端芸者 暴動区 愚鈍の桜"のタイトルが刻まれた銀テープとたくさんの桜吹雪が舞い散った。
男泣きについて語るのは無粋だろう。結成15周年という節目に"異端"というコンセプトを掲げ、ヴィジュアル系バンド the GazettEの根幹にある音楽性と精神性をたっぷりと味わうことができた貴重な一夜だった。
[Setlist]
1. 貴女ノ為ノ此ノ命。
2. 舐~zetsu~
3. 十四歳のナイフ
4. センチメンタルな鬼ごっこ
5. Back drop Junkie[nancy]
6. Sugar Pain
7. 蜷局
8. 飼育れた春、変われぬ春
9. Last bouquet
10. Cassis
11. ザクロ型の憂鬱
12. COCKROACH
13. ワイフ
14. Ruder
15. The $ocial riot machine$
16. 関東土下座組合
-Encore-
17. 泥だらけの青春
18. 赤いワンピース
19. 「春ニ散リケリ、身ハ枯レルデゴザイマス。」
20. ☆BEST FRIENDS☆
21. LINDA~candydive Pinky heaven~
-W Encore-
22. 未成年
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