INTERVIEW
AMARANTHE
2020.09.29UPDATE
2020年09月号掲載
Member:Olof Mörck(Gt/Key)
Interviewer:菅谷 透
-前作から約2年でのリリースと、常にコンスタントな作品の発表を続けていますが、モチベーションを保つ秘訣はなんでしょうか?
それはね......興味深い質問だ。(咳払い)俺たち自身はあまり考えたことがないんだけど、クリエイティヴさを保ちつつ音楽を書き続けるのが自分たちのミッションみたいに思ってはいるんだ。だからか、ツアーを1年半くらいやっていると、どんどん曲を書きたいムードになっていくんだよね。ツアー中はあまりその時間が取れないから、1年半くらい経ってツアーが終わると、パンドラの箱を開けるような感じで、それまで温めていたものをひもといて曲を作るんだ。振り返ってみると9年間でアルバム6枚だから、このジャンルの中でも多作なバンドの部類に入るだろうね。
-そうだと思います。
ただ、俺たち的にはそうしようとしてそうなったわけじゃないんだ。"よし、何か作らなきゃ"なんてプレッシャーやストレスを感じたこともない。むしろ逆で、これを生業にできるなんて何て名誉なことだろうと思っているよ。
-今作はNils加入後2作目ということもあってか、彼の歌唱が前面に出てくるパートも増えています。ヴォーカル・ワークではどのようなことを意識しましたか?
今回Nilsは実際のソングライティングにはあまり関与しなかったんだ。俺と膝を突き合わせてヴォーカルの部分を細かいところまで作る、という感じではなかった。Nils自身は素晴らしいソングライターで、(彼が兼任する)DYNAZTYでは曲を書いていたんだけどね。すごく尊敬しているんだ。だから"これってどう思う?"と聞くと的確な意見や提案をしてくれる。そういう意味では関与したということになるのかな。今回は俺とElize――特にElizeだね、ヴォーカル・ワークはほとんど彼女が手掛けているから。彼女はNilsにぴったり合ったヴォーカルのアプローチを書くことができるんだ。彼女自身も声域が広くて、かなり低い音からすごく高い音まで出すことができるから、例えばコーラスを書くときにNilsのパートをシミュレーションしながら書くことができた。『Helix』のときはコーラスのところであまりNilsの声を生かせなかったけど、今回は彼の存在感をアルバム全体を通じてもっと際立たせたいと思ったんだ。Nilsのことが大好きだからもっと強調したいと思ってね。彼の存在はこのバンドの大きな強みなんだ。
-加入してだいぶ経ちますし、どういうふうに彼の声を生かせば一番輝くかというのが体得できたということですね。
そのとおりだね。この3年間ツアーを共にしてきて一緒に成長できたと思うし、終わりのない日々を一緒に過ごしてきたからね。旅をして、ショーを一緒にやって......。今はパンデミックがあるから一緒に行動することはできないけどね。俺とElizeも今それぞれスウェーデン北部のサマー・ハウスで過ごしているけど、全然会わないんだ。それでもいい友達だけどね、ツアーがなくても。俺たちは全員がそういう関係だから、比較的新しいメンバーとも深く付き合うことができているんだ。
-アルバムからの先行シングル「Viral」は、バンドの所信表明と言えるような歌詞が印象的で、まさに今作を代表するような曲になっていると感じました。MVも、自宅隔離を強いられている世界中のファンを勇気づけるような内容でした。楽曲を発表しての反響はいかがでしたか?
あのMVを撮ったときはヨーロッパでコロナ禍が一番ひどい状態だったころで、ロックダウンがあちこちで起こっていたんだ。今(※取材は7月末)はアメリカがそんな状態だよね......。MVではアルバムのアートワークと同じように、何か人を元気づけるものが欲しいと思ったんだ。ポジティヴィティを表すものにしたかった。今は世界中がひどい状態に苦しんでいてポジティヴな要素を見いだすのも難しいけど、トンネルの先には光があるはずだ。世界で悲劇が起こっていても、それでも前に進まないといけない。さっきの話じゃないけど、SABATONとのツアーは2月まで続くはずだった。アルバムの録音はなんとかできたけど、夏フェスもみんな来年に延期になってしまった。それでも前に進めるところまで進みたいんだ。そういうメッセ―ジも入った曲なんだよ。「Viral」で言いたかったのは、そういうことだと思う。悲劇がそこらじゅうで起こっていて、あらゆるものがストップしてしまったけど、いつかはこの状況にも終わりがくるはずだし、そうしたらこの混沌も忘れることができるはずなんだ。
-いろんなことがあっても、こうして進み続けて新曲を出してくれたという事実自体がとても勇気づけられるものだと思います。続いて「Strong」では、BATTLE BEASTのNoora Louhimoをゲスト・ヴォーカルに迎えていますね。彼女をフィーチャーした経緯をうかがえますか?
