INTERVIEW
GYZE
2019.07.10UPDATE
2019年07月号掲載
Member:Ryoji(Gt/Vo) Aruta(Ba/Vo)
Interviewer:米沢 彰
新メンバーとしてギタリスト&マニピュレーター SHINKAI、ドラマー HAN-NYAを迎え、新体制を手にしたGYZEが放つ新アルバムは雅楽を始めとした日本のサウンドをふんだんに取り入れた世界目線のメロデス新機軸と言うべき意欲作となった。徐々に日本のメロデスをリードする立場へと差し掛かりつつある彼らの中心メンバー、RyojiとArutaに様々に訊いた。
"日本人が作るヘヴィ・メタルの究極"のようなものを作りたい
-4thアルバム『ASIAN CHAOS』の前に、まずは前作アルバム『Northern Hell Song』(2017年リリース)以降のバンドの動きについてうかがえますでしょうか?
Aruta:前作はリリース前から長期のヨーロッパ・ツアー("Bringer Of Pain Over Europe 2017")が始まっていたので、ツアー中に新譜が発売されるという謎の事態になったんです。
Ryoji:それが全部で40日間のヨーロッパ・ツアーで、BATTLE BEASTがヘッドライナーだったんですけど、そのあと国内のツアーもやりつつフェスとかも出て。その翌年、昨年の初めに、"70000TONS OF METAL"というフロリダのクルージング・メタル・フェスに出て、そのあとにまた国内ツアーをやりました。そして6月にシングル『龍吟』のリリースがあって、その国内ツアーをやったあとにまた海外に行って、"Summer Breeze Open Air"やスペインの"Leyendas del Rock"、ドイツでの単独公演などもあり、帰ってきたらまた国内ツアーっていう感じでした(笑)。そのあとは、いったん活動休止みたいな形になってましたね。
-海外での動きがかなり活発でしたよね。
Ryoji:そうですね。特に"70000TONS OF METAL"は、日本人として初めての出演で出ているバンドも豪華だったので楽しかったです。今後の活動に反映できるようなフィードバックというか、得られるものも実際多かったですし。
-国内でもOUTRAGEの30周年記念ツアー("Raging Out Tour 2018")に参加したり、先ほども話に出た『龍吟』のリリース・ツアーで東名阪札を周ったり、10月には札幌で主催イベント("METAL BLIZZARD 2018")を開催したりと活発に活動されていましたね。
Ryoji:日本のバンドは日本でも活動しないとね(笑)。でも、そんなに活動場所っていうのは意識しないようにしようと思っていて、できればもっといろんな国、例えばインドとかタイでもいいし、オーストラリアでもいいし、アフリカでも南米でも、初めての場所にどんどん行けるようにこれからもしっかり活動していきたいですね。
-なるほど。そんななかでも、札幌で主催イベントをやったことは、やはり北海道をアイデンティティとして大事にしているというふうに映りました。
Ryoji:札幌って特殊なのが、本州のライヴ・シーンの流れが入ってきづらいんですよね。どうしてもやっぱり島が違うし。なので、そういうなかで知り得ないバンドを観るきっかけにできたらいいなぁとか思っています。
-そういった活発な動きがあった2018年の年末にShuji(Dr)さんのことがあって、個人的にもちょっとショックでした。可能な範囲で構いませんので、現状をうかがえますでしょうか?
Ryoji:発表の通り別に脱退したとかそういうことではないんですけど、バンドで活動するうえで、精神的な面も含め、やりづらそうにしているのが数年前から徐々に見えてきていたんです。バンドが有名になっていくにしたがって、自分の知らない人が僕らを知っているっていう状況もストレスになっていたみたいですね。去年のヨーロッパ・ツアー中も、ステージ以外の時間では落ち着きがないというか、取り乱すようなこともあって。ステージ上ではなんとか楽しくできていたんですけど、それ以外がキツい感じがあって、そのあと国内ツアーが始まってからは、ライヴできるのかできないのか毎日協議しなきゃいけないようになってしまったんです。そこまでは発表した通りですけど、今はもうドラムも叩いてるみたいだし、まだバンドに復帰とまではいかないけど音楽とは接していて、あとは落ち着くのに時間が必要なのかなと。僕自身も今はメンバーとしてではなく、なるべく兄弟として接してあげるべき時期かなと思っていますね。
-では、Shujiさんの今の位置づけは、メンバーではありつつ活動を休止しているという状況で合っていますか?
