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LIVE REPORT

DIR EN GREY TOUR09 FEAST OF V SENSES

2009.04.22 @Zepp Tokyo

Writer KAORU

最新作『UROBOROS』がリリースされてから、彼らへの評価が変わったという洋楽リスナーは大勢いる。しかし彼らは、『UROBOROS』以前から、ジャンルという枠組みには当てはめることの出来ない、破天荒で型破りな音楽を作り続け、作品毎にリスナーを圧倒させてきた。更に、ここ日本での活動のみでも十分に評価を得られているにも関わらず、お世辞にも居心地の良い環境とは言えない、完全アウェーの海外に飛び込み、地道なライヴ活動を行うことによって、益々実力に磨きをかけてきた。

DIR EN GREYの存在そのものは、日本では知らないロック・リスナーは殆どいないほどであることは確かだ。しかし、彼らの音楽性は、決して大衆的なポップではない。彼ら自身も、毒を無理やり薄めて聴きやすくするような小細工を施したりはしていない。そのアクの強さや激しさから、かなり好き嫌いが別れるだろうし、イメージによる偏見も未だ絶えてはいない。それだけ常に注目され、賛辞も批判も、同じくらいの割合で受けなければならないということは、バンドにとってはしんどさを伴うだろう。しかし私はDIR EN GREYをイメージだけで判断、批判している人たちに強く言いたい。まずライヴを見るべきだと。彼らのライヴは、一度見たら絶対に忘れることが出来ない。どんな人でも彼らの凄味を感じることは間違いない。そして、毒にも薬にもならない薄口ポップスしか売れない風潮に決して迎合せず、堂々と我が道を突き進むアーティスト精神に、畏敬の念さえ抱くことだろう。

DIR EN GREY ライブ

さて、 "TOUR09 FEAST OF V SENSES"のファイナルを一日後に控えた4/22(木)、Zepp Tokyoでのライヴの模様をレポートしよう。
SE「SA BIR」が鳴り響くと、大歓声が沸き起こる。舞台には大きなスクリーンが設置され、水の中を思わせる映像が映し出されている。『UROBOROS』のラストを飾る曲、荘厳な「INCONVENIENT IDEAL」からスタート。さっきまで大きな歓声を上げていたファン達が一斉に静まり返り、一心に舞台を見つめている。続く「VINUSHKA」では、原爆や戦争のシーンが多く写され、とてもグロテスク。メッセージ性のある歌詞の内容からイメージされた映像なのだろうか。緊張感漂う演奏と舞台効果によって曲の世界観が見事に表現され、しばし息を呑むしかなかった。「LIE BURIED WITH A VENGEANCE」では、巨大なバックドロップの幕が上がり、映画のような幻想的な世界から、一気に臨場感溢れる生々しい雰囲気に。「慟哭と去りぬ」に続き、「DOZING GREEN」では京が一人ライトアップされる。ここから「蜷局」では妖艶に身体をくねらせながら、まるで異形の者のような姿で歌い、「GLASS SKIN」ではうって変わって、真摯な面持ちで語りかけるように歌い、「凌辱の雨」に続くまで、京の姿に釘付けになってしまった。DIR EN GREYのライヴでは、必ずこのように京一人に視線を集中してしまう場面があるのだが、私は今回のライヴで見た彼の姿に、今まで見た中で一番、歌い手として、表現者としての魂を感じることが出来た。なんて素晴らしいパフォーマンスなんだろう。

DIR EN GREY ライブ

ニューウェーブ的アプローチの「HYDRA -666-」から、「BUGABOO」、そして「冷血なりせば」ではステージ上に設置されていた大きな白い照明が大回転し、一気に会場は爆発したように沸き上がる。お馴染みの「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS」では更にヒートアップし、ラストは『UROBOROS』収録の「凱歌、沈黙が眠る頃」。この曲は"TOUR08 THE ROSE TRIMS AGAIN"でも先行披露され、その模様が先日発売された同名のDVDにも収録されているのだが、明らかに曲の魅せ方が巧みになっており、DIR EN GREYが半年前のツアーから、更に成長したのだということがはっきりと確信出来る場面であった。
本編はもちろん『UROBOROS』収録曲が主体の構成となっていたが、アンコールは本編とは別の楽しみ方が出来る選曲。「OBSCURE」から始まり、「CLEVER SLEAZOID」まで、一気に駆け抜けた。ファンも、休みなく思い切り暴れきったことだろう。

今回のツアーでは、Vo.京の喉の不調により仙台と札幌公演が延期(後日、振替公演も無事終了)になったということで、不安を抱えたファンも多かったと思う。しかし、そんなことがあったということを忘れてしまうどころか、京のヴォーカリストとしての大きな成長と逞しさをひしひしと感じることが出来た。そして、演奏面においても確実に安定感と表現力が増していた。これからのDIR EN GREYの更なる活躍を確信する、正に圧巻のライヴであった。DIR EN GREYは海外ツアーへと旅立つが、現状に甘んじることなく、また大きな成長を遂げて帰ってきてくれることは間違いないだろう。

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