COLUMN
ESKIMO CALLBOYのいきなり!チャラアゲ伝説。 vol.21
Kevin RatajczakのESKIMO CALLBOYスタジオ日記
なんという2016年の締めくくりだったことだろう。この年最後のツアー、そして年を重ねつつあるアルバム『Crystals』を引っ提げた最後のツアーは、ヨーロッパ中で最高のショーを繰り広げたのち、この時代に終わりをもたらした。正直言ってグッとくる終わりだったよ。
アメリカのPALISADESと日本のHER NAME IN BLOODという新しい友人もできた。そしてこのツアーが『Crystals』を引っ提げたものとしては正式に最後という認識は、何だか不思議な感覚があったんだ。
驚くことじゃないけど、俺たちはもう1年以上も新作の制作に取り組んでいるんだ。面倒なものとして始まりはしたけど、今までで一番真剣な制作期間になったよ。
長年の間に曲を書けば書くほど、新しい曲を書くときに何らかの形でそれらの曲を思い出すものなんだ。どんなにいい音がしたとしても、何もかもが昔の曲のバリエーションに過ぎない。うんざりするよ。"新しい"ものを作ることができない気がする。進歩が感じられないんだ。
ファッキンな新しい曲がどうしても欲しいし、音楽で進歩したい。それなのにイチからやり直すことができない!
でも、自分自身、自分のバンド、自分の音楽を作り直すことはできるんだ!
俺たちは様々なタイプの音楽をたくさん聴く。型にとらわれないインスピレーションを得るためだけにね。そして制作期間が終盤に差し掛かると、いつもほとんどスタジオに住んでいるようになる。リリースまでの時間が短いほど、俺たちの仕事ぶりは厳しくなるんだ。そして音楽を生み出すプロセスが思考のすべてを牛耳っていることにますます気づく。そうすると、心の中でラジオのCMソングを分析している自分に気づいたりする。そうせずにはいられないんだ。
GTA(ゲーム"Grand Theft Auto")をやりすぎたあとに車を運転するときの気分と比べたら......ギョッとしてしまうよ!
でもマジックが起こるのはまさにそのフェーズなんだ。どこかの空手の巨匠だったら俺たちが"音楽と一体になる"と言うだろうけど、それじゃ大げさすぎるだろう。スタジオで昼夜過ごしてどんどんホームレスみたいな出で立ちになっていくのに、何ひとつできあがっていないというのが現実だ!
ある時点まではすごく潜在力のあるいい曲のアイディアがあるんだけど、まずそれらは何のエッジもなくプレーンでシンプルなもので、俺が"ESKIMOのフレーバー"と呼ぶものもない。スタジオで根詰めて取り組む、まさにその時間が必要なんだ。そうすると、潜在力のあるありふれた曲がすごい曲になる。
で、正直に話すけど、こういうのは仲間たちとつるみすぎてバカになるから起こるんだ! ドイツには、バカほどいいセックスをするという昔の格言がある。何しろあまり物事を考えないからね!
曲を書くときも同じだ。考えず、ただ流れに任せる......そしてセックスの話とは違って、最高のフックを書くのに、ケツに親指を突っ込む必要はないんだ!
ジンと、ステキなIbanezの7弦と、VSTシンセがあればいい。
これが新しい年、2017年が始まってすぐのことだった。それ以来俺たちは、この新作をこれまでの最高傑作にするために頑張ってきたんだ!
一方、音楽シーンが今大きく変化していることにも気づいた。2010年からある、普通のブレイクダウン・メタルコアはもはや通用しない。俺たちがそういう"伝統的な"曲を書こうとしてもすごくつまらない感じがしたんだ。それで今回はいつもよりもっと大胆になった。俺たちのクリエイティヴなプロセスにあまりに多くの制約を課す古い服から逃げるのは最っっ高の気分だったよ。新しいESKIMO CALLBOYのサウンドは俺の目から見てもとてもフレッシュに感じられる。今もルーツにこだわっている曲が多いけど、フレーバーをたくさんプラスしたんだ。それから、様々なサウンドやスタイルで実験してもいる。アルバムはそうだな、75パーセント完成したと言えるね。今は新曲を書くのがあまりに楽しくて、義務感がないんだ。昔のガレージ・ミュージックの感覚がよみがえってきた。ようやくリリースできるときになったらみんながどう気に入ってくれるか、今から待ち遠しいよ。
ひとつ間違いないことがある。評価が両極端になるってこと! でもそれは今までもずっと俺たちの意図するところだったからね。調和はつまらない。人生はつまらなく生きるには短すぎるんだ。
だからみんなも自分自身をアップデートし続けるんだ。もうすぐ会えることを楽しみにしているよ!
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