DISC REVIEW
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昨年末発表の「輪郭」と同じ時間軸のなかで誕生した最新曲、「Unraveling」と、過去さまざまな時代の楽曲の再構築音源により構成された作品。過去曲の選択理由とアレンジの基準は各々異なっているものと推察できるし、最新曲が示唆しているのも"次章へのヒント"だとは断定しきれない印象がある。しかし興味深いのは、原点回帰や新機軸確立といった明確なテーマ不在の作品のようでありながら、国籍や宗教に起因するものとは一線を画するこのバンドならではの異国情緒や美意識が、各曲に共通項として感じられることだろう。"今の音"としての重厚な説得力はもちろん、成熟感と余裕に裏付けられた強烈な色気にむせかえるような興奮をおぼえてしまう。ミニ・アルバムという呼び方に躊躇をおぼえるほどに濃密な一枚だ。 増田 勇一