INTERVIEW
GYZE
2021.02.24UPDATE
Member:Ryoji(Gt/Vo) Aruta(Ba/Vo) SHINKAI(Gt)
Interviewer:山口 哲生
-Ryojiさんの感情は込めながらも、自分は今の世の中に向けてどういう言葉を手紙にしたためられるのかという。
Ryoji:そうですね。もちろんみんなを励ますものとして書いてはいるんだけど、僕としては、ある特定の人に対して書いたものではあるんですよ。それが誰なのかはミステリーということで。
-今、どなたに書かれたんですか? って聞こうとしたんですけど(苦笑)。
Ryoji:ははははは(笑)。読者のみなさんにはイマジネーションを膨らませてもらいましょう。余白があったほうが聴くほうも楽しいと思うので。
-たしかにそこはありますね。Arutaさんは「Voyage Of The Future」をプレイしてみていかがでしたか?
Aruta:「SAMURAI METAL」でフロントをやった人間が言うのもなんなんですけど、今回の連続リリースの中で、レコーディングとしてはこの曲に一番思い入れがあるんですよ。転調やコード進行がメタルの形ではないので、最初はなかなか覚えられなくて難しかったし、クリーン・ヴォーカルをレコーディングするのも何気に初めてだったから、レコーディング中のイベントが、今までの中でも一番多かったかなって。それに、「SAMURAI METAL」みたいな曲ばかりやるのは、僕としてはあんまり......と思うところが正直あるし(笑)、今作が今後にも繋がっていくようなところもあるから、そういったところも含めて思い入れは何気に強いですね。大事にしていきたいなと思います。
-新しいものに挑戦できたとなると、たしかにそれは大事にしたくもなりますね。
Aruta:そうですね。歌詞に関しては、ミステリーになっているところの事情を、僕はすべて知っているんですよ。だから、曲にしても歌詞にしても、その精神状態をよくここまで前向きなものに持っていけたよなという驚きは、すごくありましたね。そこはやはりアーティストというか、そこでまず先制パンチを食らったので......大事にしたいです。
Ryoji:やっぱり生きていると、自分ではコントロールできないけれど、不本意なことっていっぱいあると思うんですよ。例えば、病気やコロナなんてそうだと思うんですけど、みんな生きていくなかで悲しみを抱えていると思っていて。僕としては、この歌詞は特定の人に向けて書いているし、なんなら自分を励ましたかったところもあるかもしれないけど、こうやって作品になったときに、巡り巡って誰かの心に響くものになればいいなと。ただ、この曲は「SAMURAI METAL」みたいに、自分たちのことを知らない人に届けたいという気概とは、また少し違うと思うんですよ。そこはAruta君が言った通りで、僕らの中で大切な作品なだけであって。それが売れるとか売れないとか、そういうのは結果論だから、僕らが気にすることでもないんですよね。たぶん、Aruta君はそういうことを言っていたんだと思うんだけど。
Aruta:うん。うまく説明できなかったけど、そういうことです。
-そういう曲がこれからも増えていくといいですよね。自分たちがすごく大切に思える曲。
Ryoji:ところがね、「SAMURAI METAL」がちょっとヒットしちゃってますから(笑)。
一同:(笑)
Ryoji:もしかしたら俺が花魁の格好をしなきゃいけないのかとか、SHINKAIさんが泥棒の格好しなきゃいけないのかなとかね(笑)。まぁ、そういう冗談はさておき、GYZEのメンバーってみんな真面目で性格も優しいから、そういった人間性が垣間見える作品もどんどん作っていければいいなと思います。
-SHINKAIさんとしては、「Voyage Of The Future」を聴いたときにどんな印象を受けましたか?
SHINKAI:最初はバラバラと送られてきたから気づかなかったんだけど、今回の3連続シングルって、去年のRyojiの集大成的な3部作という感じが、僕の中にはあって。その中でも「Voyage Of The Future」は、僕の中では中間ではなくて、スタート地点になる曲なのかなって思っていたところがあったんですよ。これはすごくいい始まりの曲だなって。
Ryoji:本当は「Voyage Of The Future」が1作目の予定だったんですよ。いろんな都合上で「SAMURAI METAL」が最初になったので、そこはSHINKAIの感じた通りです。
SHINKAI:やっぱりそうか(笑)。曲のことはふたりが話していたけど、J-POP的な受け取りやすさというのかな。曲の感じとしては、僕はどちらかというと、サザン・ロックとかAORみたいな印象があったんですよ。
Aruta:へぇー!