Ryoji:まぁ、休んでるっていう感じですね。それで、今回はサポート・ドラムがお面をつけているんですけど、それは別のメンバーの顔がGYZEの輪の中に入ってしまうと、どうしても違う人間が叩いているイメージができてしまうし、そうなると戻ってきづらくなってしまうので。そして覆面なら、仮に中身がShujiに戻っててもいいわけですよね。そういう可能性もあるし、今のGYZEにとって将来も見据えたうえで最善の策がこういう形だったんです。本人も音楽が心底好きだし、俺はあいつが音楽しかない人間だと思っているから。ただ、時間が必要かなって状態で、今は家族として見守っていますね。
-今回、新体制としてギター&マニュピレーターのSHINKAIさんが加わって。公表されている通り、Ryojiさんの師匠にあたる方なんですね。
Ryoji:そうなんですよ。ちょうど僕が高校卒業するくらいのとき、ギタリストとしてソロ・デビューの話があって。まだまだ自分ではアマチュア・レベルだと思っていたので先生が必要だなと思って、そのときに知人を介して知り合ったのがSHINKAIさんだったんです。SHINKAIさん自身も今Capturedというバンドをやってて、音楽の学校の先生もやっているんですけど。実は、今回は最初"ちょっと一緒にやってみませんか?"ということで話をして、楽曲のオーケストレーションとか鍵盤のアレンジとかでオファーしたんですけど、それがすごくいいアレンジになって、想像を超えてきて。一緒に仕事しやすい人だっていうことがすぐにわかったから、その段階でAruta君に相談してみたんですよ。"GYZEに入れない?"って。でも、最初はやっぱり年齢も違いますし、"いやぁ、しっくりこない"って言われて、一度は断られたんです。でも、それから何度か楽曲のやりとりをしていくなかで、めちゃめちゃマッチしたので"これは入れた方がいいでしょ!"ってなって。僕自身も本当はツイン・ギターのGYZEが好きなんです。これまでは仕方なく、僕が弾いてるとは言えども、ステージ上にいない人の演奏をコンピューターで鳴らしてしまっていたけど、それよりは、実際に弾いてる人間がいる方が、説得力があるかなと。それに加えて、将来的に僕はヴァイオリンとかピアノとか笛とか二胡とかやって、ギターの代わりにそういった楽器を持ちながらフロントマンをやってみたいっていう気持ちもあって。そのときにはギターがいないとおかしなことになってしまうので(笑)、そういったこれからの楽曲制作のことも考えると加入してもらいたいなと思ったんです。あとは、単純に僕との付き合いも長いし、師弟コンビでツイン・ギターっていうのを僕自身が楽しみにしていたっていうのもありますね(笑)。
-Ryojiさんは付き合いも長いし、すんなり受け入れられたっていうところがあると思うんですけど、Arutaさんは一緒にやってみてどうでしたか?
