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INTERVIEW

BRING ME THE HORIZON

2013.05.14UPDATE

BRING ME THE HORIZON

Member:Oli Sykes(Vo)

Interviewer:ムラオカ

-そうですか。それと、キーボード担当としてJordan Fishが加入しましたね。バンド結成から10年近く経ってから、新たなパートとしてキーボードが加入したことには驚かされましたが、彼をサポート・メンバーではなく正式メンバーとして加入させたのはなぜでしょうか?

そうだよね、確かに唐突な感じがするよね。元々はあくまでヘルプの形で制作に関わっていて、エクストラ・メンバーっていう立場だったんだ。で、彼は以前からアルバム制作の時にはほぼ毎回、バンドがあまり詳しくない、エレクトロニクスとかプログラミングを担当してくれていて……彼は凄く仕事が早いし手際がいいんだよ。で、最初のうちは僕らが伝えたアイディアをその通りに具現化するっていうことに徹してたんだけど、時間が経つにつれて彼はだんだんその仕事に対して愛着を持つようになってきてくれて、そのうち彼の方から独自のアイディアが出てくるようになってね。それが他のメンバーたちも納得がいくようなものばかりだったんで、彼の役割の比重がだんだん大きくなってきていたんだ。最終的に今回のアルバムが完成した時には、多分彼は誰よりも制作に貢献したメンバーになってたと思う。それで、僕らと一緒にこれからもやって行く気はないか、ライヴでもプレイする気はないかって訊いたら、ぜひやりたいって返事をもらったんだ。多分今のバンドにとっては、もうひとりギタリストを加入させるよりも、彼を加入させる方が、方向性として正しい選択だと思うんだよね。ライヴ・パフォーマンスの面でも、可能性や自由度がぐっと広がると思うしさ。

-なるほどね、分かりました。では、再び最新アルバムに話を戻しましょう。今作は今までBMTHをデスコアやメタルコア・バンドとして敬遠してきたようなリスナー層にも突き刺さるような作品に仕上がっていますね。激しい曲ばかりでなくバラードやミドル・テンポのメロディアスなトラックまで散りばめられ、音楽的な幅も大いに広がっていますよね。

まさにその通りだね。

-で、それと同時に、これまでのどの作品よりもエモーショナルかつ悲哀に満ち、非常に内省的な作品でもあると感じたのですが、この評価はいかがでしょうか?

ああ、間違いないね。このアルバムにはさっきも言った通り、いろんな物語が並んでいて……前作を出してからこのアルバムの制作に入るまで、僕らは数え切れないくらいいろんな場所に行っていろんな人たちと出会い、たくさんの経験をした。その中で、僕の自分自身に対する見方も変化していって……僕自身が変化したっていうこともあるけどね。以前と比べたら、まるで違う人間になったみたいに感じてるんだ。と言うか、自分を客観的に観られるようになったってこともあるんだろうね。まるで自分の身体から幽体離脱して、自分自身を外から見てるみたいな感覚になったりして……。

-そうなんですね。

以前の僕は歌詞を書く時にも、自分っていう殻の中から書いてたと思うんだ。“オレはこう感じてる、オレの胸のうちはこうだ”ってね。そういう意味では内省的って言えるかも知れないけど、そこにあるのはあくまで主観で、自分中心のことばっかりだったんだ。でも今回は、少し離れたところから振り返っているからこそ、全体を俯瞰して観ることができてると思うし、きちんと整理して考えられていると思う。だからこそもっとリアルに描けていると思うし、もっとエモーショナルなんだよ。一人称ばかりじゃなく三人称でも、自分の経験や視点をクリアーに伝えられるようになったおかげで、以前の主観で書いてた時にはあえて出さなかったような部分もそのまま曝け出せるようになったし、何ひとつ忌憚なく描くことができていると思う。自分が何をしたっていうことだけじゃなく、それによって周囲がどんな影響を及ぼされたかっていうところにも目が向くようになったからね。そういう意味では、今の自分の現状と、周囲の状況とを明確に切り取ることができたと言うか……自分で言うのもナンだけど、歌詞の面ではこれまで出してきた作品の中でも間違いなくベストと言える内容になってると思う。

-うん、なるほど。

だから、うん、キミの解釈は正しいと思うよ。それと、もうひとつこれも影響してるんじゃないかと思うのは、僕はこれまで自分のヴォーカルに関してあまり深く考えたことがなかったし、レッスンなんかも1度も受けたことがなかったんだよね。多分僕はこのアルバムのレコーディングに入るまで、まともな歌い方を知らなかったんだと思う。でも今回はメロディックな曲も結構あったし、リリックの内容をきちんと伝えるにはどういう歌い方をしたらいいかってことを、初めてじっくり考えながらヴォーカル録りをやったんだ。どうしたらもっとエモーショナルになるんだろう、どうしたらもっとこのフィーリングが伝わるんだろう、1番伝えたいこの言葉を響かせられるんだろうって。そういう意味では、前作では結構攻撃的な姿勢でヴォーカル録りに臨んだんだけど、今回はかなり無防備というか、素に近い状態で臨んでたんだよね。その方が曲にも歌詞の内容にも合ってると思ったし、聴いてても疲れなくて済むと思うからね。

-なるほど。そうしたヴォーカル面も含め、今回の変化は間違いなく大きな前進であり、ポジティヴな変節だと思うのですが、一方であなたがたのヘヴィでアグレッヴなところに最も強く惹かれていたファンの中には、もしかしたらこうした成長と言うか、進化を若干寂しいと感じる人もいるかも知れませんね。その辺りはいかがですか?

いやあ、そんなことはないと思うよ。アルバム自体は凄くヘヴィだし……曲によってはこれまでのどのアルバムに入ってるものよりヘヴィなのもあるし。ただヘヴィ一辺倒よりも、こういう風に幅がある方が、飽きずに長く楽しんでもらえると僕は思う。確かに以前ほどラウドではないかも知れないし、陰鬱ではないかも知れないけど、それを言うなら前作が出た時にも、前よりヘヴィじゃなくなったっていうコメントは結構あったんだよ。