SHINKAI:ああいう転調の感じってJ-POP的なものではあるけど、J-POPってやっぱりAORの影響が大きいし、僕もAORをやっていたときもあったから、ちょっとその感じがあって、清々しくていいなって思いましたね。
Ryoji:この曲はサザンオールスターズとか、ゴダイゴとかをイメージしていたところはありましたね。
SHINKAI:そうなんだ? なんか、身体に優しい音楽っていう感じはあるね。
-あと、今回の曲には別アレンジもありますね。
Ryoji:僕はピアノから楽曲をよく作るんですけど、この曲はもともと、ああいうバラードっぽさが根底にあったんですよ。だから、メタルのバージョンと、イージー・リスニング的なものの対比、その違いを楽しんでもらえるといいなと思います。
-サウンド的には違うんだけど、どちらも曲を聴いたときの印象として、前を向けるようなものになっているなと思いました。
Ryoji:そうですね。ちょっと大河ドラマみたいな感じかもしれないです。映画もそうだけど、同じメロディをいろんなアレンジしたりするじゃないですか。そういう感覚で聴いてもらえるといいなと思いますね。
-今回の楽曲もミュージック・ビデオを制作されていますが、ものすごくエモーショナルで、グっとくるものになっていますね。内容としては、ロード・ムービー的な感じになっていますけども。
Ryoji:本当はプレイスルー的な内容で作りかけていたんですけど、そうじゃないなと思ってしまってしまったんですよね。やっぱりこういったメッセージであることを考えると、GYZEの歴史が少しでも見えるようなものがいいんじゃないかなと。ShujiがステージにいるときからSHINKAIさんが加入する過程が見えるものになっているし、歌詞に英訳も入れているので、「SAMURAI METAL」から知った外国の方も、こういう経緯を踏んで「SAMURAI METAL」に至っていることがわかると思いますし。あとは、やはり希望のある曲なので、僕らが身を削って(笑)、世界で戦いまくっている姿を映すことが一番いいだろうという。それこそ"70000 TONS OF METAL"の映像も入ってますからね。
-そうですね。他にも、スペインでの"Leyendas del Rock"や、ドイツの"Summer Breeze Open Air"、ロンドン公演やメキシコ公演、BATTLE BEASTとのヨーロッパ・ツアーの映像と、そのときのオフショットもかなり使われていて。
Ryoji:映像の編集は僕がやったんですけど、メンバーがやらないと作れなかったミュージック・ビデオになっていると思うんですよね。それが「SAMURAI METAL」みたいに、知らない人の目を惹くものではないかもしれないけど、GYZEというバンドの本質がわかるものにしたかったので。それはさっき言った通り、"大切にしたい"というところとひもづいたものになっていると思います。
-個人的には、"Summer Breeze Open Air"で、Arutaさんがサークル・ピットを見ているときの表情がめちゃくちゃ素敵だなと思いました。
Aruta:やっぱり嬉しいんですよ。ドイツのどこかわからないような場所に行って、何人なのかもわからない人たちがギャーギャー騒いでくれている状況って、普通に生活していたら絶対に味わえないものじゃないですか。それをまたこんなわけのわからない赤髪のロン毛がやっていると思うと、これはもうバンドマンにしかできないことだよなって。いつも"わけわかんねぇな~"って思いながらサークル・ピットを見ているんで、その表情を捉えてもらえていたのは、やっぱり嬉しいかな。そういうのも含めて身内というか、メンバーじゃないとできないものだったんだろうなって思いますね。そういう見方をできる人が何パーセントいるのかわからないけど、伝わる人にそれが伝わっているのであればいいなって。
Ryoji:たまたま僕らはバンドマンだから、自分たちが一番頑張っている姿を押さえられていることもあるけど、会社員なら会社員なりの、母親なら母親なりの、学生なら学生なりの物語や、ドラマがあると思うんですよ。僕らはたまたまバンドだったけど、そうやって自分と照らし合わせながら聴いてもらえたら嬉しいですね。戦っている瞬間って絶対にどんな人にもあると思うので。
-SHINKAIさんは今回のMVを観てみていかがでした?
SHINKAI:僕のいない時期の映像も多いんで、こういう感じだったのかなと思いつつ、ちょっとうらやましいところもありましたよね。楽しそうだな......なんで俺ここにいねぇんだろうな......って(笑)。
Ryoji:もっと前から加入してもらっていたらよかったですね(笑)。
SHINKAI:ははははは(笑)。今はコロナの影響もあってライヴはなかなか難しいけど、またここから新しいことができたらいいなと思いますね。
-俺は早くいろんな景色が見たいと。
SHINKAI:そうですよ。早く連れていってくれ(笑)。
Ryoji:これまでは序章だったんで、これからいっぱい観にいきましょ?
SHINKAI:はい(笑)。
-そして、映像の後半にはShujiさんも登場されています。
Ryoji:あの映像は、「Oriental Symphony」のミュージック・ビデオを撮影しているときの、オフショットなんですよ。最後はそこに繋げるのが、曲のエンディングとして相応しいなと思って。長くからGYZEのファンでいてくれる方は、もしかしたら涙なしには観られないかも、という(笑)。
-4人で抱き合いながら"あかん、泣ける......"と言う最後のシーンは、ファンのみなさんも同じ気持ちでしょうね。
Ryoji:そこは日本語なので、日本語がわからない人たちに伝えられないのはもったいないところではあるんですけどね。ただ、ここからまた歴史を作っていくし、今のGYZEをキャプチャーして、僕らにとって大切なことが伝わる人に伝えることが大切ですから。
-連続リリースも、残るは「Oriental Symphony」のみ。ここからShujiさんが本格的にカムバックされます。
Aruta:この「Voyage Of The Future」が、次回作の「Oriental Symphony」に繋がっていくんですよ。「Voyage Of The Future」で僕らが大事にしているものをまず観ていただいて、「Oriental Symphony」で10周年の幕開けと捉えてもらいたいですね。なので、ミュージック・ビデオは絶対に観てもらえると嬉しいです。
SHINKAI:そうだね。次に繋がるための大切な曲でもあり、ミュージック・ビデオなので。
Ryoji:やっぱり今って苦しんでいる人が多かったりすると思うんです。だから、「Voyage Of The Future」を、自分事として受けとめながら曲の中身を感じてもらえたら、作り手としての冥利に尽きますね。あとはもう、ふたりが模範みたいなことを言ってくれましたけども(笑)、本当にこの曲ありきで次に繋がりますし、「Oriental Symphony」がGYZEの最高傑作だと思ってもらえるものになっているので、期待しておいてほしいです。