INTERVIEW
RYUJIN
2024.05.09UPDATE
2024年05月号掲載
Member:Ryoji(Gt/Vo)
Interviewer:米沢 彰
-その通りなんですよ。ちょっと脱線しちゃいましたが、「Saigo No Hoshi」はアルバムでは日本語版が本編に収録されてて、ボーナス・トラックとしてMatthewが参加している英語版が入っていますね。この2バージョンができた経緯をうかがえますでしょうか?
Matthewが最初に自分でヴォーカルをつけて送ってきてくれて。僕にそういうふうに歌わせたかったんだと思うんですけど、それを弟に聴かせたときに"これ結構気合入れて録ってると思うから譲ってあげなよ"って言われたんですよね。Matthewも本当に気に入ってたっぽいし、それもいいかなと思ったんですけど、Matthewからは"日本語で歌ってはどう?"って話をされて、オリジナルは日本語っていうことになったんです。
-なるほど。そこもMatthewとの作業でそれぞれのバージョンができたというところですね。
そうですね。リスナーにとっても同じ楽曲なのに言語が違うとどう聴こえ方が変わるかって考えたら面白いと思うんですよね。日本人が日本語バージョンを聴くとJ-POPに聴こえると思うんですけど、海外のファンからは"SAMURAIバラードだ!"みたいなコメントがついてたりもしていて。
-面白いですね。MVではチェロの奏者も出てきて。
「Kunnecup」でも弾いてくれてる向井さんがチェロを弾いてくれてて。彼は千歳という僕と同じ街に住んでて、基本関西フィル(関西フィルハーモニー管弦楽団)で弾いてるんですけど、最近はジブリの最新作("君たちはどう生きるか")でも弾いてたりとか、久石 譲さんのコンサートでもチェロを演奏した方なんですが、ロックも好きなんですよね。すごく馬が合うので今回参加していただいたんです。
-曲のテーマが平和を願う内容で、チェロ奏者も参加したMVってなると、破壊されたウクライナの都市でバッハをチェロで演奏した動画を思い出しました。
それは観たことないかも。
-爆撃で瓦礫になったところで、ウクライナ人のチェロ奏者が曲を弾いている動画があって、めちゃめちゃ響くんですよね。それとすごく一致してるなと思ったんですけど、偶然だったんですね。
たまたまですけど、ちょっと世界情勢についての僕のスタンスも入ってたというのはありますね。前作の『ASIAN CHAOS』とかもそうだけど、基本的に僕らは攻撃性よりも平和を願いたいっていうメッセージなんです。優しい系メタルなんで(笑)。僕の中に常にある普遍的な平和への願いとか、歌詞の内容とかいろんな背景が入ってきてて。僕は日本人でMatthewは日系アメリカ人で、例えば第2次世界大戦的なこととかも人によって考えてもらえるかもしれないし。いろんなことを考えていた曲ですね。
-Track.10「Ryujin」は7分超えの大作ですね。バンド名と同名のタイトルを付けるのは結構冒険になるのではないかと思いますが、そういう思いはありませんでしたか?
僕としては大作っていう思い入れは、以前出したシングルの「Oriental Symphony」(2021年3月リリース)で完結してたんですけど、またちょっと違ったアプローチで、僕のやりたい壮大な感じのメタルは表せたとは思うんです。でもすごく難しい曲でした。いろんな自分なりの実験をしたから。
-単純に長いってのもありますし、展開もすごく多いので。
最近は短い曲のほうがいいのかもなと思ったりするんですよね。でも、聴かれる聴かれないは別として、曲として長くてもちゃんと成立する楽曲をきれいに作りたいという欲は常にあります。
-国内盤ではCHILDREN OF BODOMの「Everytime I Die」のカバーが収録されてます。この曲をセレクトした意図や経緯をうかがえますでしょうか?
