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INTERVIEW

RYUJIN

2024.05.09UPDATE

2024年05月号掲載

RYUJIN

Member:Ryoji(Gt/Vo)

Interviewer:米沢 彰

10年以上背負い続けてきたバンド名 GYZEからその名を昇格させたRYUJIN。ヨーロッパ・ツアーを成功裏に終え、満を持してニュー・アルバムをリリースするのに併せたバンド名の昇格からは、世界を舞台に戦う姿勢がはっきりと感じられる。Matthew Kiichi Heafy(TRIVIUM/IBARAKI/Vo/Gt)をプロデューサーとして迎えた経緯や制作の様子、それぞれの楽曲に込めた思いなど新作についての話を中心に、今のRYUJINの最新の姿を、バンドの制作の中核を担うRyojiに訊いた。


クリーン・ヴォーカルの使い方とか、いつもだったら入れない曲が収録されているのはMatthewのおかげ


-まずはバンド名をRYUJINと改めた意図からうかがえますでしょうか?

GYZEはちゃんと発音されない問題がずっとあって、"ガイズ"とか"ゲイズ"とか呼ばれたり。実は前作の『ASIAN CHAOS』(2019年リリースの4thアルバム)のときもそういう話が出てはいたんですけど、コロナ禍でリリースの活動だけになってたところから、いよいよフル・アルバムをっていうときにちょうどTRIVIUMのMatthewと出会って、Matthewともその話になったんですよね。まだ話をしたりする前に、Matthewが自分のTwitchの配信で僕らの紹介をしてくれていたんですけど、そのときも"ガイズの「SAMURAI METAL」(2021年1月リリースの配信シングル)"って言ってて。知り合ってから"実は読みが違うんだけど、呼びづらいよね"みたいな相談を最初のほうにしたら"たしかに"ってなって、Napalm(Records)と契約するときにもRYUJINの名前で契約したいっていう話をしました。僕の感覚としてはバンドに変わりはないし、わかりやすいところで漫画"BECK"の(作中のバンドの)海外での活動名が違う(※海外ではMongolian Chop Squad)けど日本に戻ってきたらBECKっていうぐらいの感覚で。あとは、RYUJINって名前は僕の名前のRyoji(竜司)からも来ていて、音楽的な雰囲気ともシンクロ度合いが強まるかなと。みなさんが思ってるよりは意外と軽い感じに聞こえてしまうかもしれませんが、とはいえやっぱりGYZEで10年以上続けてたんでね、いろんな思いはありました。

-なるほど。今バンドとしてやってることがすごくわかりやすくなったと感じる一方で、今までのキャリアが埋もれてしまうというリスクもあるようには感じました。

うーん、今ってやっぱネットも優秀だから、GYZEって検索したらちゃんとRYUJINが出てくるんですよ。サブスク周りはGYZEとRYUJINが分割されてしまってたり、日本では聴けないなどのトラブルはありましたけど、今月ぐらいにそれもやっとひとつになって。そのへんの技術的な面はある程度ありますけど、それ以外はそこまで実はない感じがしていますね。

-"Ettore(Rigotti)ワークス! 逆輸入バンド!"という触れ込みで鮮烈なデビューを果たしてた当初は叙情的なメロデスをより洗練させて提示することを目指していたように感じていましたが、今作ではハードコア的な要素も入ってきたり、また新しい方向性を模索しているようにも感じられました。これまでのGYZEとしての作品からの変化をご自身ではどのように捉えていますでしょうか?

僕個人としては常に勉強してるしアップデートしていってるんですけど、過去のものは失われてはないんです。だから最初のころみたいな曲を書けって言われたらすぐに作れます。そういう土台は持ちながら、今作においてはやっぱりMatthew監修っていうのは大きいと思ってて。選曲とか、クリーン・ヴォーカルの使い方だったり、いつもみたいにセルフプロデュースだったら入れないような曲が収録されてたり、それらはMatthewのおかげですね。

-Matthewの影響で入れた曲って、どの曲あたりになりますか?

4本MVになってるうちの3曲がMatthewの指示で入れた曲で、例えば「The Rainbow Song」。あれはポップで、パワー・メタルよりで、歌詞も日本語で、自分の別の音楽の形としてやろうと思ってた曲だったんですよ。

-たしかにちょっと毛並みが違う感じはありますよね。

Matthewに聴かせたら、"アニメのオープニング・ソングみたいで好きだし、絶対入れたい"って言ってて。入れるのはいいんだけど、ヴォーカル・スタイルをどうするのが正解なのか最初わかってなかったんですよね。全編グロウルで入れてみたり、「SAMURAI METAL」で歌ってるようなダミ声系の潰したクリーンとグロウルの中間みたいな歌い方をやってみたり、クリーン・トーンの歌い方も何個か試してみたりしてたんです。最終的に全部Matthewに聴いてもらって、僕の初披露のハイトーンのシャウトが入ってたりする今の形になりましたね。あとはMatthewからバラードが必要だって話をされて「Saigo No Hoshi」も入れることになったんですが、それもバンドでやる予定じゃなかった自分の別の曲で。どう考えてもいい曲だから入れたいっていうことで、Matthewが自分で歌った英語バージョンも作ったぐらいMatthewが気に入ってる曲なんですよ。あとは「Raijin and Fujin」は共同の作曲にはなってますけど、ディスカッションをちょっとやり始めたら、すぐにギターのフレーズとサビがMatthewから送られてきて、それをもとに僕がリズム・トラックだったり裏のオーケストレーションや和楽器とか、リード・ギターも含めてすべての楽器を入れて最終的にああいった形になったんです。で、ヴァースとかは僕が考えましたけど、サビ自体はMatthewが考えてるんで、結構Matthewの作曲成分が強い楽曲になっていますね。Matthewはたぶん「SAMURAI METAL」を参考にして作ってるからアプローチとしてはすごいGYZEっぽいし、自分たちのバンドでやるうえで全然抵抗がなかったですね。

