INTERVIEW
唯丸®︎(BLACKSHEEP SYNDROME.)× 揺紗(鳳-AGEHA-)
2021.08.11UPDATE
2021年08月号掲載
BLACKSHEEP SYNDROME.の唯丸®による連続対談企画第5弾は、ジャパニーズ・ロック・バンド 鳳-AGEHA-より揺紗が登場! ふたりは、揺紗がTHE KIDDIEで活動していた時期から関わりがあり、他アーティストのヴォーカル・ディレクションや歌詞の共作など、様々な場面で一緒に仕事をしているという。また揺紗は現在、BLACKSHEEP SYNDROME.のフライヤーやグッズのデザインを担当するなど、グループとの繋がりもあるようで、今回の対談では彼がBLACKSHEEP SYNDROME.のライヴの魅力について熱く語る場面も。プロデューサーとしての顔を持つふたりだからこその話題も満載となった対談をお届けする。
BLACKSHEEP SYNDROME.:唯丸®
鳳-AGEHA-:揺紗(Vo/Gt)
インタビュアー:吉羽 さおり Photo by うつみさな
取材場所:宇田川カフェ
-揺紗さんはTHE KIDDIEで活動していた時代に唯丸®︎さんと出会っていて、お互いにヴィジュアル系のシーンで活動していたところから、今は、揺紗さんは鳳-AGEHA-として、唯丸®︎さんはBLACKSHEEP SYNDROME.として、新たな活動を立ち上げて活躍しています。ロック・バンドとアイドルという、違うシーンへ歩んだからこそお互いに何か見えてくるものもありそうですね。
唯丸®︎:とは言っても、揺紗さんには、BLACKSHEEP SYNDROME.のデザイン系の仕事をやってもらったり、フライヤーやグッズのデザインをお願いしていたりするので、あまり違う分野でやっているという感じがしていないんですよね。でも音楽的に言うと、そうなのかな。
揺紗:シーン以外はそんなに遠くないかなと感じてますね。
-唯丸®︎さんがメンズ・アイドルをやっているというのは、以前から唯丸®︎さんを知っていた揺紗さんからすると、意外だなと感じるところはあるんですか。
揺紗:意外というのはないんですよね。ヴィジュアル系はちょっと下火になっているというか、どういう理由でかはひとつではないと思いますけど、シーン的に萎んじゃっているので。アイドルが流行るよという、先見の明でその世界に飛び込んだ唯丸®︎はすごいなと思ってますね。
唯丸®︎:ありがとうございます。
揺紗:ただ前バンドのTHE KIDDIE時代にお手伝いしてもらっていたときは唯丸®︎君はギターのローディだったので、僕は直接的に深く関わっていたわけではなかったんですよ。メンバーで飲んだりするときに、ちょこちょこ顔を合わせたりするくらいで。彼がアイドルを始めてから、今こんなのやってるんだっていう話を周りから聞いていて。彼のブログかSNSかを読んだときに、すごくやろうとしてることがはっきりしていたんですね。自分がこういうことやりたいからお客さんにもこういうことをしてほしいじゃないですけど。目標がはっきりしているのが、いいなと思ったんですね。
唯丸®︎:見てくれていたんですね。
揺紗:やっぱり、地下からとかインディーズから頑張って先を目指していくアーティストは、今来てくれているお客さんにどう伝えるかというか、そこでうまく空気を作っていくことが一番大事だと思うので。それはアイドルだろうがバンドだろうがあまり関係がないし、やっていることは一緒なんじゃないかなって思います。僕自身、鳳-AGEHA-は中身に関しては自分のやりたい曲を書いてやっているだけで、コンセプトというのはないんですけど。でも唯丸®︎がやっていたようなことは、なんとなく見習っている部分はありまして。
唯丸®︎:おっ! そうなんですか。
揺紗:直接どれをというよりも、お客さんと作っていくものを大事にしたいなというのがあるんですよね。ただ、それだけでは成り立たないので、自分たちも頑張れたらいいなと思うんですけど。
-お互いに新しいことをスタートして、再会したのはいつ頃だったんですか。
唯丸®︎:2019年ですかね。BLACKSHEEP SYNDROME.の1stミニ・アルバム『一目惚れ。』のジャケットのデザインをお願いしたんですよね。揺紗さんにお願いしようと思ったのは、いつも通り直感的にだったんですけど。
揺紗:最初の仕事はそれだったね。頼まれたはいいけど何を作ったらいいかわからなかったから、"どんなのがいいの?"って聞いたんですけど、ほとんど真っ黒だったんですよね(笑)。BLACKSHEEP SYNDROME.というグループだから、とりあえず黒ベースでジャケを作っていて。表1だけは羊がわーっとたくさんいる感じで作ったんですけど、"中面はどうする?"って聞いたら、"黒でいいです"と。"マジで? もうちょっとなんかするよ"って言ったんだけど、"黒がメインなので"っていう。最初はそんな感じだったんですよね。
唯丸®︎:真っ黒でしたね(笑)。出始めだったので、まだ色がついていないというか。グループ自体にもそういう印象を持っていたので。黒と、黒い羊みたいな感じのジャケットで、お任せでお願いさせてもらいました。
