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INTERVIEW

ステミレイツ × アイリフドーパ

2023.12.15UPDATE

2023年12月号掲載

ステミレイツ × アイリフドーパ

ステミレイツ:ゆきっぺ(Vo) 輝星(Gt) あやのん(Key/デスボ) あきら(Ba) ごみちゃん(Dr)
アイリフドーパ:Eyegargoyle(Vo) RedZibra(Ba)
Interviewer:山口 哲生 Photographer:Kanda Yukiya


自分で自分のジャンルを決めすぎちゃうといかんのですよ(Eyegargoyle)


-では、次の質問はゆきっぺさんいきましょうか。

ゆきっぺ:曲を聴かせていただいたんですけど、「Edo Word」(2023年4月リリースの『ブレイン E.P.』収録)の"禁中並公家諸法度"とか、「Shimokitazawa」(2017年リリースの3rdシングル『BONUS』収録)の"下北沢には住めん"とか、すごく印象的な歌詞が多くて。私も作詞をさせてもらっているんですけど、そういうワードが先に出てきて曲を作るのか、曲の雰囲気があって言葉がついてくるのか、どうやって書いているのか気になりました。

Eyegargoyle:ああいうのはワード先行ですね。「Shimokitazawa」は、当時下北沢がめっちゃ嫌いだったんであれを書いて。あれを普通に日本人が歌っていたら叩かれるかもしれないけど、俺が歌っているからギリ許されるっていう。"お前、その顔で何言うてんねん"みたいな。俺はわりとズルいキャラだと思ってますね。関係者にも"お前はその顔で日本語喋ってるからおもろい"って。「Machu Picchu」(2018年リリースの3rdアルバム『OXYGEN』収録曲)とかもそうだけど。

RedZibra:基本語感だよね。

Eyegargoyle:うん。「Edo Word」も、江戸弁をとにかく並べてるんですよ。

ゆきっぺ:"さっき調べた"みたいなのが出てきて、"おもろっ!"と思って(笑)。

Eyegargoyle:浅々なんで、ミーハーな知識をめちゃめちゃ並べまくって、最後に"墾田永年私財法"で終わるっていう。あれは奈良時代のやつだから、もう江戸とか全然関係ないっていう。

ごみちゃん:オチが毎回面白いですよね(笑)。

あやのん:もうセンスよな。

輝星:遊び心があるよね。うちらはまだそういう遊んだ歌詞がないので。

あきら:そうだね。ガチガチだから。

Eyegargoyle:そういうのもやりたいんですか?

あきら:やりたいです。

輝星:私もやりたいけど、歌詞を書く側としてはどうなの?

ゆきっぺ:全然やってみたい。また違ったライヴの盛り上がりになりそうだから。語感がいいと乗りやすいというか。

RedZibra:ああいうフックをお客さんが覚えてくれたり歌ってくれたりするから、ライヴもそれで楽しかったりするし。

Eyegargoyle:やっぱギャンブラーに刺さるやつとか書いたほうがいいっすよ。

RedZibra:たしかに。

輝星:作詞始めようかな。

Eyegargoyle:あとライヴ中に競馬するとかね。"この馬に賭ける!"って、間奏とか曲中で実際にやったりとか。

輝星:たしかに! いいですね。そういう歌詞をお願いします(笑)。

ゆきっぺ:競馬全然わからないから調べて、ひたすら並べて、"調べました"っていう(笑)。

Eyegargoyle:はははは(笑)。競馬場でライヴとかもいいですよね。レース中の曲として。

輝星:あぁー! めっちゃいいですね。デスボで"差せー!"とかずっと言っててほしい。

RedZibra:いいですね(笑)。それめっちゃいい。

Eyegargoyle:こうやって曲って生まれるんすねぇ(笑)。で、「(走れ)マキバオー」みたいなイントロから始めたりとか。

RedZibra:もうお前が作ればいいじゃん(笑)。

ステミレイツ一同:お願いします!!