-思っていた以上にMatthewの関わり方が深いですね。

そうそう、すごい深くて。2022年からディスカッションを始めて、最初にクリーン・ヴォーカルを絶対入れたい、僕の声は入れるべきだみたいな感じで言われて、ある程度クオリティが上がるまではMatthewからレッスン動画が送られてきたりしてました。それから、今あるデモも全部聴かせてほしいって言われて、さっき言ったようにバンドでやる予定じゃないものも全部聴かせて、最終的にはこの楽曲になったって感じです。

-どういった経緯でMatthewが参加することになったのでしょうか?

コロナ禍で出してるシングルに「GOD SAMURAI NINJA」(2021年9月リリース)っていう"ニンジャバットマン ザ・ショー"とのタイアップの曲があって、ドイツのレコード会社のOut Of Line Musicってところからデジタルだけでリリースしてたんです。その流れでMetal Hammerの取材を受けて、そのときのインタビュアーさんがX上でMatthewにメンションしてくれて。MatthewもIBARAKIっていうソロ・プロジェクトをやってて、三味線なんかも入ってるから、僕らのことを紹介してくれてたんですよね。メンションもつけてくれて。ありがとうみたいな返信からDMのやりとりが始まって、ちょうど僕らがアルバムをそろそろ仕上げたいなぁっていう時期だったから、ちょっと興味ありませんか? みたいな感じで、最初はゲストとかでやってくれたらぐらいに思ってたんですけど、最終的にプロデュース、マネジメントまでしてくれて。

-偶然の重なりなんですね。Matthewと共同作業するなかで得られたものや影響を受けたことなどはありますか?

全部っちゃ全部なんですけど、彼もギター・ヴォーカルだし、バンドもMatthewのワンマン的な要素があるじゃないですか。なので、いろんな面で似ているし、他愛のないプライベートの話なんかも毎日のようにチャットでやりとりしてて。でもギターについては何も言うことないって言われてたんですよ。俺の出る幕じゃないみたいな感じで。

-なるほど。

で、グロウルももう言うことない、と。作曲も曲がすごく好きだって言ってくれて、言われたことはクリーン・ヴォーカルのことが多かったかな。

-クリーン・ヴォーカルの使い方はこれまでと比べると、今作でかなり変わってますよね。

前から多少ちょろっと入れたりはしてたけど、ここまでやったことはなかったですね。

-イントロとなる「Hajimari」を経て「Gekokujo」で幕を開ける本作ですが、イントロからハードなこの楽曲を最初に持ってきたのは、世界に向けての宣戦布告のようにも感じられました。

最初オープニング・トラックを「Raijin and Fujin」にするか迷ったんですよね。Matthewとも話してたら45秒のSEが欲しいって言われて。どの路線で行こうか考えて、僕が好きなシネマライクで映画音楽チックな壮大なやつじゃなくて、あえて音階選びとかオーケストレーションを"ゴジラ"の作曲家の伊福部 昭さんのようにしようって試してみたら、どうしてもちょっと戦国時代風な曲調になって、そうなってくると必然的に「Gekokujo」が合うっていうことでこうなりました。

-なるほど。結果的に作品全体のインパクトがめちゃめちゃ強くなりましたね。

「Gekokujo」のイントロの初期のアイディアは、何年か前にShuji(Dr)とスタジオに入ってるときに"激しい曲やるならどんな感じがいいか"って話してて、あのイントロを一緒に作ったんですよね。作曲中にShuji と作ったなぁって思い出して、そのアイディアを起点として作ったんですけど、曲中で何回もBPMが変わってるんで作り方はすごい工夫してますね。

-MVの概要欄に"ジャパニーズ・ホラー・フォーク・メタル"っていう表記があって、めちゃ合ってる表現だなって思いました。この表現はRyojiさんから出てきたものですか?

そうですね。MatthewやNapalmとそういった要素を出せたらいいねって話してて。日本のホラー文化って海外とちょっと違うじゃないですか。その感覚って実は音楽ともすごく密接に関わってて、海外のホラーって"エクソシスト"みたいな、チェレスタとか使ったあの感じですけど、日本の場合は古来の音階がそもそも聴き方を変えるとちょっとホラーなんですよ。

-ちょっと湿っぽいんですよね。

そうです、そうです。いわゆるヨナ抜きの音階のようなペンタトニックとは違って、平調子的なああいうものも独特な音階感があって。それと妖怪感っていうか、ダークさがすごいマッチしてて、デス・メタル、ブラック・メタルっぽい速さにマッチするだろうなっていう考えが昔からあったんですよ。それを具現化してみた感じですね。