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INTERVIEW

ナノ

2023.02.08UPDATE

ナノ

Interviewer:吉羽 さおり

歌と出会ってなかったら、自分は本音を外に出せない性格のままで生きちゃってただろうなって。でも、歌だったら人の弱さも強さに変えてくれるんです


-作曲でJ-POPのヒット・チューンを多く手掛けるCarlos K.さんに白羽の矢が立ったのは?

これも偶然の出会いというか、新しい方とやってみたいなって思いがあったなかで、制作スタッフさんからの提案だったんです。初めてデモが来たときにほんと笑うくらいかっこいいものが来て、マジですか!? っていう感じでしたね。もうそのデモ段階でこれはヤバイ曲になるなという自信がありました。

-そのうえで、タイトルにある"Vanguard"という言葉はどの段階で出てきたんですか。

これは、実はデモが来たときに仮歌が入っていて。Carlos K.さんからは、歌詞に関しては無視してくださいって言われたんですけど、"Bad girl, Bad girl"って入っていたんです。自分はその"Bad girl"がなぜか"Vanguard"にずっと聞こえていて、耳に残ってしまって。DEMONDICEさんとテーマを考えていたときに、"Vanguard"ってそういえばどういう意味だっけ? って思って調べたら、まさに運命かのように、自分がDEMONDICEさんと一緒に世界に発信したいテーマそのものだったんです。先駆者とか人を引っ張っていく人たちという意味合いがあって。これだ! と思って。この言葉が、他の歌詞より何よりも決まったところだったんです。

-サウンドも含めてこの言葉がピタッときますよね。前衛という意味もあるので、いろんなものをぶち壊していく力がこの曲にあって。

そうですね。"Bad girl"よりは、らしいかなと(笑)。

-たしかに、ナノさんが"Bad girl"はちょっと想像がつかないです(笑)。

そこは嘘になっちゃいますよね(笑)。全然Badでもないから。早くみんなの反応を知りたいです。特にアルバムの中では、海外の人たちに刺さるんじゃないかなと思うのでその反応が楽しみで仕方ないです。「We Are The Vanguard with DEMONDICE」は、英語ネイティヴの人たちだからこそできるタイプの曲だと思うんです。DEMONDICEさんはアメリカ出身で自分もアメリカ出身で、その独特のノリというのがあると考えているんですよ。ナノたちにしか生まれなかったマリアージュというか、ノリができたんじゃないかなって。

-そして草野華余子さん作曲による「Heart of Glass」は、どういう感じでスタートしたんですか。

草野さんもこちらからのラヴ・コールでした。まだナノを知らない人でも届いてくれるような曲が欲しいなと思ったときに、草野さんにはそのパワーがあるなと思っていて。メロディも曲調もそうですし、邦楽なんだけど、海外の人たちにも受け入れられやすい曲を書けるタイプのクリエイターさんだと思っていたので、ダメもとでお願いをしたんですが、OK! って返ってきて、すごくいい人なんですよね。めちゃくちゃ優しくてフレンドリーな人でびっくりしました。

-そうだったんですね。今回クレジットで草野さんの名前があったのを見たときに、絶対にナノさんと合うなっていうのは思いましたよ。もともとの草野さんが描くエモーショナルな曲に、ナノさんの声や歌はぴったりじゃないかなっていうのは、曲を聴く前からありました。

嬉しい。しかものこの曲は一番パーソナルな曲なんです。

-はい。まさに最初に言ったたような素の部分、言葉をより感じます。

デビュー前のナノに一番近いタイプの歌詞でもあって。デビューする前はアニメのタイアップとかも何もないので、素直で生々しくて、自分だけの歌詞だったんですよね。それに一番近いタイプの曲だし、自分のためだけの曲が欲しいと思って書いたのがこの曲だったんです。"Heart of Glass"というタイトルもすごくパーソナルな意味合いがあって。自分は結構強がる性格で、周りにもいつも強いねって思われていて、何があっても立ち上がれるでしょうと思われがちなんです。でも子供の頃、母親がインドに行ったときに、インドの占い師が私のことを占って、"お子さんはめちゃくちゃガラスの心ですよ"って母に言ったんですよ。母はそのとき思いもしなかったと言っていて。自分の子供がガラスの心だなんて思ったこともないし、むしろ強い子だって考えていたのが、そう言われてハッとしたって言っていて、それを聞いたときに"本当にそうなんだよ(泣)"って思いました。

-周りにはそういう部分は見せていなかったんですね。

それでホッとしたんです。弱さを受け入れてもらえた瞬間というか。そこからガラスの心、"Heart of Glass"という言葉がずっと残っていて、今回曲になって。

-歌の世界だったら、そういう心の内を載せてもいいかなというのはありますかね。

そうですね。歌と出会ってなかったら、自分は本音を外に出せない性格のままで生きちゃってただろうなって。でも、歌だったらただの弱音にならないじゃないですか。誰かがこれを聴いて勇気を貰えるかもって思うとただの弱音じゃなくなるのが歌の魅力。人の弱さも強さに変えてくれるんです。

-また、Tom-H@ckさんの曲とナノさんという組み合わせが面白いなと思ったのが、こちらもコラボ曲で「Broken Voices with KIHOW from MYTH & ROID」です。

これも念願叶ってのコラボですね。MYTH & ROIDのKIHOW(Vo)さんとはもともと仲が良くて、これもご一緒させていただいてから仲良くなったんです。本当に自分としては珍しいくらいプライベートでも仲良くしていて(笑)。ずっと一緒に何かしたいというのはあったんです。KIHOWさんとはジャンルは違うけれど、ダークさというか音楽的なかっこ良さは共通点だなと感じていて。絶対に一緒に歌ったらかっこいいものになるなって思って、今回のコラボ曲の中で初めに声を掛けたいと思ったのがKIHOWさんだったんです。作曲のTom-H@ckさんは、(MYTH & ROIDでも一緒なので)KIHOWさんの特徴を掴んでいるし、今までにないナノの曲を書いてくれるだろうなということでお願いをして。制作は楽しかったですね。初めましてよりも、ちょっとお互いを知っているほうが一歩その先に行けるというか、短時間でいいものができる気がしていて。