Eyegargoyle:人にアイディアだけ提供して自分はノータッチっていう(笑)。

-語感のいい歌詞を書くためのコツとかってあったりするんですか?

Eyegargoyle:いやぁどうだろ、そこはセンスなのかな......。

RedZibra:会話で耳に残ったワードの形を変えて曲にしたりしてない?

Eyegargoyle:あぁ、してるしてる。会話ってやっぱりリズムなんで。前に友達と電車で喋ってたときに、前後はまったく覚えてないんだけど、"カズマの好きなチーズが~"みたいな話をしてて。カズマの好きな、チーズ......(※徐々にリズムに乗りながら)......カズマの好きな、チーズ......カズマの好きな、チーズ......。

ステミレイツ一同:おぉー!

Eyegargoyle:それで「Lemon」(『OXYGEN』収録)っていう曲ができたりとか。あと、しるこっていう人がいて、"え、しるこ仕事辞めるの? まーじで?"、"え、しるこ仕事辞めるの まーじでー?"っていうのが「MARS」(2016年リリースの2ndシングル表題曲)って曲になったり。そういうのを繋げて無理やり曲にしていくっていう。

ステミレイツ一同:すごい!

あきら:日常に転がってるものなんですね。

Eyegargoyle:だからもっとおもろい会話、リズミカルな会話したいなって。芸人さんのリズム芸みたいなものに近いのかもしれないですね。

-パッと耳にしただけなのに残ったから、そのワードにはキャッチーさがあって、みたいなところもあるんですかね。

Eyegargoyle:そういうのもあるし、あと何も思いつかないときは、街で見かけた看板に無理やり音程をつけるんですよ。昔、看板を探して秋葉原をうろうろしてたときに"(Volks)Hobby Paradise"っていうのがあったんですよね。秋葉原Hobby Paradise。それを「Edo Word」の途中に入れてたりとか。

ゆきっぺ:すごい......!

Eyegargoyle:歌詞が出てこないときは、とりあえず何かに無理やりメロディをつけて、それをあとからいじくるっていうのはしたりします。

ゆきっぺ:(ステミレイツは)今は曲が先だからね。

輝星:うん。そこに歌詞をつける感じなので。(競馬の曲も)たぶんいけると思います。

ゆきっぺ:名馬の名前を調べとく。

輝星:ファンファーレの音を入れたいよね。

-1曲できましたね。

Eyegargoyle:良かった、いい場になった(笑)。

-(笑)最後の質問はごみちゃんさんから。

ごみちゃん:聞きたいと思っていたことがすでに聞けちゃったところはあるんですけど(笑)。曲の展開がすごく多いだけじゃなくて、映像の引き出しもすごくたくさんあるなと思ったので、普段どういうインプットをしているのかなって気になりました。歌詞についてはお聞きできたんですけど、映像はどうやって考えてるんだろうなって。

Eyegargoyle:MVは、初期の頃は俺が作っていたんですけど、途中からは人に投げたほうがいいやってことになって。でも、頼むときはビデオコンテを作ってます。例えば、こういう感じの映像をつけたいっていうのがあれば、それをリファレンスとして引っ張ってきたりとか、映像がなければ"右手が巨大化して壁を殴る"とか、そういうのをテキストで書いたり。そっちのほうが明らかにクリエイターの人に伝わるので。

ごみちゃん:そういう発想ってどこから生まれたりするんですか?