実はBATTLE BEASTとはアメリカで一緒にツアーすることになっていたんだ。残念ながらキャンセルになってしまったけど、8月から10月まで行くはずだった。NooraとBATTLE BEASTとはもう結構長い付き合いでね。フィンランドは2011年ごろ一番フェスに出た国で、それ以来毎年少なくともふたつはフィンランドのフェスに出ているんだ。つまりそのぶんフィンランド人との出会いの機会が多いってことで(笑)、CHILDREN OF BODOMとかAMORPHISとか、フィンランドのバンドともたくさん友達になった。それに俺はNooraのヴォーカルの大ファンでね。彼女はメタル・シーンでも最高のシンガーのひとりなんじゃないかな。そもそも俺たちはコラボと縁がなくて、今年Angela Gossowとやったのが初めてだった。そこでタガが外れたというか(笑)、もっとやってみたいと思ったんだ。スタジオからNooraに向けて曲をかけたら"ぜひ参加してみたい"と言ってくれたよ。"どういう歌い方をするかわかった気がする"ってね。実は、次のシングルが「Strong」なんだ。MVも出すよ(※取材時はMV発表前)。
-NooraはMVにも参加しているんでしょうか。
そうだよ! MVはElizeとNooraが中心になっているんだ。ふたりとも女性だけど、それぞれが女性シンガーのまったく違う面を代表していると思うんだよね。
-それは楽しみですね! 「Crystalline」はドラマチックなバラードで、Perttu Kivilaakso(APOCALYPTICA)がチェロ、Elias Holmlid(DRAGONLAND)がキーボードで参加しています。この曲についても詳しく教えていただけますか?
バラードっぽい曲が欲しいと思ってね。今までもバラード的なものはいつもアルバムに入れてきたけど、今回はもっとシネマティックでパーソナルなものにしたかった。雰囲気の違うものにね。これはアルバムの中でわりと最後のほうにできた曲だったな。Elizeが18世紀にできた古い家で書いた曲なんだ。デンマークにある家なんだけどね。Elizeがヴォーカル・ワークを考えながら歌っているのを聴いていたら、シネマティックな音の風景が浮かんできた。チェロやストリングス、ピアノを使った感じの。APOCALYPTICAとは以前ツアーで仲良くなって、今年のSABATONのツアーにも一緒に行ったんだ。だからツアー中は毎日つるんでいて、音楽的にも意気投合したし、性格も何もかも相性が合ったんだ。Perttuは言うまでもなくクラシックのミュージシャンで、俺自身も若いころにピアノとヴァイオリンを習っていてクラシックの教育を受けていたから、いろんなことを語り合うことができた。この曲もPerttuに聴かせたらものすごく乗り気になってくれたんだ。Eliasについては、俺もピアノを弾くけど彼はピアノの達人だから、彼ならパーフェクトな解釈で弾いてくれるだろうとデモができた時点で確信したよ。アイディアを話したらこれまたものすごく乗り気になってくれた。俺はもう17~18年くらいEliasとコラボしているから、自然なワークフローで作業できたよ。
-すべてが幸運な偶然のもと、自然発生的にまとまっていますね。
そう! 俺もそう思うよ。すごく運が良かったと思う。もしコロナ禍がもう数週間早く始まっていたら、いろんな所で足踏みさせられたかも知れないしね。ひどい状況下にあったけど、実際はとても運が良かったんだ。
-「Boom!」はHenrikの高速ラップとNilsのヴォーカルをメインにしており、トラックもこれまでにないほどヘヴィで、いい意味でAMARANTHEのパブリック・イメージとは異なる曲になっていると思います。どのようなことを意識して制作しましたか?
