COLUMN
TeddyLoid presents DANCE × ROCK CHRONICLE Vol.5
-さて、"DANCE × ROCK CHRONICLE"では、ROTTENGRAFFTY、ギルガメッシュ、MUCC、THREE LIGHTS DOWN KINGSのリミックスをしてきましたが、どのバンドもダンス要素のあるバンドでした。THE STARBEMSのような、直球のパンクのリミックスを手掛けたことはこれまでにありましたか?
TeddyLoid:実は初なんですよ。 今回いろいろ聴かせてもらって、最終的に絞ったのが「THE CRACKIN'」(2013年リリースの1stアルバム『SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD』収録)と、「Let Lights Shine」(『VANISHING CITY』収録)と、「Vanishing City」(『VANISHING CITY』収録)の3曲だったんですよ。結構全部ビートが速くて、生き急いでる感じがすごくいいなと思ったんですよ。その中でも「Vanishing City」はMVも砂漠の遺跡の前で歌ってるみたいな感じでかっこいいじゃないですか。そこに『SILENT PLANET』との共通点を勝手に感じて、「Vanishing City」にさせていただいたんです。
日高:実はあの撮影場所は茨城県なんですよ。採石場みたいなところ。
TeddyLoid:えー! 海外で撮ってるみたいでしたよね。
日高:そう、海外で撮っているかのように見せるのがうまい監督さんにお願いしました。
-「Vanishing City」という曲について、改めて日高さんから解説をお願いします。
日高:ちょうどTeddy君たちが青春だったであろう、90年代っぽい曲を作ろうと思って。例えばLIMP BIZKIT。若いころはLIMP BIZKITって大嫌いで、チャラチャラしやがってと思ってたんですけど、Teddy君世代って偏見がないじゃないですか。当時はRED HOT CHILI PEPPERSとかがいて、 そこにリンプが出てきたらどう見てもチャラいじゃんって線引いちゃってたんですけど、でもまあ、みんなが聴いてるものをずっと聴いてると、やっぱりかっこいいんだなって気づいた時期があって。だからビッグ・ビートっぽいヘヴィ・ロック、ラウドロックが流行ってた時代のサウンドを意識して作りました。BPMはうちの中ではそんなに速くない曲ですね。
-そうだったんですね。私は初めて聴いたとき、例えばFOUR YEAR STRONGのような、最新型のポップ・パンク的な印象も受けました。
日高:そうですね、ポップ・パンクも大好きなんですけど、サグいラウド系、ミクスチャー系はリアルタイムなんですよね。レッチリとかも昔はギャグでしたよね、おちん○んに靴下を穿かせたりして。それで1997~98年くらいからAIR JAMがわーっと盛り上がってきて。そういういわゆるメロディック・パンク・ブームみたいなものを懐かしみながら作った感じですね。もちろん後ろ向きな気持ちではないんですけど。"今風な90年代"っていう感じですね。ファッションもそうじゃないですか。70年代、80年代、90年代のものが順繰りに流行って。でも、音楽ってあんまりそういうサイクルがなくて、ずっと続いてたり、定番があって。例えばずっと70年代の人もいるし、サイケっぽい人もずっといて、90年代っぽい人もいれば、実はNIRVANAっぽい人もいる。たぶんまた何年か経ったら、順繰りにリヴァイヴァルするかもしれないですけど、俺の中では90年代の番かなっていう。王道の曲ですね。
-Teddyさんは、「Vanishing City」に対して、そういう90年代感を感じていましたか?
TeddyLoid:いや、僕は逆にそういう感じは意識してなくて、初めて聴いたときはすごく洋楽っぽいなと思ったんですよね。そういうサウンドを日本人がやると、ダサく聴こえたりすることも多いんですけど、「Vanishing City」は本場のクオリティだなと。それは僕もいつも志していることなので、すぐにリミックスできましたね。
日高:自分の作品を聴いてもらったときに、海外のものかと思ったって言われるのは嬉しいですね。
TeddyLoid:何の前情報もなしに聴いたら、普通に海外の曲だと思うかもしれないですね。
-今までBEAT CRUSADERSの曲は、RYUKYUDISKOやMoonbugとか、様々なアーティストにリミックスされてきましたが、自分の曲がリミックスされるときはどんな気持ちですか?
日高:リミックスは切り口が絶対に違うので、勉強になりますよね。特に自分はコンポーザーでもあるんで、リズムのとり方が全然違うし、ここで大きく4つでとるんだとか。逆にここを2分で刻むんだとか、作曲家の観点ではないんですよね。作曲者って、最初からだいたいのメロディはもちろん、リズムの構成もここは絶対8ビートだとか、ほぼ9割9分決めちゃうんですよ。なのでリミックスしてもらって、そこをひっくり返してもらう瞬間が気持ちいいです。今までいろんな人と関わって、毎回思います。
-なるほど。それでは、今回Teddyさんがリミックスした「Vanishing City」を聴いた感想を教えてください。
日高:サビの解釈が俺にはない感じで、普通のルート音じゃないところをわざわざずらしてくるじゃないですか。あの感じはすごく気持ち良くて勉強になりました。
Teddy:まったくその通りです。まず、プロデューサーであり、コンポーザーである日高さんが予想できないようなリミックスにしようって思いましたね。ただ、ヴォーカルを派手に切り刻んで、まったく別の曲にしてしまってもそれはそれで面白くないですよね。なので、原曲の進行を踏襲しつつも、新鮮な「Vanishing City」にしたいなと思いました。
-イントロが不穏なダブステップから始まり、そこにアイコン的なシンセのフレーズを足して、キャッチーになっていって、イントロから明暗の対比が激しいですよね。そこにコーラスが乗って。
TeddyLoid:とにかくあのシャウト、コーラスが気持ち良かったので、そこはド頭から使おうと思ってました。
日高:Teddy君は構成を先に作るの? それともどっかを刻んでループしながら?
Teddy:最初にバッて決めるときもありますけど、今回は探りながらでしたね。
日高:すっごい大変そう。デスクトップの前に座るのが好きな人でないと無理だね。
-ヴォーカルにはエコーがかかっていますよね。
日高:ちょっとケロってて。
TeddyLoid:そうですね。ヴァースはちょっとケロらせつつ、「Last Teddy Boy」以降に作ったので、ショート・ディレイをかけて、ロカビリー的なアプローチをしたんです。
-Aメロは高速の四つ打ち、ガバっぽいというか、ハードコア・テクノ風な感じにしたのが意外でした。
TeddyLoid:そうそう、ちょっと新しい感じで。ほんと、ガバ・ダブステップって感じですね。
日高:久々にアムステルダム感を感じました(笑)。