Ryoji:とは言え、もう5年くらいになるもんね。
Aruta:実は、2ndアルバム(2015年リリースの『Black Bride』)のヴォーカル・レコーディングをやってもらったときから人となりは知っていたので、最初Ryojiから"入れない?"って言われたときに、ちょっと想像つかないなと思って、"いやぁ、ちょっとわかんないな......"くらいで返したんです。そのあとまた電話が来て、"じゃあ、入れるから!"って言われて、"了解しましたー!"って(笑)。一応ちゃんと理由も説明してくれて、納得できたから。Ryojiがフィットしたっていうことが何よりも大事で、これまでも実はツインだった時期があったんですが。
Ryoji:サポート・メンバーでね。
Aruta:そうそう。3ピースの状態には自信もプライドもあったんですけど、それを踏まえたうえでRyojiが決断したんだから、"おし、やろう"って感じですね(笑)。
Ryoji:俺も3人のGYZEは好きなんだけどね。現状に不満はなかったんですけど、ただそれ以上に感動があった。だからやってみたんです。まずは、一緒にやってみたいなと思ったっていうことですね。
-今作を聴いて、またバンドの立ち位置を明確に示す作品になったなと感じました。1作目は逆輸入の形でこの世に出て"世界標準の音を日本から発信する"こと。2作目は国内レーベルもついてそのメッセージをさらに強め、3作目では"北海道をルーツにしたオリジナリティ"に少しシフト・チェンジしたあと、今作では"日本を代表するバンドとしてやるべきこと"を提示しているように感じました。
Ryoji:おっしゃる通りで、まずひとつのテーマとして"日本人が作るヘヴィ・メタルの究極"のようなものを作りたいというのがあって。そして、もうひとつすごく重要なことが、どのバンドでも聴けないサウンドにしたかった。つまり"世界最初の音"にしたかったということなんです。それは、先ほども話に出たような海外での活動で感じたものですね。"こういうバンドだったらもっといいのに"っていう自分の欲求とかを考えたときに、今回のような形になって。そういう楽曲にするためには、やっぱり感覚だけでは作れないので、相当の勉強も必要でしたし、こだわって作っています。
-なるほど。
Ryoji:ただ、実際は今までの延長のような楽曲もたくさんあって。アルバム1枚分くらいのボツ曲は出てるんですよ。今回は、ひとつの提示作のような形にしたいなと思っていたんです。
-その提示したい感覚は、聴いていてすごく伝わりました。使っている楽器も、笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)などの雅楽の楽器を導入したところが、北海道というひとつの地域を土壌にしたバンドから、日本全体を代表するバンドとしての表現へと目指すところが変わってきているのかなって。
Ryoji:実はたまたま地元の神社の雅楽会で演奏していた方がいて、その動画をInstagramで上げたんですよ。そしたら、その人がコメントをくれて。それからしばらくして今の楽曲制作に入ったときに、ふと"あ、あの楽器入れたいな"って思い出したんですよ。それで連絡したら二つ返事でOKしてくれて、それが篳篥と龍笛を吹いてくれている中川陽平っていう奏者なんですけど、その人実は釣りとかメタルも好きで(笑)、すごく趣味が合ってすぐに仲良くなったんです。
-運命的ですね(笑)。
Ryoji:そうなんです(笑)。それで、ミックスのアドバイスもくれたんですけど、GYZEの世界観をすごくよくわかってくれていて。今回はゲスト・ミュージシャンという形ですけど、半分メンバーくらいに思っているので。
-すごいですね。
Ryoji:そして、笙も雅楽会にいる長谷川さんっていう人が吹いてくれていて。実際今は僕もその雅楽会に入って、龍笛を吹くとかをし始めているところなんです。他の太鼓っぽい楽器は、SHINKAIさんがやってくれてるんですけど、北海道のよさこいの音とかも作っているので、そういう音も得意なんですよね。すごく経験豊富で素晴らしいミュージシャンなので、まだまだ僕が教わることはいっぱいあるなっていう。
-引き出しがめちゃくちゃありそうですね。
Ryoji:そうですね。制作中はAruta君が"メタルかどうか"のジャッジを常にしてくれて(笑)。メタル・ジャッジ・マンですね。
-メタル・ジャッジ・マン(笑)。
Ryoji:今作はそういう意味で、すごくいろんな人が協力してくれてできあがった作品です。その根幹には、先ほどおっしゃっていただいたように、日本人であることを大事にした作品にしたいっていうのが、間違いなくありましたね。