INTERVIEW
GYZE
2019.07.10UPDATE
2019年07月号掲載
Member:Ryoji(Gt/Vo) Aruta(Ba/Vo)
Interviewer:米沢 彰
-Arutaさんから見て、この制作のプロセスはいかがでしたか?
Aruta:僕は、なんでも結構素直に受け入れちゃうタイプなので、"そうなんだ"って感じで見ていたんですけど、それにしてもとにかくRyojiは引きが強いなと(笑)。それこそ龍笛の奏者の中川さんも、"なんか友達になったんだよね~"っていうノリで言ってたんで(笑)。あとは、SHINKAIさんが入れてくれたアレンジも"これはマッチするわ"って感じで、何もかもが収まるところに収まったっていう印象だったので、やっぱり"持ってるな"と思いました。
-そしてちょうど元号が変わるタイミングとも合っていて。
Ryoji:そうなんですよね。ニュースとかでも雅楽がフォーカスされていて、すごくタイミングが良かったなって(笑)。本当にAruta君が言ってくれた通り、収まるところに収まったというか、いろいろなタイミングが合った感じですね。狙ったわけではなく、なるべくしてなったというか。
-本当に引きが強いですね(笑)。まさかそんなにタイミングが合うなんて。ちょうど4月から5月の改元時期くらいに、テレビなんかでもよく雅楽の音が流れていたので、意識されているのかと。
Ryoji:偶然ですね(笑)。
-サウンド面では2ギター体制ということで変わったことはありますか?
Ryoji:実は、制作の段階ではまだSHINKAIさんが加入することは決まっていなかったんで、僕が全部弾いています。今までもそうだったんですけど、僕は常にバッキングの上にあるリード・ギターを弾くスタイルなんです。オーケストラで言うところの第1ヴァイオリンみたいな。ライヴではバッキングはどうしてもコンピューターにお願いしちゃう部分があったので、今回はその部分をSHINKAIさんが弾く形になりますね。次回からは、さらにツイン・ギターらしいものにすることもできるので、いろいろな可能性が広がったのではないかと思います。
-では、今後もリード・ギターはRyojiさんがメインで担当される体制ですよね?
Ryoji:そうですね。今回はクリーン・ヴォーカルも多いですけど、リード・ギターを弾きながらのグロウルも他にいないと思うので続けていこうかと。あとは、さっきも言った通り他の楽器をやっても面白いだろうっていうのは考えてますね。
-タイトル・トラックとなる「Asian Chaos」では、泣きのメロディがイントロから最後まで通底していて、新体制ではありますが、GYZEらしさはむしろ芯がより太くなってきたのかなと感じました。
Ryoji:そうですね。今回は、すべてにおいて"どうすれば日本人のDNAに語り掛けるようなものになるか"っていうことをすごく研究してて。そうなってくると、音を詰めるよりも抜いていったり、壮大な音にしていったりっていうことを考えて作っていくんです。全部最初は鍵盤で作っちゃって、そこから肉づけしていくんですけど、この曲に関しては、言語化するのが難しいくらいマジックがあった楽曲だったんですよね。冒頭のインスト曲も、北海道で震災があって2日間くらい電気が使えないときに、なんとなく頭に浮かんだのを曲にしたもので。その続編というイメージで今回のタイトル・トラックを作ったんです。
-イントロが初めにあったんですね。そして、この曲に限らずですけど、音がすごくタイトですよね。上モノが多いなかでリズム隊の音が負けてないというか。
Aruta:そうですね。改めてベースの大事さは感じました。やっぱり1音違うと雰囲気が変わってしまうし、どの音符で刻むかっていうのでメタル感が変わってくるので。そういうところに気を使いつつ、あとはRyojiと話しながら"次はこんなふうにやってみて"、"OK"みたいに、その場その場で進めました。
Ryoji:音程は、基本僕があらかじめプログラミングで作っていくんですけど、そこから生で弾くことの良さを引き出さないとダメなんで、人間ならではのアレンジをどんどん足してっていうやり方ですね。
-では、デモの段階とはベース・ラインも結構変わってるんですね。
Ryoji:もちろん。まず音が変わってますね。突き詰めていくと同じ8分を弾くにしても強さによって印象は変わりますし。今回はその次元で、ベースに対しても高い要求はしています。
-この曲で途中に入ってくる中性的なヴォーカルはどなたなのでしょうか?
