INTERVIEW
RYUJIN
2024.05.09UPDATE
2024年05月号掲載
Member:Ryoji(Gt/Vo)
Interviewer:米沢 彰
-なるほど。続く3曲目の「Dragon, Fly Free」はAメロとかすごい初期のころのTRIVIUMっぽくて、個人的にめちゃめちゃ好きでした。
その曲、実は歴史が長いんですよ。
-え、そうなんですか?
サビのメロディとAメロの部分は、19歳ぐらいのときに作ってるんですよね。
-これぞ初期衝動って感じですね。
弟のShujiがずっとその曲のデモが好きで、それを形にしよう形にしようってもうこの十何年言われてたんですけど、今回いよいよあれ入れたいから試しに作ってみてって言われて。これまで何かが納得いかなくてずっとやってなかったんですけど、じゃあ一回形にしてみるわってことで、やってみたらああなったんです。だから、あのAメロ部分は僕が19ぐらいのときのフレーズを弾き直していることになりますね。
-初期TRIVIUMっぽい勢いがありますよね。
うん。やっぱ若かったんですかね、僕も。
-それもあるかもしれないですね。
今持ってるオーケストレーションの知識とかアンサンブルの知識が、オリジナルのアイディアに追いついたみたいな感じがしていて。
-違う曲を繋いだんじゃないかっていうぐらい性格が違う構成になっていますよね。
ソロ前でBPMが変わってギター・ソロに入っていくじゃないですか。あのぶった切り方は「Raijin and Fujin」でMatthewからデモを貰ったときに、こういうやり方があるんだなって思ったりもしてて。メソッドとしてはすごい似てると思うんですよ。
-来るぞ来るぞっていう感じを作ってからギター・ソロが入ってきたりとか、今まで以上にタメを作って聴かせてくる構成になっているように感じます。
そうですね。そういうのがMatthewの影響かもしれないですね。
-同じくMV曲の、日本語だと"風神雷神"ですけど、英語だと"Raijin and Fujin"になるんですかね?
そうですね。Matthewからも"Raijin and Fujin"というタイトルにしたいと言われましたので。Rから始まるほうがしっくりくるっていうか、見栄えが好きで。そのまま"Raijin and Fujin"にしちゃいましたね。
-すごい壮大でオリジナリティがあって、前半に位置してはいるんですけど作品のハイライトになる楽曲だと感じました。
この曲はMatthewからはリズムがない状態でデータが送られてきたので、リズムとかギター・ソロとか、オーケストレーションをどうするかを考えて。リズム・パターンってバンドの色を反映させるので、一番得意なパターンで作って、オーケストレーションは篳篥であったり、笙、龍笛、あとは二胡を入れたり、そういった生の和楽器とかを入れて。ギター・ソロ前のテンポが変わる部分は先ほども名前が出た伊福部 昭さんのアプローチを勉強している時期だったので、ストリングス・アレンジの緊張感だったりとかは、その影響も大きいんですよね。ブラスがバーンって入ってて、ストリングスが交互に行き来するようなアレンジとか。ギター・ソロもさっきも言ったように平調子と、Yngwie(Malmsteen)とかがよく使うハーモニック・マイナーをうまく組み合わせて、あまり他で聞かないような響きになるようなことを意識して作っています。
-和だけで押すわけじゃないところが今のRYUJINらしいところですよね。
日本の音楽って、いわゆるロックとかメタルにそもそもあんまり向いてないんですよ。これ1本だとどうしても成り立たないんですよね。それだけでは成り立たないから、クラシック的な知識だったりポップス的な知識がないと、うまくいかないっていうのもありますね。
-なるほど。続いての「The Rainbow Song」はMVで北海道、アイヌの文化を前面に出していて、バンドの出自をより積極的に生かしていますよね。この見せ方はどういった経緯でアイディアとして上がってきたのでしょうか?