-そういった関わりから始まって、今は歌詞を共作するなど、他にもいろんなことで一緒に仕事をする機会が増えているようですね。
唯丸®︎:そうですね。歌詞を依頼させていただきました。僕がプロデュースしているクランチクッキー! というポップなグループがいるんですけど、そこは食べ物がコンセプトになっているので。依頼させていただくときに、"カレーの歌詞を書いてください"とか(笑)。
揺紗:"カレーで"ってくるんですよ。で、3行分くらいのネタがあって"こんな感じでお願いします"っていうので、僕がスラーっとフル・コーラス書くんですけど。そうなるともう2行分くらいしか残ってないんですよね。
-揺紗さんは、いろんなアーティストの作詞を手掛けていますが、"カレーで"はなかなか他になさそうなオーダーですね。
揺紗:一応、グループの方向性だけは聞いたんですけど。グループがどういうところを目指してるのかだけわかれば、書けなくはないので。それでクランチクッキー! のライヴを1回観てから、書きましたね。ポップでコミカルなこともできるし、いいことも言ってるみたいなグループかなと思って。そういう歌詞を、カレーで書きました(笑)。でも、超真面目に書いてますからね。
唯丸®︎:内容についてはお任せで。そのとき僕ひと月くらいカレーを食べてなかったんですよね。だからカレーか......今の僕じゃカレーに対する愛は出てこないから、揺紗さんに書いてもらったほうがいいなと。
揺紗:俺もカレー食べてなかったらどうすんねん(笑)。
-(笑)
唯丸®︎:あとは一緒にヴォーカル・ディレクションをしたこともありましたよね。
揺紗:一緒にとあるアイドルの曲をやったんです。僕が曲を書いて、唯丸®︎君が作詞をしてたんですけど、当日レコーディングの現場に行ったら、グループのプロデューサーがいないんですよ。現場マネージャーみたいな人と、メンバー自身も昨日曲が来ましたとか言ってる状況で。"そんなことあるんですか!?"って言ったんですけど。なんとかしなきゃという使命感で、ふたりでとりあえず足りないものをその場で作ったりしながら、録っていったこともありましたね。僕は自分のところで地下アイドルのレコーディングとかもやっているんですけど、唯丸®︎のディレクションを見れたので、なるほどって思うところもあったし。
唯丸®︎:あ、そうですか。
揺紗:一緒にやるのは楽しかったですね。最終的な落としどころがはっきりわかっているというか。そこに向けて、どういう過程で進んだら一番早いかがたぶん感覚的にわかっていて、やりやすかったんですよね。
唯丸®︎:ありがとうございます。そういうことでは、僕自身これまでずっと自分で判断せざるを得ないような状況でやってきたので。上からの指示待ちみたいなことがなかったので、自分で判断をして、自分の判断だからそれが正しいと思うしかないというか。この状況での最善は何かというのをやってきたのは大きいですね。
-BLACKSHEEP SYNDROME.でもレコーディングは早いんですか。
唯丸®︎:ただそこは、曲やそれぞれの歌い回しとか、歌がうまいかどうかは個人差があるのでなんとも難しいところなんですけどね。
揺紗:そこはむずいよね。ものを作るときって、もちろんこだわらなきゃいけない部分はあるけど、それ以外でどれだけ柔軟に、寛容にいられるかが大事だと思うんです。例えば来年リリースするものであれば、もう1回揉んでもいいかなという選択肢もあると思いますけど、今日までに録らなきゃいけないものに対しては、今一番いい状態で出すことが求められているので。今作れる最新の面白いものを、その場で限界まで突き詰めることが大事だと感じますね。
-そういうなかで、締めるところは締めつつも、メンバーに自由にやってもらうような環境も作るというのが、ディレクションや、プロデュースする役割というか。
唯丸®︎:そうですね。自由にやってみてほしいという思いはあります。その、自由にさせるためにどうすればいいんだろうというところまで考えるというか。ただあまり考えるばかりだと頭が凝り固まってしまうし、リラックスしている状態で、ふと思いつくことが意外と次のアイディアに結びついたりもするんですよね。だから普段から、お酒飲んでとか──
揺紗:せっかくいいこと言ってるのに(笑)。
唯丸®︎:みんなで楽しいことしながら、ふざけ合いながらやっていると、頭の片隅にポンとアイディアが浮かぶんですよね。それが幸せです。
-揺紗さんのアイディアの源泉はどういうところから。
揺紗:そういうことでは唯丸®︎君と一緒ですね。腹の底から笑った数だけ、曲が生まれるくらいの感覚でいます。レコーディングが全部終わったあとは何も残ってないですけど、そこから誰かと喋ったことであるとか、古い歌でも最新の歌でもなんでも、こんなものが今刺激になるんだということの発見があって、どんどん自分の内に溜まっていったものをどこかで吐こうとすると、新しいものができるので。めちゃくちゃしてなんぼですよね。