Eyegargoyle:これはもうパッと出てきちゃうとしか言いようがないんだよなぁ......。

ごみちゃん:もうセンスで。

Eyegargoyle:映画はちょこちょこ観てるから、そういうところから入ってきているとは思うんですけど。

ゆきっぺ:なんか、そういうことを考えたことがない映像が多くて。楽器を弾いている人の爪の中に世界があって......とか。

Eyegargoyle:あぁ、「Lemon」の。あのときはビデオコンテじゃなくて、僕が絵コンテを描いてて。5時間ぐらい(カフェ・)ベローチェにいたのかな。

輝星:でも5時間でできたんですね。

Eyegargoyle:あれはどんどん画が出てきちゃったんで、とりあえず描きまくった感じ。こういうものが作りたいっていうよりは、ただ出てきたものを描いたって感じだったから。

ごみちゃん:小さい頃からそういうアイディアがすぐに出てくるタイプだったんですか?

Eyegargoyle:うーん、なんか歩いているときに、ARじゃないけど、現実を拡張して見たりとか。点字ブロックがボコボコボコ! って浮いて、ふわぁ~って回って、ヒューン! って飛ばしたりとか。あと、遠くのほうにあるビルを踊らせたりとか。

ごみちゃん:すごい! 考えたことない! 芸術家ですね。

Eyegargoyle:なんか、脳の体操をしているというか。そうやって使っていないと、角栓じゃないけど、脳にもコルクみたいな栓がポポポポ! ってできるような感覚があって。俺、"脳栓"って呼んでるんですけど、それをどんどん抜いていかないと、(脳の)シワがなくなっちゃうからって。

輝星:すごいなぁ。

Eyegargoyle:俺が考える「Machu Picchu」とか「Edo Word」とか、正直そんなに(歌詞の)中身はないのかもしれないけど、別に無理に意味とかつけなくて良くね? と思っていて。聴いてくれた人がそこに意味をつけてくれれば、それでいいわけで。だから、アイリフドーパの曲を考察してくれる人とかいるんですけど、そういうのを見るのも好きなんですよ。うちのコメント欄って、大喜利みたいになったりしてて。「Lemon」のときも、"これが米津玄師の「Lemon」ですか"とか。

ステミレイツ一同:ははははは!

Eyegargoyle:"夢ならばどれほどよかったでしょう"とか。

ごみちゃん:あれ面白すぎました!

Eyegargoyle:センスがあるんすよね。そういうコメント欄で良かった(笑)。

ごみちゃん:やっぱり出している人にユーモアがあるからですよね。

-意識的に何かをインプットしているというよりは、日常的に触れているものとか、現実で見ているものから妄想を膨らませたりすることが多いと。

Eyegargoyle:そうですね。リファレンスを引っ張ってくることもあるけど、それ以外は基本的には思いつきです。

ごみちゃん:妄想ぐせをつけます。妄想遊びみたいな。

Eyegargoyle:あとはいいクリエイターと繋がることですよね。「Lemon」のときも、俺が絵コンテをぶっ飛ばしすぎちゃったから、"こんなんもう作れまへんがな!"ってなっちゃって。理想を突き詰めすぎると、そういう人的トラブルもあったりするんで。でも、今は俺が作りたいものを120パーセントでアウトプットしてくれるクリエイターの人と繋がれたので、運がいいなと。YouTubeのほうは誰が編集してるんですか?

輝星:全員交代でやってます。

Eyegargoyle:すごい。全員編集できるんだ。

輝星:MVに関しては自分たちでなく、プロのチームにお願いしてます。

Eyegargoyle:別の人がやっていて。

輝星:そうです。そこもいつか自分たちで挑戦できたら、YouTuberらしい一面とバンドらしい一面を同時に出せるかもしれない。

Eyegargoyle:たしかに。急に画質変わりまくるとか。"みんなFinal Cut(Pro)なのに、ひとりだけiMovie使ってるやついるぞ!"とか。

ステミレイツ一同:はははははははは!