Ryoji:ミュージック・ビデオにも出てくるんですが、あれはウクライナ人で、僕の妻なんです。ユニゾンでクリーン・パートを歌ってて、低い方は僕が歌ってます。
-奥さんだったんですね。
Ryoji:ピアノも弾けるのでいろいろな音楽的アドバイスもくれて、あとは英語の先生もやってるので、海外とのやりとりとかもしてもらっています。
-制作に関しては3rdアルバムから引き続き、Ahti Kortelainenがミックスを手掛けていますね。
Ryoji:引き続きではあるんですが、今回はオーケストレーションとか楽器も特殊だったので、リード・ギターとオーケストレーションは僕がバランスを取ったものを送っていて。彼がバランスを取ったのは、ドラム、ベース、あとはバッキングのギターっていうところですね。
-基本的な部分ですね。
Ryoji:そうですね。細かいキーボードの調整とかはできないと思ったので、僕がやってしまっています。
-続けて器用されているということは、Ahtiとの制作は得られるものがあるということでしょうか?
Ryoji:なんとなく親近感じゃないけど、もうシングル含めやってもらっているから、コンタクトが取りやすいっていうのもありますね。
-そもそも最初に依頼したきっかけは?
Ryoji:SONATA ARCTICAの1stアルバム(『Ecliptica』)がすごく好きだったんですよ。そのアルバムがAhtiのスタジオで録られてて、ミックスとかもやってて......それで"やってもらいたいな"と思ったのがきっかけですね。
-今作は一緒にやりやすかったですか?
Ryoji:今回は、めちゃくちゃディスカッションしましたね。こだわりがすごくあったので、ミックスのジャッジも、龍笛奏者の中川さんも立ち会いつつ、意見出しつつ、ほぼメンバーみたいな感じで一緒にやってました(笑)。すごく細かい調整もしてるので、むちゃくちゃ時間はかけてますね。そこまでしてなんとか理想の状態になりました。
-なるほど。そしてまた楽曲の話に戻りますが、「Eastern Spirits」では、アプローチは違うのですが、トライバルなサウンドの導入の仕方が、北海道でも共演したCHTHONICに通じる部分があるなと思いました。
Ryoji:CHTHONICの曲は本当にあんまり知らないんですよね(笑)。
-そこは不思議ですね。
Ryoji:ただ、あの曲はMIDIで作ってたときに、なぜか冒頭のメロディが日本列島みたいな形になってて。で、曲も日本っぽいし、面白いなと思っていて、それをそのままGYZEのスタイルに持っていったという感じですね。大河ドラマ調のような雰囲気をイメージしていました。神秘的でありつつ、バトル・ミュージックでもあるような感じにしたいかなと。
-「Dragon Calling」は、ケルティック・メタルにも通じるサウンドで、北欧っぽさもあり、特にヨーロッパでウケそうだなと思いました。
Ryoji:たしかにフィンランドの友達とかには、この曲の評判がいいですね。
-制作において、自分たちが回ったエリアを意識したことはあるのでしょうか?
Ryoji:これも全部ピアノで作っていて、Aメロ、Bメロとかは、どちらかと言うとスラブ的な民族っぽいアプローチっていうのを考えてましたね。だけどベースにあるのは日本的なもので、ギター・ソロは、あらかじめ"ヨナ抜きでやるとどういう感じになるか"って考えながら鍵盤で作っていて、それを演奏してるんです。なので、特にヨーロッパでウケることは意識していなかったですね。ただ、"70000TONS(70000TONS OF METAL)"で初めて披露したときにすごくウケが良かったので、それもあって入れた曲です。
-なるほど。「Japanese Elegy」はすごくストレートでライヴ映えしそうだなと思いました。直訳すると"日本の哀歌"にはなりますが、すごくエネルギーに溢れたトラックで盛り上がれそうです。
Ryoji:あれも冒頭のメイン・テーマのフレーズでヨナ抜き音階を使ってるんですけど、そういう日本的なものは意識して作ってますね。あとは、途中で般若心経を入れるとか、リフもヨーロッパ人がやらないアプローチをしていて、日本人ならではのヘヴィ・メタルのスタンダードにしたいと意識してやっています。あの曲はああいうアレンジだから勢いのある感じになってますけど、ピアノで弾いてみるとすごく哀愁のあるものになるんですよ。あとは歌詞の内容もタイトルに相応しいものになっていると思います。190BPMになってるんですけど、それってGYZEのスタンダードなんですよ。たしかにライヴで盛り上がるテンポなんですよね。