INTERVIEW
ゆくえしれずつれづれ
2019.07.03UPDATE
2019年07月号掲載
Member:个喆 メイユイメイ まれ・A・小町 たかりたから
Interviewer:吉羽 さおり
-MVではたからさんがフィーチャーされていますね。これまでにないストーリー性のあるMVになっていて、演じるのがとてもキツそうな役でもありそうです。
メイ:大まかに言うと、それぞれ学生の役で、メイと个喆がたからのことをいじめていて、小町がたからのことを助けにくるというストーリーなんですが、そのあとのたからと小町のシーンは、みなさまのご想像にお任せします。でもこのMVが完成してから、歌詞に新しい解釈が加わった感覚はありました。
小町:たしかにつれづれには珍しく現実的なMVというのが、撮影していても新鮮で楽しかったですね。
-ふたりのいじめっ子が、かなりエグい感じで描かれますね。
メイ:はい。この日メイは高熱を出していたんですけど、家に帰ってさらに熱でうなされて。いじめている夢を見て、さらにつらくなりました。それくらい陰湿ないじめのシーンがあるんですよね。人に水をかけたりスマホを割ったりとか、首絞めたりとか、傷ついた人と自撮り棒で写真を撮るとか。今でもその写真が私のスマホに入っているんですけど、見るたびに心が痛むくらい。
たから:あの写真はひどいよね。
个喆:もちろん演技なんですけど、本当にたからに嫌われるって思った。
-見ている人にとっては、あのMVでのたからさんの気持ちや心境が理解できる人もいるかもしれないし、そこでまたこの曲が救いにもなってくれそう。
たから:そうかもしれないですね。自分はいじめられる役で小町と愛し合うシーンもあって、今までにない感性を使う感じだったんですけど、自分じゃない自分になった感じがして新鮮だったし、自分を忘れて誰かになった気持ちで。感情を剥き出して頑張りました。縛られるし水もかけられるしでつらかったですけどね。
-ライヴでどう表現するかも重要になってきそうですが、振付はどんな感じですか?
小町:難しかったですね。今まではしだれと半分ずつ考えていたんです。それがしだれが脱退して、とりあえず小町がやるよっていうのでひとりで担当したんですけど。曲に歌詞をつけるように、曲と歌詞に振りをつけるというのは、すごく重みのあることで。責任というのを感じます。前作の「Odd eye」がひとりで振付を始めた最初の曲なんですが、普段あまりメンバーに本当の気持ちとかを言わないんですけど、初めて个喆に電話をしました。
-そうなんですね。
小町:个喆はふわふわしているんですけど、意外と出てくるひと言が真をついてくるので。"「Odd eye」の振付、これで大丈夫かな"って話したんです。覚えてる(笑)?
个喆:もうびっくりしちゃった。
小町:初めて電話したからね。
个喆:"何が起きたの!?"って思って。"もしもし......?"って怯えながら出たんですけど(笑)、そしたらそういう内容の電話だったから、すごく相談してくれて嬉しいって感じながら話したんです。
小町:それくらい難しかったんです。
-レコーディングについてはどうですか? 結構スムーズに進んでいったんですか?
个喆:「ssixth」は、个喆はロックンローラーの気持ちで歌ってます。
メイ:そうなの!?
个喆:作曲、編曲をしていて、レコーディングでヴォーカルのディレクションもしてくれるsyvaさんに、"ロックンローラーになります"って宣言して歌ってます。
小町:あぁ、syvaさんにそんな感じのことを言われたかな。小町としてはもうちょっと優しく歌おうと思っていたんですけど、"この曲はロックンロールに歌って"って言われました。強い気持ちで、跳ねるように歌ってほしいんだって。
メイ:メイもそれは言われました。1回自分で強く歌ったあと、もう1回録ったときにちょっと優しめに歌ったら、さっきの強いほうでいいよって言われたんです。
-たからさんはレコーディングという環境に少し慣れてきましたか?
たから:「Odd eye」のときは、3人のレコーディングを見ていてちょっと後悔するところがあったというか、学んだことがすごく多かったんです。音源を聴いて悔しかったこともたくさんあったので、絶対に次はこの気持ちを生かそうって思って。「ssixth」は歌詞を見て、自分が感じた気持ちをまっすぐに伝えること、思いを声に乗せることが大事だなと感じたので、そのことは意識しましたね。「Odd eye」での経験や学んだことを生かそうと心掛けたレコーディングだったので、できあがった音源は、今の自分の実力としては出し切ることができたなと思います。
-3人を見ながら進んでいるんですね。2曲目の「Dear Sorrow」はどうでしょう? こちらも叙情性のあるメロディですが、内容がとても切ないというか、悲しみを炸裂させる曲ですね。
メイ:悲しいですね。失恋、なんですかね?
-それもまた聴く人によって、喪失感の度合いもいろいろに感じられる内容でもありそうです。
メイ:そうですね。私は、タイトルも"Dear Sorrow"で、Sorrow=悲しみということなので、相手を失ったことでの悲しみをも愛しいと思ってしまうくらい、その人のことを愛しているんだなという気持ちでこの曲を歌いました。
たから:たしかに、切ないだけでは歌い切れない曲だなと思いました。愛しさ、優しさとかが伝わるようにとは意識しました。初めてそういう歌い方をしたので、まだ改善の余地はありますけど(笑)。でも、自分の思う優しい歌というのは歌えたと思います。
个喆:个喆は、自分の感情を歌に乗せるというのがヘタクソで。いつも感情を込めて歌ったつもりでも、あとから聴いてみると"あれ?"ってなることが多いんですね。だからこの曲は家で、自分で録音しながら歌ってみて、どうやったらエモーショナルなものになるのか、そう聴こえるのか試行錯誤して、レコーディングに挑んだんです。その結果がここに入っていると思います。4人の声が入ったものができあがったら、ものすごく重くて、悲しくて、泣きたいときに聴きたい曲になりました。
-そんなふうにアプローチしているんですね。それくらいつれづれの表現は、幽世(幽世テロルArchitect)とも違うものだと。
个喆:そうですね。リズムを取るのもつれづれのほうが難しくて。
メイ:えっ、幽世のほうが難しそうなのに。
个喆:幽世ではドラムの音、ビートを聴いていればリズムを取りやすかったんです。でも、つれづれの曲って、ドラムだけでは曲の感じを掴めなくて。ベースや曲の流れというのもより聴くようになりました。
-曲のドラマや、うねりっていうものを感じながら歌っているんですね。小町さんはどう捉えていますか?
小町:感じたのは、小町が小町であるために必要な半身をなくしたような思いでしたね。その半身がないことによって、自分の望む生や場所というものが、ここにはないなって思ってしまうような気持ちで。その半身があったからこそ、自分が信じてこれた核みたいなものも信じられなくなった、そんな感覚が私の中ではあります。