LIVE REPORT
BRAHMAN
2012.11.08 @Zepp DiverCity
Writer 吉羽 さおり
9月にリリースしたニュー・シングル「露命」。このタイトルを冠した「BRAHMAN 2012 TOUR 露命」が、この日スタートした。ツアーとしては今年初、熱い期待で膨らんだ会場にまず響きわたったのは、叙情的なメロディを持ったミディアム・テンポの、新曲。歓声とともに、4人の紡ぐ音を、歌を聴き逃すまいとする、新曲ならではの緊張感と高揚感とが会場に満ちる。そしてその、神聖なはじまりから一転、「THE ONLY WAY」のアグレッシヴなビート、硬質なギター・フレーズ、そしてシンガロングで会場は興奮につつまれていった。サウンドにあわせ、ステージの背景にするすると、このツアーのバックドロップがのぼり、オーディエンスの盛り上がりは早くもマックスにという状態だ。
続くは「露命」。当たりまえにあると思っていた生命、あるいはものが、いかに心細く、儚いものか。2011年3月11日の震災で、そしてその後の禍で、多くの人がそのことを突きつけられた。悲しみや徒労感、虚無感に陥り、また怒りと使命感に湧き、能動的に生命を、人生を糾(あざな)えることを意識した人も多かっただろう。「露命」は、この今という時に強烈に、かつ力強く響き、伝わる曲だ。柔らかで、あたたかな日差しや息吹を感じさせるようなギター・イントロから、激しいアンサンブルへとなだれ込み、TOSHI-LOWは身を振り絞るようにして歌を轟かせていく。フロアはもみくしゃの状態だが、一方で歌を言葉を噛みしめるように、じっとステージ=バンドと対峙しているオーディエンスもいる。この曲の持つエネルギー、心震わせる力には圧倒される。
中盤ではTOSHI-LOWがフロアでオーディエンスに支えられるようにして、歌った。そして、これが何のツアーだったかわからなくなるほど、あの日(震災)からバタバタしながらもずっとメンバーと音楽を演っている、とオーディエンスに語りかける。声がかかればすぐにライヴに出かけ、さまざまな復興支援プロジェクトを進めている。また自身の手首に巻いた、東北の小さな女の子からもらった手作りのミサンガのエピソードにふれ、さまざまな思いは途切れてはいけないが、このミサンガだけは早く切れてほしい(自然に切れると願いが叶うという)と付け加えた。多くの活動を知り、燃えカスも残らない完全燃焼のステージを見れば、その言葉の重みや確かさがぐっと胸に突きささってくるだろう。
後半は「SWAY」など初期の曲でどよめきにも似た大きな歓声がわき、アグレッシヴなオーディエンスの熱気で、会場の温度が上昇していった。ボルテージが最高潮のなか、昨年リリースした「霹靂」が、じっくりと浸透していく。そして「露命」に収録されている「鼎の問」を、力強く奏で、歌い叫んだ。不安を抱えるならばその不安の種を、踏み出す一方に臆しているならば勇気を、心が砕けそうならばその支えに、と現在のBRAHMANというバンドはますますタフになっている。TOSHI-LOWは饒舌なMCでときおり弱さやトホホな日常でオーディエンスを笑わせるが、言わば完璧でも、特別ではない人間が、全力で音を奏で活動し、なにごとかを可能にしていく姿を赤裸々に伝える。日々の糧になる力を得る、そういった圧巻のステージをBRAHMANは目の前で見せてくれた。
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