ベーシックなアイディアは......実はこの曲のコンセプトはHenrikと何ヶ月か前から考えていたものなんだ。ライヴでやるときの照明なんかもすでに頭の中にあってね。だからライヴでやったら一番良さが発揮される曲だと思う。それから、Henrikのヴォーカルを一番強調している曲のひとつでもある。彼のグロウルは素晴らしいからそっちを使うことが多いけど、そうじゃない部分も最高だから、それをちゃんと証明する曲が欲しいと思ったんだ。この曲を作ったときはヒップホップとラップをたくさん聴いたよ(笑)。ヒップホップみたいな"音"にしたくはなかったけど、ああいう雰囲気を出したいと思ってね。まあ中心はHenrikのグロウルに据えて書いたんだけど......かなり彼との共作になっている曲だね。このグルーヴがどうしても欲しかったんだ。この曲ではAチューニングをチューン・ダウンしてGチューニングにした。すごいロー・チューニングなんだ。Djentにも近いかもしれない。このチューニングでギターを弾くとすごくインスピレーションが湧くよ。この曲に関してはあまりエレクトロニクスを多用しないで、ヘヴィなギター・リフやグルーヴィなリズムが要になるものにしたかったんだ。ちなみにElizeのグロウルも"Boom"と言っているところにさりげなく入っているよ。あれは楽しかったね(笑)。
-ラスト・トラックとして、NilsとHenrikをフィーチャーした「Do Or Die」が収録されています。新たにこのバージョンを制作した理由はなんでしょうか?
まず「Do Or Die」がとても気に入っているからアルバムに入れたかったというのがある。他の曲と同じころ、同じライティング・セッション時に書いたものだから、一緒にしても相性がいいしね。でもすでにリリースしたものとまったく同じものを入れるのは嫌だったんだ。ファンもみんな聴いてくれたあとだしね。実はこのバージョンはElizeのアイディアで、"あれは私とAngelaが歌って女子だけのバージョンだったから、今度はボーイズ・バージョンを作ればいいんじゃない?"と言われたんだ。ただ、もとの歌はElizeに合わせて作ってあるから、Nilsに歌えるものなのか俺にはわからなかった。コーラスのところとかすごく音が高いしね。それでNilsに"お前だったらどうアプローチする? どんな音にする?"と聞いてみたんだ。もちろん見事なものを返してくれたよ。ふたつのバージョンができてファンにとってもいいよね。みんなそれぞれどちらが好きとかあると思うし。俺も作っていてとても楽しかったよ。
-ライヴではどうやって歌うんでしょうか? ボーイズ・バージョンになるのか、Elizeが参加するのか......。
すごくいい質問だね! 実はまだ考えてなくて(笑)――今ぱっと思いついたんだけど、いつものAMARANTHEと同じようにNilsとElizeが交代で歌うのが一番可能性が高いんじゃないかな。それでHenrikにはグロウルをやってもらえばいつもと同じになるからね。どこかの時点でAngelaとステージ上でコラボするのもいいだろうけど、それは本人に聞かないと(笑)。
-全員が参加する"第3のバージョン"もいいかもしれませんよ。
それもいいね(笑)!
-このご時世に聞きづらい質問ではありますが、『Manifest』リリース後の予定を教えていただけますか? ツアーなどは来年に延期になったんですよね。
そうなんだよ。言うまでもなく今年いっぱいはノー・ショーだな。でも、なんらかの形でライヴ活動はしたいと思う。スタジオ・ライヴとか。何かしら動いていないとね。まだ俺たちは健在だって示さないと。でも今後の状況を読むのはとても難しいんだ。特にアメリカではね......あっちでツアーできるようになるまでにはまだ時間がかかるだろう。でもヨーロッパ、そしてもちろん日本に関しては、各政府がゴーサインを出してくれたらできるだけ早く、行くことを検討したいと思っているんだ。こんな状態でもいいこともあって、プロダクション・マネージャーやその他スタッフとライヴの演出についてじっくり話し合う時間ができるわけだから、ライヴの準備の時間も十分取れると思う。それに10年近く走り続けてきたから、ここらで少し一息つくのもいいかもしれないしね。しっかり充電して、これまで以上にパワーアップしてツアーに戻っていきたいと思っているよ。
-早くこの状態が収束してツアーが再開できることを願っています。最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。
もちろん! 日本は言うまでもなくものすごくスペシャルな場所なんだ。1stアルバムを出す前からそう感じていたくらいだから、こうやって日本のファンに支えてもらっていることをとても光栄に思うし、ありがたいと感じている――を短くまとめると、"俺たちは日本のファンが大好きだ"! いつも本当にありがとう。みんなにまた会える日を楽しみにしているよ!