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INTERVIEW

唯丸®︎(BLACKSHEEP SYNDROME.)× 鬱P(おはようございます/ボカロP)

2021.09.10UPDATE

2021年09月号掲載

唯丸®︎(BLACKSHEEP SYNDROME.)× 鬱P(おはようございます/ボカロP)

BLACKSHEEP SYNDROME.唯丸®︎による連続対談企画第6回のゲストには、ラウドロック・サウンドのボカロPの第一人者として知られ、バンド"おはようございます"のメンバーでもある鬱Pが登場。ルーツはそれぞれに異なりながらも、共に自分自身も表舞台に立ちながら、近年は別のアイドル・グループのプロデュースを担う一面も持つふたりであるがゆえに、クリエイティヴ面において大いにシンパシーの生まれた対談になった。

BLACKSHEEP SYNDROME.:唯丸®︎
おはようございます/ボカロP:鬱P
インタビュアー:吉羽 さおり Photo by fukumaru
取材場所:Music Bar ROCKAHOLIC-Shibuya-

-今回のゲストは鬱Pさんですが、唯丸®︎さんは、お会いするのは初めてですか。

唯丸®︎:実は、5月23日の渋谷CLUB QUATTRO("BLACKNAZARENE主催「Showdown vol,1」")で鬱Pさんサウンド・プロデュースのアイドル・グループ、Zsaszと対バンをしていたんです。

鬱P:よく覚えてます。僕は、ライヴの現場には月1回くらいしか行っていないんですけど、たまたまその日は行っていて。しかも女性アイドルが主催だったんですけど、女性アイドルも男性アイドルも出演するイベントで、珍しいなと思っていたんですよね。

唯丸®︎:今日はよろしくお願いします。改めてなんですが、鬱Pさんはいろいろな活動をしていますけど、そのスタートはボカロPですよね、そのルーツを知りたいです。

鬱P:もともとネットの文化やニコニコ動画とかが好きで。Flashとかは2002年くらい、小、中学生から始めていて、自分でホームページを作ってる友達と一緒に遊んだりサイトを作っていたりしていたんです。

唯丸®︎:早い!

鬱P:ニコニコ動画もβ版の頃からやっていたんです。そういうネット好きという素養はあったんですけど、それとは別にバンドもやっていまして。今のおはようございますのギターの梛は中学の同級生で、彼の誘いで中学2年のときに楽器を始めて、一緒にバンドを組んだんです。そのバンドは高校3年の受験で、いったんお休みになって。ものすごく暇になったので、ひとりで何かできないかなというときに、ニコ動(ニコニコ動画)で初音ミクが流行ってきているなというので、自分でソフトを買って始めたのが2008年の6月だったんですよね。

唯丸®︎:そこでの"鬱P"というお名前は、どこからなんですか。

鬱P:ニコ動のボカロの〇〇Pとかの"P"っていうのは"アイドルマスター"からきていて。"アイマス(アイドルマスター)"ではプレイヤーのことを"〇〇P"と呼んでいるんですけど、それの流れでVOCALOIDは初音ミクというアイドルをプロデュースするから、"なんとかP"みたいに名付ける文化がニコニコ動画にあるんです。

唯丸®︎:そういうものだったんですね。

鬱P:しかもそのタグは、本人じゃなくて、見ている人が名付ける感じだったんです。ピノキオピーだったら、最初の投稿作品が初音ミクの鼻が伸びてる画像があったので、これはピノキオだっていうので"ピノキオピー"という誰かがつけたタグがあって、そのタグをロックすることでその名前になるみたいな。梨本Pだったら、コメントの頭に"恐縮です"っていうワードが入っていたことから、("恐縮です"がおなじみだった)梨元 勝さんからとって"梨本P"と誰かがつけて、本人がそれを受け入れてみたいな感じで。なので僕も、誰かに"鬱P"と名付けられて、じゃあそれでっていう感じだったんですよね。というノリが、2010年くらいまではありました。それ以降の人は自分で名乗った名前でやっていたりしますけどね。

唯丸®︎:誰かに与えられた名前だったんですね。以前、けったろ(ROOT FIVE)さんと話したとき(※2021年7月号掲載)に言っていたんですけど、10年くらい前まではまだニコニコ動画で歌い手をやってるとか投稿をしているって、肩身の狭い時代だったと言ってて。

鬱P:けったろさんくらいの暦だとそういうのもあったかもしれないですね。

唯丸®︎:今はむしろ歌い手やりたいとか、声に出して言える時代になって。芸能人の方が"歌ってみた"をやるとか、認められてきた感じがありますね。

鬱P:特にここ最近でまた加速している感じがしますよね。ボカロPでも歌い手でも、ガンガンとメジャーに出ている人もいるし。この1~2年くらいでまたガラッと変わった感じですしね。

-始めた頃、そういう世界って想像しましたか?

鬱P:全然ですよね。そもそもまだスマートフォンもなかったような時代で、みんなガラケーだったから。始めた頃とはまったく何もかもが違うという感じですね。

-バンド、ボカロPとやってきて、アイドル・グループ Zsaszのプロデュースをスタートしたのが2年ほど前ですね。そのきっかけはなんだったんですか?

