INTERVIEW
GYZE
2021.02.24UPDATE
Member:Ryoji(Gt/Vo) Aruta(Ba/Vo) SHINKAI(Gt)
Interviewer:山口 哲生
現在、活動10周年を記念して3ヶ月連続リリースをしているGYZE。第1弾として発表された「SAMURAI METAL」のミュージック・ビデオは、YouTubeで公開後、2週間で20万回再生を突破するという好況のなか、第2弾となる「Voyage Of The Future」が到着。荒波を突き進んでいくような雄大なサウンドと、そこに綴られたポジティヴなメッセージが胸を熱くさせるドラマチックなものに仕上がった。GYZEというバンドが"大事にしているもの"が詰め込まれた本作について、Ryoji、Aruta、SHINKAIに話を訊く。
-3ヶ月連続リリースの第1弾として発表された「SAMURAI METAL」(2021年1月リリース)のミュージック・ビデオが、公開後2週間で20万回再生を突破したということで。
Ryoji:ビックリしましたね(笑)。YouTubeのコメントは、外国の方からのものがおそらく9割ぐらいなんですが、僕らが狙っていた層にうまくリーチできたかなと思います。ただ、そこはすごく満足しているんですけど、それと共に将来的な方向性はやっぱりこっちなんじゃないか? という、作曲家としてのちょっとした迷いも正直少しありましたね(笑)。「SAMURAI METAL」から入った人は、GYZEのことをジャパニーズ・フォーク・メタルのみをやるバンドとして見る可能性があるし、今後それを求められることもきっと出てくると思うんです。そういうことをちょっと考えたりもしたんですが、細かいことは抜きに、まずは嬉しいですね。
-"もっと否定的な意見もあると思ってたからビックリ"とSNSでコメントされていましたね。
Ryoji:これまでのGYZEって、コミカルな側面をあまり見せてこなかったんですよね。例えば、X JAPANの「Forever Love」をヘヴィ・メタルにするとか、そういったチャレンジはしてきましたけど、どちらかというとクールに見えるようなものが多くて。今回みたいに真面目にふざけているコミカルなものは初めてだったから、従来のGYZEファンが求めていない可能性があるというのは、僕らの中に共通認識として当然あったんです。だけど、否定的なリアクションもそんなに聞かなかったし、なんだかんだ日本のメタル・ファンも、自分の国からこういうバンドが出ることを望んでいたんじゃないのかなという裏づけが、ある意味できたのかな、なんて思ってはいますね。
-"いいぞ、もっとやれ!"みたいな声もあって。
Ryoji:次は「NINJA METAL」という曲を作らなくちゃいけないですね(笑)。
Aruta:はっきり言って、もっと叩かれてもいい、なんなら叩かれたほうがいいぐらいまで思っていたんですよ。でも、従来のファンも今回から入った人たちも、基本的には肯定的で。それはすごく嬉しいことではあるんですけど、もうちょっと叩いてほしかった......というのは、僕としては少し思いましたけどね(笑)。
Ryoji:"AMON AMARTHやENSIFERUMの日本版だ"みたいなコメントもあったから、自分の感覚は間違ってなかったなとも思いましたね。世界各国にフォーク・メタルのバンドはいるけど、これまで日本のサウンドを出しているフォーク・メタルはいなかったので、そこはすごく狙い通り、100点だったかなと思います。それによっていろんなところから話もきたので。
SHINKAI:バンドって新しいことをやると叩かれるとか、そういう時期があると思うんですよ。今回もそういうことがあるんじゃないかと思って構えていた部分もあったんですが、"あら?"っていう感じでしたね(笑)。"受け入れられるんだ?"って。
Ryoji:SHINKAIさんのFacebookに、"今のファンは頭がいいから理解できるよね"というコメントもあったんですけど、本当にその通りなんですよね。聴く側の包容力というか、理解力が、欧米と肩を並べるように日本も上がってきているんだなって、僕も肯定的に思いました。
SHINKAI:そうだね。リスナーのスキルもすごく上がっている感じがする。もはや"日本だけ"みたいな狭い感覚がなくなってきているんじゃないかな、というか、すでにそうなっているのかなと思いますね。
-これは10周年ということも含めてお聞きしたいんですが、「SAMURAI METAL」に"Guess what I am"="俺たちは何者だと思う?"という歌詞がありますよね。振り返ってみると、4作目の『ASIAN CHAOS』(2019年リリース)は、日本から世界に発信することを意識した作品になっていましたし、3枚目の『NORTHERN HELL SONG』(2017年リリース)は、ホームである北海道のことを題材にされていました。Ryojiさんとしては、日本という国や、ルーツに立ち返ることで、"自分とは何者なのか"という感覚を持ちながら、楽曲を制作されていたんじゃないかと思うんですが、実際はいかがでしょうか?
