INTERVIEW
OUTRAGE
2015.10.07UPDATE
2015年10月号掲載
Member:丹下 眞也(Dr)
Interviewer:荒金 良介
-そうだったんですか。だけど、ちゃんとやれば自分たちらしくないことはないと。今でもやってる曲ですからね。
-「River」は名曲ですからね。そして、カバー曲を収録するのはオリジナル作では『BLACK CLOUDS』(1988年リリースの1stアルバム)以来、27年ぶりになります。このアイディアはどこから?
音楽評論家の伊藤政則さんからある日、"何をやってるんだ?"と電話をいただいて"なかなか次の作曲が進んでません"と伝えたんです。それで、今度"LOUD PARK 15"に出ると話したら、それに合わせて作品を出したらどうかと。ファンの人が喜ぶなら、カバーでもいいじゃないかと提案してくれて。それで新曲や未発表曲があるなら、それを入れてもいいじゃないかという話になったんです。メンバーにそれを伝えたら、いいかもねということで、僕の提案でいつものNWOBHMM(New Wave of British Heavy Metal)やハードコア・パンクのカバーではつまらないし、LOUDNESS、ANTHEMと共演する機会もあったので、日本のメタル・バンドをカバーしてはどうかと。日本語の曲もあるし、OUTRAGEとして日本語をやるのはチャレンジになるんじゃないかと。そういう内容のメールを送ったときに、真っ先に返事が来たのが橋本だったんですよ。
-へぇー!
その橋本のメールに"最近昔の日本のバンドを聴いてます。僕はハード・ロックどうこうではなく、いい曲はいい曲だという聴き方をしています"、"もしかするとOUTRAGEでは違うかもしれないけど、僕がいいなと思った曲を選びます"とあったんです。それで送られてきた候補が60年代のグループ・サウンズや70年代初頭の曲だったんですよ。その中にはっぴいえんどもあって、なるほどなと。あと、橋本のメールには自分たちの先輩というか、ハード・ロック/ロックの先駆者、時代を作った人にリスペクトを捧げる意味でも、そういうバンドに集中したらどうか、とあったんです。その中には僕も名前しか知らないバンドもいたんですけど、調べて聴くと、やはりいいんですよね。時代を越えて、感じるものがあるんですね。
-例えばどういうところですか?
これは空想の範囲ですけど、意気込みも違うだろうし、ロックの意味合いも今とは違うと思うんですよ。そこまでロックも普及してない時代ですし、アウトローな人たちがやっていた時代だと思うんです。橋本がグループ・サウンズのドキュメンタリーを観たんですが、その人たちは演歌や歌謡曲ではなく、イギリス、アメリカの音楽を自分たち流にして、音楽を作っていたみたいなストーリーだったそうなんです。そのチャレンジ精神や、普段人が聴かないような音楽を発掘してくるマニアックさはOUTRAGEに通じるものがあると。それで尊敬の念をなおさら感じたと言ってました。
-なるほど。
それでいろんな音楽を聴くと、とんでもないエネルギーがあるんですよね。今のPro Toolsを使った音楽とは違って、最初から最後まで一気に作るような人たちですからね。もともと自分たちもアナログで作って、最初から最後まで演奏するスタイルだったから。気持ちだけでもそこに向けるのは面白いんじゃないかと。今回は前々作や前作のような音作りではなく、多少演奏はラフでもいいから、顕微鏡で見るような形ではなく、曲の全体像で把握するプレイを心がけました。
-いい意味で細部を気にせずにやろうと?
もうちょっと大雑把でもいいんじゃないかと。正直、カバーしながら笑っちゃったんですけど、原曲はリズムなんか平気で狂ってるところもたくさんあるわけですよ。
-そうなんですか(笑)。
それもカバーして初めて気づきました。僕、BLUES CREATIONが大好きで、ファンとして聴いてるときはわからなくて。実際、カバーしたときにズレてると思うと同時にズレてないと感じたんですよ。それは新鮮な発見だったし、音楽のもともと持ってるエネルギーって、そういうものだよなと。
-原曲となるBLUES CREATIONの「Just I Was Born」もいいですが、OUTRAGEのカバーも独特の揺らめきや雰囲気が出てますね。
今回エンジニアにNAPALM DEATHをやってるRuss Russellにお願いしたんですよ。ここ何作かのOUTRAGEはベースが基本的に下にあって、あまり聴こえない音作りなんです。でも今回はベースがグルーヴの肝になる、ベースを聴かせる音作りなんですよ。バンドがすべてイーブンな音作りなんですよね。今回はRuss氏を選んで正解でした。NAPALM DEATHの新作(2015年1月リリースの15thアルバム『Apex Predator - Easy Meat』)を聴いたら、音は意外と過激ではなく、ロックっぽい骨太なんですよね。もしかして今回は合うんじゃないかと思って、結果良かったですね。
-話が戻るようですが、カバーの内容が橋本さん発信というのはちょっと驚きです。
僕が提案することが多いんですけど、ひとりの提案だと、同じカラーのものしか出て来ないですからね。僕がメールを送ったときに、真っ先に返事が来たし、この意見を聞くべきだなと。ただ、カバー曲は僕の方でもリサーチして、安井(義博/Ba)が70年代もありだけど、そこだけにこだわると固くなるから、アナーキーを入れたらどうかと提案したり、ある程度みんなの意見を取り入れてます。いつも同じ人のアイディアでは同じ風景しか見えないですし、メンバーの意見もその時々で違う方が新鮮ですからね。OUTRAGEはメタル・バンドである前に、ロック・バンドなんだなと思いました。これは偶然ですけど、友達にはっぴいえんどのカバー「空いろのくれよん」を聴かせたら、昔のUFOみたいに聴こえる、橋本さんの声がPhil Moggに聴こえると。