これは、Alexi(Laiho/Gt/Vo)が亡くなったっていうことがひとつなのと、楽曲の指定は実はこれもMatthewなんですよ。カバー曲が必要だみたいになって、MatthewからはCHILDREN OF BODOMの「Everytime I Die」がいいっていう。僕とか日本人からすると「Needled 24/7」とか速いほうが好きじゃないですか。「Everytime I Die」のゆっくりな感じって、そこまで日本人に刺さるタイプではないと思うんですよね。
-ちょっと玄人好みですよね。
そうですよね。ただ、外国だとあれが一番回ってたりとか、趣味嗜好の違いが表れるんだなって。僕、結構チルボド(CHILDREN OF BODOM)の曲は弾けるはずなんですけど、あの曲だけカバーしたことないんで1から覚えました。
-昨年末にかけて、かなり長期のヨーロッパ・ツアー"I Am On Tour"を回っていましたよね。コロナが明けてようやく精力的にツアーも回れるようになりましたが、手応えはいかがでしたか?
前回("GYZE The Rising Dragon Tour Europe")よりも楽曲に対してすごい誇りをもって演奏できたっていうのはありますね。バンド全体っていう意味ではTHE AGONISTのSimon(McKay)にドラムを叩いてもらったりとかもしましたけど。でもマーチャンダイズもすごい売れたし、ファンの方々からのリアクションもすごい望んだ通りのリアクションで。あとは一緒に回ったENSIFERUMは音楽性の相性もRYUJINとすごくいいし、すごい日本の文化を好いてくれてて、ツアー・バスも一緒だったからすごいいろんなことを喋ったり、いい時間過ごせました。どちらも自国のフォーク要素とメロデス要素のバランスが似てて、"SAMURAI & VIKING"みたいな関係性で彼らと一緒にできたのは本当に良かったです。
-ドラムの話が出ましたが、最近のMVでも叩いているのはShujiさんですよね?
そうですね。バンドのオリジナル・メンバーは結成時から変わらずShujiですけど、Shujiは海外ツアーには参加しないんですよね。これからも含めて。
-そこは変わらずですね。でも見た目は滅茶苦茶変わりましたよね。
そう、肉体改造したんですよ。
-最初、違う人かと思ったぐらいでした。
そうですよね。Shujiのドラムは今すごいですよ。日本人であの音を出せる人はいないと思います。
-和太鼓叩いてる姿とかもめちゃくちゃ似合ってて。体格から変わりましたよね。
もともとリズム感もすごい良かったけど、さらにあの体格も手にして、今はすごいですね。本当はShujiも一緒にツアー活動とかできたらベストなんですけど、みんな無理せず。僕ら無理せずやる感じなんで。
-今後のライヴ活動について決まっていることがあれば教えてください。
決まってるのが、夏に"Bloodstock(Festival)"とかスペインの"Leyendas del Rock"とかのフェスで。これから何か追加されるのかわかんないし、まだ全然発表しないし決めるかもわかんないんですけど、早ければまず年内に4~5年ぶりにShujiも含めて東京とかでの公演ができたらなぁと思っています。今バンドの有料コミュニティ(GYZE Village)みたいなのがあって、まずはそこの方向けになっちゃうかもしれないですけど。でも、落ち着いたときにはちゃんと全国ツアーもしたいなと考えています。ただ、そこまで急いでない自分たちもいるんですけど。
-最後にバンドの今後の目標や目指していることなどうかがえますでしょうか?
自分たち専用のステージを作りたいんですよ、地元で。自分たちの所有してるステージがあって、機材もすべてが整ってたら、Shujiはもちろん、普段参加できないメンバーも一緒にやれて、なおかついいクオリティで配信もできるわけですよね。バンドとしては、1年に1回ぐらいは世界中回れたらラッキーかなぁと思うし、やっぱり一番大事なのは幸せを感じることなんです。無理しないことなんですよ、本当に。情熱をキープしたまま楽曲を書ける状態を保つっていうのがやっぱ一番で。それこそ今日(※取材は4月中旬)だったらね、アーティストの訃報とか見ちゃうとなんか余計そういうことを思っちゃうんですよ。本当に今は時代の転換期な気がしてるんです。無理しないで活動するってのは本当にこれからのキーワードになると思います。
-これはRyojiさんじゃないとなかなか出てこない言葉ですね。
海外のマネジメントとも話してて思うけど、今って海外の人も含めてみんな無理してるような気がしないでもなくて、僕は無理しないでほしいなっていう気持ちが強いですね。メンバーのShujiも一回メンタル面での危機があって、そういうのを目の当たりにしてたから出てくる感情だと思います。