鬱P:Zsaszはこの10月で2周年になるんですけど。始めはTwitterがきっかけだったんです。思いつきで、イチからグループを作ると大変だから、もともとあるグループをテコ入れみたいな感じで全部手を加えたいなみたいなことを、パッとつぶやいたんです。そしたらDMとかで、"ツイート拝見したんですけど、よかったらやりませんか"というのが来て。そのDMで来たものは断っちゃったんですけれども、別の知り合いから"あんなこと言ってましたね、よかったらイチから、オーディションで選ぶところからやりませんか"って言われたんですね。もともと知り合いだったので、面白そうっすねという感じで始めたのが最初だったんです。これまでバンドとか、ボカロPとか、作家業はいろいろやっていたので、自分がいなくても活動できるグループがあっても面白いなと思っていたんですよね。

唯丸®︎:なるほど。僕も今自分がやっているBLACKSHEEP SYNDROME.というグループは、僕のたくさんあるアイディアの中のひとつを形にした感じなんです。BLACKSHEEP SYNDROME.は、男性アイドル・グループで今までなかったラウドなサウンドのグループなんですけど、もともと僕自身はポップ出身なので、ポップなグループを別でプロデュースしていて。食べ物をコンセプトにしたポップでかわいらしいクランチクッキー!とか、あとはiMPHELLDOWN.っていう悪者が集まったようなグループとかも、プロデュースしているんですけど。やりたいことって、いっぱい出てきますよね。

鬱P:たしかにいろいろやりたいことが出てきますよね。それぞれ曲も作っているんですよね?

唯丸®︎:そうです。

鬱P:1個のグループだけだと、このグループのカラーの曲、みたいな感じになってしまうので、僕もボカロやバンドでやれていないような曲が作れたらなっていうのはありますね。

-鬱Pさんがサウンド・プロデュースを手掛けるZsaszは、どういったコンセプトのグループなんですか?

鬱P:毎回"どういうグループなんですか"と聞かれると困っちゃうんですけど、特にないんですよね(笑)。

唯丸®︎:サウンド・プロデュースされている方ならではの色っていうのがあるじゃないですか、鬱Pさんってこんな感じですよね、ラウドな感じですよねっていうような。

鬱P:募集段階から僕の名前で曲を提供します、サウンド・プロデュースしますってやっていたので。ラウドロックのアイドルですって言わなくてもなんとなくわかるだろうなと、そのままきちゃった感じなんですよね。たしかにアイドルって、いろいろ肩書きとかつけないといけないと思うんですけど。わりと濃い人が集まったので、まぁ、このままでいいかなっていう。本人たちも、Zsaszという名前以外に肩書きをつけてないような気がするんです。

-それも珍しいですね、テーマやコンセプト、こういうグループですっていうところからのスタートが多いと思うので。

鬱P:メンバーもそうですけど、あまりひとつのシーンだけじゃなくて、いろんなところでライヴができるグループがいいというのがあったんです。曲調も、いわゆるキラキラ系アイドルの中に飛び込んでも大丈夫な曲があったり、実際そういう曲が欲しいと言われて作ったりもしているので。その意味でも、あまり肩書きはつけないようにというのももしかしたらあるかもしれないですね。

唯丸®︎:なるほど。

鬱P:ちょっと質問してもいいですか。メンズ・アイドルのシーンは女性のファンが多いと思うんですけど、どういうルートでメンズ・アイドルを好きになっているんですかね。女性アイドルについている男性のファンって、結構メジャーと地続きのような気がするんですけど。

唯丸®︎:あぁ、メジャーで活動するアイドルから地下に流れてくるような。

鬱P:メンズ・アイドルのほうはそこがあまり地続きではないような感じもしているので。メンズ・アイドルが好きな子は、他にどんなものが好きなのかなっていう。

唯丸®︎:ここ2年くらいで結構変わってきていますね。2018年~2019年あたりまでは、ジャニーズさんから流れてくるような感じがあったんです。

鬱P:まさにメジャーから流れてくるっていう。

唯丸®︎:そうですね。ジャニーズや超特急のような大手の事務所のアイドルを入り口に、メンズ・アイドルのほうに流れてくるというのが多かったんですけど。コロナ禍になって、YouTuberやTikTokから流れてくる演者とファンがめちゃくちゃ増えたんですよね。例えば、"TikTokでバズった誰々君がメンズ・アイドルを始めました"とか。演者の年齢層もキッズになってきていて、お客さんもそれに伴ってという感じになってきていますね。

鬱P:なるほど、それはすごく腑に落ちる感じがありましたね。

唯丸®︎:憧れのTikTokerと会える場所ができたっていう。メンズ・アイドルという細胞があったとして、そのDNAが進化段階で、いろいろ細胞分裂しているところですね。

-女性アイドルはいろいろなグループが出尽くしてもいますが、そこでこそやる面白さはあるんですか?

鬱P:ただ、いっぱいいるけど、完全にひとりが曲を作るっていうグループはそんなに多くないと思うんです。いろんな人に提供してもらっていて。だから、僕個人としてはつんく♂さんの立場ですね、イメージ的には(笑)。作っている人も表に出ているのは、意外と少ないのかなって思いますね。