Ryoji:最初の頃はどのバンドもそうだと思うんですが、憧れているものと同じクオリティにいくことで必死だと思うんですよ。GYZEはラッキーなことに、そうやって憧れていたバンドとわりとすぐに同じ土俵に立てる機会が与えられたんです。そういったときに、オンリー・ワンでなければいけない、自分たちだけにしか出せない音にこそ価値がある、2番手には意味がないということに早い段階で気づけましたし、そのあたりは『NORTHERN HELL SONG』前後ぐらいから強く意識し始めたことですね。
-何かきっかけがあったんですか?
Ryoji:BATTLE BEASTと回った長いヨーロッパ・ツアーのときにすごく痛感したのかな。僕らはゲスト・アクトでの出演だったので、どうすればメイン・アクトであり、ヘッドライナーとしてやれるのかを考えると、やっぱりGYZEを観にいくという理由がないといけないなと。あとは、海外のフェスに行ったときに、似たり寄ったりのサウンドをしていても、やる必要がないなと思ってしまって。そういったものはカバー・バンドに任せておけばいいし、僕らはオリジナル・バンドであって、バンドをやるからには自分たちの音で、世界中で演奏したいという気持ちは昔からありましたからね。なので、楽曲作りにおいては、いかに他と被らないようにできるか、それでいてヘヴィ・メタル然とできているのかというのは、やっぱり考えます。
-ワン・オブ・ゼムではなく、あくまでもオンリー・ワンであることを考えてきた歴史でもあると。
Ryoji:そうですね。そこは常に模索しているし、今も勉強していて。これからもきっと、想像を超える何かを自分たちはしたがっているんだろうなと思います。
-Arutaさんは、GYZEとして活動していくなかで、オンリー・ワンにならなくてはということであったり、世界に触れてみて感じたことだったりというと、どういったものがありますか?
Aruta:僕は、今も昔もただのメタル・ファンというのが根底にはあるんですけど、1st(2014年リリースの『Fascinating Violence』)や、2nd(2015年リリースの『BLACK BRIDE』)の頃は、かっこいいヘヴィ・メタルをやれていればそれでいいと思っていたし、そこはRyojiの曲にも正直感じてはいたんですよ。そのなかで、2ndのツアーのときに、さっきRyojiが話していたような自分たちが憧れていたバンド、例えば、CHILDREN OF BODOMとかとライヴをしたタイミングで、自分のメイクを個性的な方向に変えてみたりして、多少の差異を出せるように意識はしていたかなと思います。ただ、作風によって見せ方も変わってくるので、最近は正直あまり意識していないですね。自分がやればGYZEがGYZEらしく見える、GYZEのArutaっぽく見えるところに、多少の自信は出てきたので。
-そこに辿り着くために苦悩したこともありました?
Aruta:そこに関しては、正直僕はあまりなかったです。今もそうですけど、基本的にはRyojiが引っ張ってくれているんですよ。THEリーダーみたいな感じで。
Ryoji:満面の笑み。
Aruta:(笑)そこはすごく感謝しているし、今の僕の立ち位置というか、人としての触れ合い方に繋がっている部分もあるのかな。当時はそこの苦悩をすべてRyojiに投げてしまっていた感じもあるので、今はそれをなんとか取り返そうとしてるのかもしれないですね。今はRyojiもSHINKAIさんも、今作はいないけどShuji(Dr)も、みんながいかに楽しくバンド活動ができるかどうかが僕にとっては大事なんですよ。そこだけはすごく意識しているかもしれないです。
-素晴らしいことだと思います。Ryojiさんとしては、自分たちがオンリー・ワンであるためにどういう曲を作るかにあたって苦悩はあったと。
Ryoji:たぶん、ほとんどのバンドってオンリー・ワンがどうこうみたいなことって、そこまで考えないと思うんですよ。"何々っぽい曲ができた、わーい"っていう感じがほとんどだと思うんですけど。ただ、僕としては曲を作るにあたって、メンバーみんなが誇りを持ってステージに立ってもらえるようにしたいんですよね。俺たちが日本のGYZEだ! オンリー・ワンじゃい! っていう気持ちを、メンバーみんなに持ってもらえるバンドにしたい。そういうところもあるし、あとは結局、僕が好きになる音楽家がみんなオンリー・ワンなんですよ。そういう意味では、結局まだ憧れを追ってしまっているのかなとは思いますけどね。
-いわばオンリー・ワンって究極ですからね。そこを目指しているとも言えますし。
Ryoji:でも、決して僕らが先駆者かというと、そうではないんですよ。0から自分が新しいものを作れるなんて、そんなことはまったく思っていないですから。僕としては、部屋の壁にかけていますけど、Yngwie Malmsteenや、VAN HALENといった先駆者たちをすごくリスペクトしていますし、それだけじゃなくて、日本の民謡もクラシック音楽も映画音楽も好きなので。そういういろんな音楽を、敬意を持って取り込んでアウトプットしたときに、本当の意味でのオリジナルなものにできたらいいなと思っています。
-SHINKAIさんの場合はいかがでしょうか。GYZEに加入したのは2019年ではありますけど、師弟関係でもあるRyojiさんとはかなり長い付き合いだとは思うんです。オンリー・ワンを目指している姿を見て思ったことや、ご自身の活動を振り返ってみて思うことというと?