Eyegargoyle:"トランジション雑やん!"みたいな。

ゆきっぺ:そこは人によって出ますね(笑)。

ごみちゃん:でも、あえていいのかもって思ってきた(笑)。

Eyegargoyle:そこはちゃんと説明しておけば大丈夫。今の時代、説明しないで出すと事故るけど。むしろちゃんと説明しないとマジで伝わんないし、こっちの意図と逆で受け止められたりするから。

輝星:たしかに。

Eyegargoyle:それこそ「Shimokitazawa」を出したときは、いっぱい勘違いされましたから。"(アイリフ)ドーパはこっちの方向で行くんだ"とか、"うるさいほうが良かったのに"とか。あとは、バラードを出したら"そっちのほうに行くんだ"とかね。"たまたまそういう曲出しただけやん! 全曲そうなるわけないやん!"っていうのは結構あるんで。

-ステミレイツとしては、そういった勘違いとか誤解みたいなものを受けることってあったりします?

ゆきっぺ:うちらはまだそこまで曲がないですからね(笑)。

輝星:全部似たテイストなので、あまり言われないかも。バラードがまだうちはないんですよ。だからあまり思われてないです。

ゆきっぺ:視聴者の人たちも、まだ慣れているところというか。私たちのYouTubeを観て入ってくる方は、たぶんこういうジャンルを新しく聴く方のほうが多いと思うので。だから、まだYouTubeを観て、"あぁ、こういう音楽をやっているんだ"っていうところだと思います。

-冒頭でアイドルとして見られがちというお話もありましたけど、"そういうことを言われることもあるよな"ぐらいの感じで受け止めていることが多いですか?

ゆきっぺ:アイドルと言われることに対して、嫌だなって思うことはそこまでなくて。どちらかと言うと、いろんな界隈の方に触れてもらえたらいいなと思っているので、アイドルと言われて、それで受け入れてもらえるのであればいいかなって思ってます。

ごみちゃん:もちろん超えてはいきたいんですよ。"アイドルって思っていたけど、いや、これはアイドルじゃないわ"っていう目標は絶対持っておきたいけど、自分たちのことをどう見るのかは、その人に判断を任せることになるので。その判断を、より自分たちで上げていきたいなっていうのはあります。

Eyegargoyle:わかるー! 自分で自分のジャンルを決めすぎちゃうといかんのですよ。

RedZibra:僕らは"ロック・バンド"としか言わないようにしました。

Eyegargoyle:昔は"ド変態エンターテイメント・メタル・バンド"だったんですよ。

ステミレイツ一同:えぇー!?

Eyegargoyle:リスナーを絞りすぎて、ニッチ・オブ・ニッチに行っちゃったんで。ジャンルを自称してると、"ド変態エンターテイメント・メタル・バンド? よくわからん。聴くのやめとこ"ってなるけど、ラーメンだと思ってもらうっていうか。ラーメン二郎ってあるじゃないですか。あそこって食券のところに"ラーメン"としか書いてないんですよ。でも、押すとあれが出てくる。それでいいじゃんっていう。"ロック・バンド、なんだろう"、これが出てきましたっていう。

輝星:土俵は広いほうがいいですよね。

Eyegargoyle:そうそう。ジャンルを自分で決めすぎないっていうのは、全バンドマンに伝えたい。

RedZibra:そのおかげで、対バンとかもいろんなジャンルの人たちとできるようになってきたんで。アイドルさんとも対バンしますし。

輝星:ぜひ私たちとも対バンしてください!

-RedZibraさんは、映像とかではないにしても、意識的にインプットしているものとかってあったりします?

RedZibra:僕は曲を作ってないからあれなんですけど......ないな(笑)。

Eyegargoyle:キャラクターは"IT"でしょ?

RedZibra:違うよ(笑)。インプットか......あ、普段の鬱憤をライヴに全部持っていっている感じはありますね。

-鬱憤をインプットしておく。

Eyegargoyle:ストレス貯金をするんだ?

RedZibra:そう。ストレスばっかです(笑)。

Eyegargoyle:ライヴが有意義なものになりますからね。

RedZibra:ライヴを一番楽しい日にするという考え方で生きています。