LIVE REPORT
BRAHMAN
2024.11.04 @横浜BUNTAI
Writer : 荒金 良介 Photographer:Tsukasa Miyoshi (Showcase)
横浜BUNTAIの前で集合写真を撮る人たち。その様子はまるで同窓会のよう。BRAHMANの音楽に20歳で出会った人はもはや50歳だ。バンドと共に年を重ねた古株のファンも多く足を運んでいたし、今日のライヴの目撃者になるんだ、と意気込んで参加した人もいただろう。バンドは来年の結成30周年に向けて、"六梵全書 Six full albums of all songs"と題したライヴを実施。事前に"全72曲4時間"という内容を告知していたものの、この数字のインパクトは半端じゃない。バンドは無事に完走できるのか。終了後に自分はどんな気持ちを抱くのか。開演前から様々な想像が膨らんだ。なぜなら、体験したことがない未知のライヴだったから。そこにBRAHMANが挑むのだ。
恒例のSEが流れた後、1曲目は「真善美」でスタート。6thアルバム『梵唄』の冒頭曲であり、"さあ 幕が開くとは/終わりが来ることだ/一度きりの意味を/お前が問う番だ"の歌詞がいきなり刺さった。こちらの集中力を高めてくれる最高のオープニングだ。それから「雷同」と続き、現時点での最新作『梵唄』を順番通りに全曲プレイ。「今夜」、ソウル・フラワー・ユニオン/HEATWAVEのカバー「満月の夕」と、TOSHI-LOWのメロウな歌声が印象的だった。再びSEを挟み、ライヴは過去に遡る展開となり、5thアルバム『超克』のブロックへ。同作は初の全編日本語詞(カバー曲除く)となった転機作。「初期衝動」を筆頭に無骨さも引っくるめて伝えることに力点を置いた作風だった。KOHKI(Gt)、MAKOTO(Ba)、RONZI(Dr)のメンバー3人が熱く歌い上げる「警醒」がある一方、贅肉を削ぎ落とした「霹靂」における祈りにも似たTOSHI-LOWの歌声にも聴き入った。
ここでまたSEが流れると、観客はここしかないとばかりにトイレに駆け込む人が増えていく。ライヴの流れを感知しながら、次は4thアルバム『ANTINOMY』のブロックへ。ハードコア色を高めた曲調がフロアを一段と活気付ける。「THE ONLY WAY」はもちろん、THE FANSのカバー「YOU DON'T LIVE HERE ANYMORE」の抑揚豊かなメロディにフロアも反応。そして、最後のSEが鳴り響くと、前半の流れを覆すように1stアルバム『A MAN OF THE WORLD』、2ndアルバム『A FORLORN HOPE』、3rdアルバム『THE MIDDLE WAY』収録曲を織り交ぜ、35曲をノンストップで駆け抜ける。中盤から鬼神のようにギアを入れてラストまで突っ走る怒濤の流れ。4曲分のアイディアを1曲に封じ込めた「DEEP」等濃縮されたエネルギーを放つ楽曲を連発。歓声と熱狂は右肩上がりに上昇し、底が見えないバンドのパワーに必死に食らいつくのみ。
この日、TOSHI-LOWによる長めのMCを期待した人もいたかもしれない。実際は1曲目が終わる手前に少ししゃべり、最後の曲のイントロで"生きてっか? 大丈夫か?"と声を掛けるのみ。主役は命を削って30年間に作り上げた曲たちを、命をかけてプレイするだけだ。従来のストロング・スタイルを叩き付けながら、雄大なスケールを誇る「FAR FROM...」も見事に歌い上げ、TOSHI-LOWの歌声は一点の曇りもなく透明感をキープしていた。ラスト72曲目はバンドで初めて作った「TONGFARR」で締めくくり、これで終わりかと思いきや、さらに「FLYING SAUCER」、「BEYOND THE MOUNTAIN」、「ARTMAN」と3曲を追加する大サービスぶり。結果、75曲4時間ライヴを完走し終え、颯爽とステージ袖に消えた彼等。ライヴ終了後、驚いたのは中弛みする瞬間が本当に皆無だったこと。どの時代の曲もBRAHMANらしい刻印が押され、1曲たりとも聴き逃せない濃密な空気が流れていた。
大袈裟ではなく、ライヴ史に名を残すパフォーマンスであった。誰もやらないストイックすぎるライヴで最大級のお祭りを作り上げたのだから。全編ライヴDVD化を切望する。もう一度観たい。いや、奇跡のあの4時間に何度でも浸りたい気分だ。
[Setlist]
1. 真善美
2. 雷同
3. EVERMORE FOREVER MORE
4. AFTER-SENSATION
5. 其限
6. 今夜
7. 守破離
8. 怒涛の彼方
9. 不倶戴天
10. ナミノウタゲ
11. 天馬空を行く
12. 満月の夕
13. 初期衝動
14. 賽の河原
15. 今際の際
16. 俤
17. 露命
18. 空谷の跫音
19. 遠国
20. 警醒
21. 最終章
22. JESUS WAS A CROSS MAKER
23. 鼎の問
24. 霹靂
25. 虚空ヲ掴ム
26. THE ONLY WAY
27. SPECULATION
28. EPIGRAM
29. STAND ALOOF
30. SILENT DAY
31. ONENESS
32. HANDAN'S PILLOW
33. YOU DON'T LIVE HERE ANYMORE
34. CAUSATION
35. FIBS IN THE HAND
36. 逆光
37. KAMUY-PIRMA
38. THE VOID
39. BASIS
40. SHADOW PLAY
41. DOUBLE-BLIND DOCUMENTS
42. SHOW
43. GOIN' DOWN
44. SEE OFF
45. CHERRIES WERE MADE FOR EATING
46. BOX
47. DEEP
48. NO LIGHT THEORY
49. 時の鐘
50. FROM MY WINDOW
51. FAR FROM...
52. BED SPACE REQUIEM
53. SLIDING WINDOW
54. THAT'S ALL
55. THERE'S NO SHORTER WAY IN THIS LIFE
56. CIRCLE BACK
57. NEW SENTIMENT
58. LOSE ALL
59. Z
60. A WHITE DEEP MORNING
61. TREES LINING A STREET
62. HIGH COMPASSION
63. LAST WAR
64. MIS 16
65. (a piece of) BLUE MOON
66. BYWAY
67. PLASTIC SMILE
68. PLACEBO
69. ANSWER FOR...
70. ARRIVAL TIME
71. FOR ONE'S LIFE
72. TONGFARR
73. FLYING SAUCER
74. BEYOND THE MOUNTAIN
75. ARTMAN
76. 順風満帆 Music Video
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