SHINKAI:僕は35年前に札幌のとあるインディーズ・レーベルからデビューしまして、そこで音楽業界のいろんなことを把握したり、ツアーを回ったりしていたんですが、僕も結局、Ryojiと一緒だったんですよ。当時はX(X JAPAN)みたいな、ヴィジュアルとまではいかないけど、LAメタル寄りなパーティー・ロック系のものが流行っていたんですよね。どこに行っても髪がこんな(※逆立っている)感じで(笑)、僕らもちょっとそっち寄りだったんですが、このままこういうことをやっていてもダメだなと。北海道独自のもの、自分独自のものをやらなきゃいけないなと思って変わっていったんですけど、その当時はなかなか通用しなかったんですね。だから、弟子でもあるRyojiが今こういうふうにやっているのは、僕からしたら誇らしいんですよ。
Ryoji:昔、SHINKAIさんから言われてすごく覚えていることがあって。ギターを習っていたときに、普通のフレーズを弾いていたら"そんな誰でもやるようなスケールを弾くんじゃない!"って言われたんですよ。"これを10年後も誇らしく聴けるために、もっと工夫しろ"と。"今のお前は普通のフレーズを弾いて満足しているかもしれないけど、10年経ったら聴けなくなるからやめろ"って言われたんです。その教えの延長だと思っているんですよね。SHINKAIさんって、札幌の重鎮たちの中でも変態寄りというか、曲者寄りなんですけど、僕としても群れたくもないし、誰かと同じようなことはしたくないし。だからギターだけじゃなくて、マインド的なところにおいても師弟関係は今も健在しているし、SHINKAIさんが師匠で良かったなと思ってます。
SHINKAI:良かった(笑)。僕としては、その当時に自分ができなかったことをRyojiたちにやってもらっている感覚もあるんですよ。GYZEではRyojiにちゃんとギター・ヒーローとしていてもらいたいので、僕自身は縁の下の力持ち的な役割がこれからもできればいいかなと思っています。
-めちゃくちゃ素敵なお話でした! では、ここからは、3ヶ月連続リリースの第2弾「Voyage Of The Future」のお話をお聞きできればと思います。「SAMURAI METAL」とは趣を変えつつも、熱さや力強さがある曲ですね。"Voyage"というワードであり、雄々しいサウンドからしてヴァイキング・メタル的な雰囲気もありますが、この曲はいつ頃作られたんですか?
Ryoji:去年の夏頃には完成していたと思いますね。「SAMURAI METAL」よりも、どちらかというと従来のGYZEに近い曲調ではあるんですけど、音階的に日本人が好む5音階から成り立っているものを入れているとか、細々としたフレーズは工夫しています。あと、転調の仕方は、往年のジャパニーズ歌謡というのかな。ヘヴィ・メタルではあまり聴き馴染みのない転調の持っていき方はすごく意識してました。あとはもうイントロから大海原がバーッ! と広がるような感じにしたかったですね。そこは、数年前にアメリカの"70000 TONS OF METAL"というフェスに出たんですけど、あそこで映える曲にしたいってちょっと思っていたんですよ。あのフェスの印象は、この曲を作るイメージ上では不可欠だったような気がしています。
-たしかにクルージング・フェスには絶対に合いますね。サビにはいろんな人の歌声も入っています。
Ryoji:Aruta君と僕、あとは『ASIAN CHAOS』でも雅楽楽器の演奏をしてくれていた中川(陽平)君が歌っていて。厚みがあって、力強くて、それこそ船に乗りながら歌っているようなものにしたいっていう狙いはありましたね。この曲をものすごくわかりやすくいうと、昔のアニメのオープニング・テーマみたいな感じです(笑)。
-歌詞としては、今の世の中に向けて歌っているといいますか。先行きが見えにくい時代かもしれないけれど、涙を堪えて未来へ進んでいこうというメッセージになっていますが、この言葉は自然と出てきたものではあるんですか?
Ryoji:そうですね。そのときの感情をそのまま綴りました。Aruta君が話していたことなんですが、「Voyage Of The Future」の歌詞は"手紙"で、次作の「Oriental Symphony」は"ポエム"と言っていたんですけど、まさにその通りで。コロナのことであったり、僕自身のプライベートのことであったり、弟でもあるドラムのShujiが休んでいることであったり、いろいろな感情の波が押し寄せてきたときに、自分を含めたみんなを励ますものというか。僕らに関わる人たち全員を祝福するようなものにしたいなと。そこはやはり、GYZEが活動を始めた10年前の2011年には東日本大震災があって、そういったところにインスパイアを受けてきたバンドなので、自然と湧き出てきた感情でもありました。