もともとこの曲の仮のタイトルが、"ニジマスとアメマスの恋の物語"っていうタイトルだったんですよ(笑)。サビも、"ニジマスとアメマスの~♪"みたいな感じで本当にふざけてる曲で。これをバンドに落とし込むってなったときに、さすがにニジマスとアメマスはしんどいなってことで、外来種のニジマスと在来種のアメマスっていう関係性を和人とアイヌ人っていうふうにして、ニジマスから"Rainbow"を取ってきて。"Rainbow"には多様性っていう意味もあるじゃないですか。
-"Rainbow"自体にそういう意味がありますね。
そうそう。そういうのを肯定するっていうのがいいなぁと思ったりして。それで必然的にあのMVでは僕が和装とアイヌ衣装を切り替えて使ったりとかしています。あのアイヌ衣装は本当に知り合いのアイヌの方から借りてるやつで、俳優の宇梶剛士さんのお母さんが作ったものらしいんですけど、それを知り合い経由で貸していただいて。
-やけに本格的だなと思ったんですよね。
あれ本物なんですよ。すごい価値の高いもので。
-すごいですね。そういう繋がりが転がりこんでくるところもRyojiさんらしいですよね。
周りの友達が協力してくれたのもあって。ロケーションとかもほんと僕の地元でしたし。
-続く「Kunnecup」(クンネチュㇷ゚)はアイヌ語で月を表す言葉になっていて、曲としてはベートーヴェンの「月光」へのオマージュなのかなと思ったりしたんですが。
これは実は「月光」ではなくて、モーツァルトの(交響曲第)40番なんですよ。オマージュというか、キーがGマイナーだったりストリングス的な絡みが。作曲自体は2017年なんですけど、ずっとボツにしていたのをMatthewが見つけて"絶対入れたい"って押し切った曲なんです。本当にクラシカルで、ストリングス・アレンジも完全にクラシック要素を入れたんですよ。実際にジブリ作品などでもチェロを弾いてる向井 航さんによるチェロも入れたし。
-かなり本格的なクラシック要素を入れてきたのはすごく面白かったですね。
昔からクラシックのカバーとかもたまに遊びでやっているし、普段からクラシックの楽譜を見ながら聴くのが好きで、そうやって常に勉強しながら試しているんですよね。
-続く「Scream of the Dragon」はAメロからBメロまで完全にメタルコアっぽくなっているのに、途中からの展開が思い切りジャパメタっぽくなるっていうありそうでなかった展開ですよね。逆に言うとジャンルは意識せずに、浮かんだものをそのまま作ってるっていう感じなんでしょうか?
そうです。ああいうポップっぽい曲を作るのが好きなんですよ。本当に両手を広げて空に飛び立ちたくなるような、爽やかなメロディですよね。Aメロ、Bメロはすごいエクストリームな感じなのに、サビで一気に変わる展開もすごい好きなんですけど、僕らで言うと2ndアルバム(2015年リリースの『BLACK BRIDE』)の「Honesty」とかもその手法で。その対比を楽しみたかったんです。
-さっきまであんなに攻めてたのにって感じもして、1曲の中でかなりギャップがありますよね。
実はこの曲、サビが日本語になってますけど、英語バージョンも録ってたんですよ。で、両方Matthewに聴いてもらって"日本語のが合うね"みたいな回答だったので日本語になりました。
-この曲に限らずですけど、日本語だったり英語だったりを曲によって自在に選んでるなっていう感じがすごいするんですよね。
作曲してて、英語じゃないとハマりづらい音階と、日本語のほうがパキッとハマる音階ってあるんですよね。作曲してるときに直感で"英語じゃないと合わないなぁ"とか思ったら英語にしちゃうし。日本語にしたほうがいいと思ったら、全然後ろめたさとかもなく日本語でやってますね。
-日本語だと僕らが聴いた感じと海外の人が聴いた感じでちょっと差がありそうですよね。僕らはなんとなくでしかわからない話ですけど。
でも今はインターネットを誰でも使うし、各国の言葉を使うのがスタンダードになってもきてますよね。僕もそういうものを聴きたくなりますもん。
-それはずっと前から思っていて、世界が繋がるようになった結果、自分自身のトライブがいったいなんなのかみたいのを問われる時代になってくるような。今だとインドのメタルとか結構面白いんですよね。
BLOODYWOODですか。
-あれはもう最高ですよね。MVとかも最高すぎて。あれは絶対彼らじゃないと出せないですよね。
そうですよね。ほかにもモンゴルのTHE HUとか、奇想天外ですよね。最近だとシベリアのOTYKENも本当にアイヌの紋章とかとすごい似てるんですけど、インターネットを通してすごい人気になってきていたりして、本当にいい時代だなぁと思ってて。みんなが自分の国を誇りに持って発信するようになったんだろうな、インターネットのおかげで。
-そうだと思います。逆に真似してもしょうがないということでもありますよね。
そう思うんです。真似してるんなら本家聴きたいですもんね。