LIVE REPORT
the GazettE
2016.09.27 @幕張メッセ国際展示場ホール10
Writer KAORU
2016年9月27日、1年という長い歳月をかけて行ってきた『DOGMA』ツアーの千秋楽"the GazettE STANDING LIVE TOUR 16 GRAND FINALE DOGMA-ANOTHER FATE-"が、幕張メッセ国際展示場ホール10にて開催された。"無償の権利を"と題された本公演は、アルバム『DOGMA』の完全生産限定盤にシークレットで封入されていた"GOLDEN TICKET"を、2月28日に国立代々木競技場第一体育館にて行われた"LIVE TOUR15-16 DOGMATIC FINAL「漆黒」"でエントリー・カードに引き換え、エントリーした人のみが参加の権利を得られるというプレミアムなフリー・ライヴ。2月にスタンディング・ツアー開催のお知らせとともに"都内某所にて"とアナウンスされ、5月に幕張メッセ国際展示場ホール10で敢行することが明かされた。
前述の代々木第一公演のライヴ・レポートも以前お届けしたが、そこから本公演までの間に、the GazettEは初の北米上陸を含む15公演のワールド・ツアーを敢行し、大成功を収めたことを各メディアが報じている。そして7月6日の豊洲PITを皮切りに、10公演のスタンディング・ツアーを敢行してきた。
幕張メッセといえば、"SUMMER SONIC"を始め"OZZFEST JAPAN"、"KNOTFEST JAPAN"、"PUNKSPRING"など数々のフェスが行われ、ライヴ文化ゆかりの地であるが、国際展示場ホール10だけでもキャパシティは数千人規模。さらに、限定された人のみが入場できるという状況でほぼ満員なのだから、さすがである。
ライヴ前のBGMは、メンバーのお気に入りの音楽が流れていることが多いので楽しみのひとつなのだが、今回はLIMP BIZKITやTAPROOTなど往年のラウドロックが流れていた。
ライヴ開始直前のアナウンスが始まり、"the GazettEからのプレゼントです"という言葉に大きな歓声が沸く。「NIHIL」が流れる中メンバーが登場し、不穏な旋律が会場に広がる。「DOGMA」からスタートし、そのうごめくような重低音に鳥肌が立つ。不吉な導入部から漆黒の世界へと誘う"闇を纏い"という歌と同時に照明が暗転し、RUKI(Vo)にスポットが当てられる。前半の抑制的な横ノリのグルーヴから中盤の三拍子が起点となって縦のグルーヴが強調される緻密なアンサンブルと、デス・ヴォイスとメロディ(クリーン・パート)という対比手法を変幻自在に操り、なおかつ二元的な様式では到底くくれない"歌"が融合した独特のグルーヴが、今日はより一層生々しく感じられる。演奏の抑揚によってファンのヘドバンの激しさが変わっていく光景も圧巻で、ホール・ツアーの中盤あたりではまだ静かに観ている人が多かったことを思い出すと、ツアーが進むにつれてバンドの演奏/表現のスキルが成長していくとともに、ファンも"音に共鳴する"という自分なりのノり方を獲得していき、その波が大きく浸透していったのではないかと感じられる。これは"DOGMATIC"でバンドとファンが共有した大きな収穫のひとつだったのではないだろうか。
"幕張ー! 思いっきり暴れていこうぜー!"という声を皮切りに「RAGE」、「DAWN」と高速チューンが立て続けにプレイされる。なんとも凄まじい迫力だ......。曲中に"飛んでこいバカヤロー!"、"かかってこい!"と何度も煽り、ボルテージを高めて解放感を促す。この2曲に関しては、ざっくりしたノリや音の詰め込み具合という意味でSLIPKNOTやSYSTEM OF A DOWNなどを彷彿させるが、the GazettEの場合はどんな轟音の中でも各パートの音が埋もれずにくっきりと聞こえてくる。日ごろからメタルコアなどを含むラウドロックに聴き慣れている筆者は、ギターやベースのパートを細かく聞き取ることより、全体で鳴らされる重低音のグルーヴとフックに焦点を当ててしまう性があるのだが、特に麗と葵のギターの音色はアメリカンなラウドロックのような土臭さのある粗さとも違うし、やたらとクリアな今時のメタルコアっぽいものとも違う。とても絶妙な音色なのだ。チューニングを下げても7弦ギターを使用していないということも理由のひとつにあるかもしれないが、単純にここまで現代的なラウドロックのノリを把握しグルーヴを前面に出しながら、低音に埋もれない音色でふたりの個性的なフレーズを際立たせるバランス感覚に唸らされる。REITA(Ba)と戒(Dr)によるリズム隊の軸もライヴを重ねるたびに強固になっていて、アクセントが際立ち迫力とパワーを増幅させている。RUKIは様々な歌唱法を変幻自在に操り、スタンディング・ツアーが始まってからはより生々しい感情を落とし込んだ歌い方へシフトしたように感じる。
"ここにいるのはGOLDEN TICKETを持っている人たちだけということで、みんな相当なイカれもんだと聞いています"というRUKIらしいツンデレなMCのあと、ドスの効いた声で"気合入れてかかってこい!"と言い放つと、「GABRIEL ON THE GALLOWS」、「VENOMOUS SPIDER'S WEB」とダンサブルなチューンがプレイされる。葵はお客さんに向かって手を突き出すようなポーズを見せ、REITAはステージ中央に、麗は下手へと動く。戒にスポットライトが当たる瞬間もあり、雰囲気が一転してアッパーなお祭り空間となる。ソリッドでヘヴィな「CLEVER MONKEY」まで一気に駆け抜けると、しばし間を空けて「BIZARRE」がプレイされる。あくまで主観であるが、この曲はライヴを観るごとにいい意味でのブレを感じることが多い。代々木第一公演では映像の演出効果と合わせてディストピアな世界観を追求するような演奏だったとしたら、今日はディストピアの中で生きているメンバー自身の感情がより剥き出しになっている演奏という印象だ。「DEUX」に続き、「OMINOUS」では叙情的な旋律を悶えるような動きと表情でプレイし、スネアのパーン! という音とともにミラーボールが回り会場が幻想的な空間に染まる美しい光景が広がった。