-ふたりだからこそ歌いたいものっていうのはありましたか。

どのコラボもそうなんですけど、歌詞は完全にそれぞれその人に向けて自分が書いたものになっていて。DEMONDICEさんとの曲も、今DEMONDICEさんはこういう姿勢で世の中に音楽を発信しているんだろうなと思っての「We Are The Vanguard」で。KIHOWさんとは、制作の直前にMYTH & ROIDのワンマンに行って。ワンマンで観るのは実は初めてだったんですけど、ものすごくいい意味で闇を感じたというか。この人は闇に寄り添うタイプのアーティストなんだなっていうのをすごく感じたんです。そこに救われる人のために歌っているんだなって。この「Broken Voices」はきれいごとじゃない本音を歌っているという意味での"声"や、KIHOWさんの世界観を想像して書いた歌詞だったんです。

-ナノさん自身の内側にも、それはあるものですよね。

そうですね。一見雑音とか汚い音に聞こえるものが、重なり合って奏でられると、すごく美しいメロディになったりもする。ナノとKIHOWによる苦しい声、そのふたつがひとつになったときに、逆にものすごくきれいなものになる可能性を願って、ということでした。

-またもう1曲コラボでは、「A Nameless Color with __(アンダーバー)」があります。これは曲の頭にセリフみたいなものが入っていて、賑やかですね。

あれは最後の最後で自分の思いつきだったんです(笑)。__(アンダーバー)君と初めて一緒にコラボをした「第一次ジブン戦争 (ナノfeat.__(アンダーバー))」(『nanoir』収録)という曲があるんですけど、その曲があってこの曲が生まれたと言っても過言ではなくて。あのアンサー・ソングのような意味合いもあるんです。「第一次ジブン戦争」の頭の部分でもふたりではしゃいで楽しくしているんですよね。10年間応援してくれていたナノファンがこれを聴いたら、喜んでくれるかなって思って(笑)。

-レコーディングのいいノリも感じられますしね。

__(アンダーバー)君はそれこそ10年前から活動をしていて、ナノよりも少し先に10周年を迎えているんですけど。未だにミュージシャンをやっているという相手なので、ちょっと特別な存在なんですよね。彼も進化はしているけれど、ずっと自分のやりたいことを貫いていて。10年前に「第一次ジブン戦争」をやったとき、こんなふたりが今もフリーダムにわちゃわちゃやっているのを想像できたかなと。

-当時の自分たちにも10年後にはこんな曲をやってるぞって聴かせてあげたいですよね。

恥ずかしいけど、この歌詞も素直に__(アンダーバー)君を思って書きましたね。お互いにどんな色にも染まらないオンリー・ワンな色だからこそ、まだ残っているんだろうなっていう。

-そしてラストにくるのが「Circle of Stars」です。

これはファンのための曲です。アルバム『「N」』(2013年リリース)に「Remember, My Friend」というファンに向けて作った曲があって、またそういう曲を、この10周年でリニューアルしたいなって思って。自分はファンのみんなに支えられて今いるんです。たとえ10年前にナノのことを知らなくても、1曲でもダウンロードしてくれたり1曲でも再生してくれたりしただけで、ナノの世界は変わっていますから、感謝の思いが強いんです。タイトルの"Circle of Stars"は自分のファンクラブのタイトルそのものだし、歌詞の中にも恥ずかしいくらいに過去の歌詞とかがそのまま入っているんですよ。"you are not alone"や"you feel like the world's falling in"は「magenta (ナノ×ダルビッシュP)」(『nanoir』収録曲)からだし、"Remember, My Friend"や"Crossroad"(2012年リリースの2ndシングル『No pain, No game』収録曲)、"Milestone"(2017年リリースの4thアルバム『The Crossing』収録曲)、"Thousand Stars"もいろんな曲やライヴのタイトルでもあって、ファンの方たちがすぐにわかるもので、やるんだったら恥ずかしいくらいとことんやっちゃえ! という感じで。「Remember,My Friend」もアコギの曲で、この曲もアコギ基調となったのは偶然だったんですけどね。でもすごくリンクしたなというのはありました。

-リスナーと手を取り合って前を向いて走っていく感じがラストまで貫かれますね。このアルバムに"NOIXE"というタイトルが付けられましたが、どういう思いで"ノイズ"だったんですか。また、4月8日にはワンマン・ライヴ"NOTHING BUT NOISE"が開催されますので、そこへの想いも聞かせてください。

ちょうどカメラマンさんと制作やアートワークの打ち合わせをしていて、どんなテーマでやろうかというときに、自分の人生っていろんな雑音とかいろんなノイズでできているなって思ったんです。"ノイズ"と言ってもうるさいという意味だけではなくて、いろんな音が自分の人生を豊かにしているなって。アルバムもいろんな音が合わさって豊かになっていると思ったんです。それでタイトルをノイズにしたいって思ったんですけど、10周年だし、パッと見て10年ってわかりやすいのは"X"だから、これがちゃんとした発音になるかわからないけど、"NOIXE"にしちゃえっていうところだったんですよ。4月8日の久々のワンマン・ライヴも、"NOTHING BUT NOISE"でまさにノイズそのまま。盛りだくさんなライヴになると思います。これだけ新曲をたくさんできるライヴは久しぶりなので、進化した自分を届けたいですね。