INTERVIEW
摩天楼オペラ
2017.04.07UPDATE
2017年04月号掲載
Member:苑(Vo) 燿(Ba) 悠(Dr) 彩雨(Key)
Interviewer:杉江 由紀
-「何度目かのプロローグ」については、雨と涙をオーバーラップさせてある歌詞に機微を感じました。ネガティヴな状況があったとして、そこからどう動いていくのかがこの詞のテーマになっていそうです。
苑:まさにそうなんですよ。何かが起きたとして、大切なのはそこからどう前に進むかですからね。どうしようもないときでさえ、考え方たったひとつで人間はいくらでも前向きになることができるんですよ。自分自身がそれを実感したからこそ、この詞はこういう内容になったんだと思います。
-つまり、これもまた苑さんと摩天楼オペラにとってのノンフィクションなのですね。
苑:歌い出しのところの"丸めた背中で歩く"なんていうのは、もう完全に僕のことですもん(笑)。
-そうなってくると、もしや「Excalibur」の歌詞も――
苑:あぁ、まったく今の自分の気持ちそのものですね。このところ、自分の中で"行くぞ! やるぞ! やったれ!"というモードがすごく強くなっているんですよ(笑)。そこが今回のアルバムではヘヴィ・メタルな激しい音とか、前向きな言葉にめちゃくちゃ反映されているんです。
-アルバムのラストを飾っている「止まるんじゃねえ」(Track.10)にしても、メッセージとしてはズバリそのものですものね。
苑:このアルバムに関しては、"きれいに幕を閉じましょう"とはしたくなかったんですよ。ここからも止まらずに続いていく、という前向きな気持ちをアルバムの最後でも改めてちゃんと伝えたかったんです。
-前向きという点では、「Mammon Will Not Die」(Track.4)の歌詞にも強い意思を感じます。また、この曲は音的に言うと最初に彩雨さんがおっしゃっていた"細かいところでの隠し味的な変化球"が、活きた楽曲となっているように感じました。
彩雨:普通にさらっと聴けるようにはしてあるんですけど、Pro Tools上では拍子がコロコロ変わっていたりする曲なんですよね。
-拍子がコロコロ変わるということは、ドラマー泣かせな曲でもあったりして?
悠:最初はちょっと苦労しました(苦笑)。でも、これもいざやってみたら何とかなりましたね。
彩雨:この話を知らなければ、普通に気持ちよくヘドバンできる曲だと思いますよ(笑)。
悠:作曲者的にはニヤリとできるタイプの曲だよね。
-この曲の歌詞は、どのようにして生まれたものでしたか。
苑:曲から悪魔感のようなものを感じたこともあって、七つの大罪の中の富に対する強欲さを意味する悪魔・Mammonをモチーフにしました。ただし、僕の中ではMammonってそんなに悪いものだとは思っていないので、悪魔が題材だけど内容は極めて前向きなんですよ。そういう欲望って、絶対に人を動かす原動力になっていると思うんだよなぁ。
悠:何かが欲しいから頑張ろうとか、そういうのって誰でもきっとあるよね。
彩雨:僕はお金、大好きですよ(笑)。
燿:なるほどなぁ。Mammonって、わりといろんなゲームに出てくるんだよ。そういう悪魔なんだって、今の苑の話で初めて知りました(笑)。
-圧倒的な存在感を持つ楽曲がこれだけ収録されているなかにあって、音的な面でのメタル度合いという意味では、苑さんの鋭いシャウトから始まる「Curse Of Blood」(Track.2)が、今作の中では最も聴き応えのあるメタル・チューンのようにも感じました。ヘヴィ・メタルの方程式に則りながら、摩天楼オペラならではの華麗な音像が踊る様は見事です。
苑:今回のアルバムを作りながら、ひとつわかったことがあるんですよ。ヘヴィ・メタルにおけるシャウトとかハイトーンというのは、結局然るべき理由があって生まれたものなんでしょうね。溢れる感情とか、伝えたいという気持ちが高まった結果、こうなったんだろうなということをすごく感じましたね。
悠:ツーバス連打とかも、きっとそういうことなんだよね。「ICARUS」でやってるような3連の連打とかも、メタル以外ではたぶんやらないと思います(笑)。だけど、そこにはちゃんと意味があるんですよ。
-そのうえ、どんなに激しくても、どんなヘヴィでも、摩天楼オペラの音には常に気品が漂っていますからね。そこはやはり流石だな、と今回は改めて感じました。
苑:ほんとね。自分でも感じます、そこは。おそらく、普通のメタル・バンドたちとは少し違うセンスでやっているからなんじゃないのかなぁ。もちろん、だからといってヘヴィ・メタル・バンドのことは否定していませんよ。そこは、ヴィジュアル系でやってきた摩天楼オペラならではの繊細な良さが音に出ているということなんでしょう。
-摩天楼オペラの10周年を記念するこの機に、『PANTHEON -PART 1-』のように攻撃的且つポジティヴなアルバムが完成したことは大変意義深いですね。
苑:ひたすらに突き進む覚悟ができている、ということはこのアルバムで明確に提示できたと思います。あとは、ここからのライヴでこのアルバムの楽曲を僕らとみんなで楽しく共有していけるようにしたいですね。ここからの日々が、僕らもすごく待ち遠しいです。